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全知の脇役令嬢は不幸な未来をぶっ壊す  作者: 楠ノ木雫


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第十六話 魔の道への第一歩 ③


 王族の結婚式とあって、大勢の貴族達が集まった。そして披露宴には、式に参加しなかった大人数の貴族達も会場にいらっしゃる。



「……お久しぶりですね、叔父様(・・・)


「あぁ、久しぶりだな、ローズ」



 そして、当然この方々も参加なさっている。私の母の姉が嫁いだ、ベルナール侯爵家のご当主。けれど、意外な事に嫡男であるロランの兄はいるものの叔母である夫人の姿はなかった。


 果たして何を言い出すかと思いつつ、まずは姪として挨拶をした。



「あの愚息には勘当を言い渡した。侯爵子息の名を語ることを禁じ、二度と我がベルナール侯爵邸に足を踏み入れるなと命じた」


「……そうですか」


「家内の事も聞いている。勝手にそちらに行っては無礼を働いたと。だから、家での謹慎を言い渡した」



 なるほど、だから今日顔が見えなかったという事ね。嫡男よりお気に入りだったロランがこんな事になってしまって、腸煮えくりかえっている頃かしら。



「お前の叔父として謝らせてくれ。本当に申し訳なかった」



 この方は、上位貴族のご当主でありプライドの塊。そんな方が、私に謝罪を入れ頭を下げた。それは、私が大公妃という立場に立ったからでしょうね。



「そして、ベルナール侯爵家当主として、微力ではございますが大公妃殿下のお力の一つとなりましょう」


「……」


「大公殿下、大公妃殿下。この度のご結婚、誠にお喜び申し上げます」



 なるほど、大公()殿下、ね。


 小説では、ベルナール侯爵家は王族派に寝返っていた。それが今、この瞬間に中立派に寝返った。


 その理由は簡単だ。ロランの失態によって王族派に寝返る事は難しくなった。けれど、姪である私が嫁いだ家は中立派であっても王族。そして、私自身はリトナ夫人とあまり悪くない関係。


 なら、私に付いた方が得策だと考えた。


 いいように使われたような気もするけれど、小説を知っている私であれば、ベルナール侯爵の思惑は分かっているからとりあえず大丈夫でしょうね。


 まぁ、この変人に付いてしまってよかったのかは知らないけれど。


 そろそろ挨拶が終わったかしらという時、遠くからお父様達が視界に入った。一緒に話しているのは、この披露宴前から見覚えのある方達。



「少し両親達のところに行ってまいります」


「私も行こうか」


「いえ」



 ……流石にもう離れたいところではある。べったり過ぎる。


 一つ微笑み、そしてくるっと回って殿下に背を向け、両親のところへ向かっていった。ちょうど、今話しているのは……



「こちらにいらっしゃいましたか、ラユース辺境伯」


「えぇ。さくらんぼ園の話で盛り上がりましてね」



 以前のリトナ夫人主催のパーティーで縁を結んだアダン・ラユース子息のお父上。子息も揃って楽しく話をしていたようだ。お父様達は少し緊張気味のようだけれど、披露宴が始まる前ほど緊張していない様子でよかった。


 今、我がアルベール領のさくらんぼ園で採れたさくらんぼを外国に輸出してくれる話が上がっていたそうだ。外国では果実の需要が高いらしいのだけれど、うちは領地が狭いため収穫出来る量が少ない。


 それでも、ぜひ契約させてほしいという事だったらしい。あのパーティーでお近づきになる理由にはそれも入っていたけれど、上手くいくか可能性は低かった。これにはきっと、娘が大公妃となったから、というところがあるのね。


 これから辺境伯は忙しくなることでしょうから、私からお父様を通じてサポートしたいところね。実家の安定した収入を確立させるためにも。



「息子と顔見知りと知った時には驚きましたよ。先日のパーティーでお会いしたと聞いたのですが、何か粗相をしでかしていませんでしたか?」


「ふふ、そんな事ありませんよ。一人でいた時、話し相手になってくださったのです。楽しいお話が出来て感謝しています」



 ……とはいえ、ここで詳しく話せるような内容ではなかったけれど。辺境伯の隣に立つ子息も、こちらを見てはニコニコしている。


 けれど、そんな時だった。荒っぽい足音がどんどん近づいてくる。



「ローズっ!!」



 荒げた声で、私を呼ぶ男性の声がした。これは誰の声だか振り向かずともよく分かる。



「あの馬鹿っ……」


「ローズっ……」



 アダン子息のその呟きは小さくてもよく聞こえた。私の隣にいらっしゃるお父様は、下がりなさいと私の肩を引くけれど、私はその手をポンポンと優しく叩いた。


 貴族達が離れ開いた道をカツカツ足音を立て近づいてくるが、このクリスタル宮に配置された衛兵二人が私達の間に入った。そして、取り押さえられる。


 だいぶお怒りのようね。けれど確か、さっき叔父様が貴族と名乗る事を禁じたと聞いた。それなのに何故こんなところにいるのかしら。



「あら、ご招待した覚えはなかったけれど」


「はっ、もう大公妃気取りかっ!」



 手を上げ、衛兵達にロランを離すよう指示をした。周りからは動揺の声が聞こえてくる。



「ただの下位貴族の小娘が、大公妃だって? 無理に決まってるだろ。お前が出来る事は一つもないっ! ただ人に媚びを売るくらいだろ!」


「……」


「その地位を手に入れた事だって、どうせこざかしい手を使ったんだろ! 地位の高い奴に付く事だけは得意だもんなっ!」


「……」


「ボロを出す前に離婚でもした方がいいぞ? お前のために言ってるんだ。いつも他人の顔色をうかがっては周りに合わせる事しか考えのないお前なら分かるだろ!」



 はぁ、何を言い出すかと思えば。離婚ですって? これを大公殿下がお聞きになればどうなるか、分かっているのかしら。とんだ怖いもの知らずね。


 しかも、侯爵家に泥を塗り勘当、貴族を名乗る事も禁じられたあなたがよく顔を出せたこと。


 それに、こざかしい手ね……脅迫されて大公夫人にさせらた、が正解だけど、さすがにそれは言えないわね。


 とはいえ、今の私が誰か分かっていての発言なのかしら。となれば、王族への不敬として牢屋入りよ。先ほど結婚式で婚姻届に署名したのだから、一応私は王族。それが分からないなんて、アホなのかしら。


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