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全知の脇役令嬢は不幸な未来をぶっ壊す  作者: 楠ノ木雫


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第十五話 魔の道への第一歩 ②


 結婚が決まってからずっと心配していた、結婚披露宴。


 王族の結婚式となると、披露宴は大体クリスタル宮が使われる。そのために建てられたものらしく、とても広い会場で内装が煌びやかな造りになっている。


 私達が結婚披露宴にクリスタル宮を使う事は間違ってはいない。けれど、結婚式のタイミングを被せ、せっかく大急ぎで王太子がパーティーを準備していたにもかかわらず、それを全部片づけろと遠回しに言ってしまった。



「ご結婚おめでとうございます、叔父上、大公夫人」


「おめでとうございます」



 ……私は一体王太子の前でどんな顔をすればいいのだろう。と、内心遠い目をしつつも王太子とカロリーヌ嬢の挨拶を見ていた。


 きっと、王太子は怒っていらっしゃることでしょうね。……相手が相手で言えないだろうけれど。



忙しいところ(・・・・・・)招待して悪かったな」


「……いえ、叔父上の結婚式ですから参列するのは当たり前の事でしょう」



 あの、大公殿下、これは分かっていて結婚式を早めた、と言っているも同然ではないでしょうか。これは悪ふざけが過ぎるのではありませんか?


 それよりも、さっきからカロリーヌ嬢が私をニコニコと見つめてくる。数日前のあのお茶会で私達とお友達になりたい、と言っていたけれど……お友達のつもり、なのかしら。


 披露宴のご挨拶では、私達のところへ階級が上の人達から順番に来る。そしてこの中で身分が一番高い王太子殿下が最初に来た。婚約者であるカロリーヌも一緒に。他の方々が見ていらっしゃるというのに……あろうことかカロリーヌ嬢は私の両手を握った。



ローズさん(・・・・・)


「は、はい?」


「王族に嫁ぐ者同士、仲良くしましょうね」



 私に微笑みそう言ってくる姿は、まるで女神のよう。けれど、ローズさん、ね……以前のお茶会では自分が王太子妃だと主張してはいたけれど……もし王太子妃だったとしても、身分は私の方が上。王弟の妻なのだから。


 しかも、ここは公の場。となると、まだ男爵令嬢であるカロリーヌは一番最初に挨拶をさせてもらえる事すらおこがましい事となる。それなのに、ここでローズさんと呼んで身分を弁えない振る舞いをしてしまえば、周りはどう思うかしら。


 隣にいる王太子は大公殿下と話しているから助けには入れない。私はここで注意をするべきではあるけれど、彼女はこの小説のヒロイン。



「ありがとうございます、カロリーヌ()



 今は祝いの場であるため騒ぎは起こしたくないところ。だから、これで流すことにした。まさかまたそんな事はしないでしょうし。それよりも、警戒していた方達が構えている。それは、この次にいらっしゃる……



「ご結婚おめでとうございます、大公殿下、大公妃殿下」


「おめでとうございます」



 オーシャイン公爵夫妻だ。つい先日娘が婚約破棄されたせいでメルリアナ嬢は参列しなかったけれど、公爵という立場上出席しなくてはいけなかったからか当主と夫人揃っての参列となり挨拶に来た。


 面と向かってお会いしたことはないから、話したのもこれが初めて。きっと、私が娘であるメルリアナ嬢と仲良くしていた事はご存じのはず。なら、二人の目に私はどう映っているのかしら。



「ご夫人はまだお若いですから、戸惑ってしまう事がいくつもあると思われますわ。ですから、もしお困りの際はどうぞお声がけくださいな」


「……ありがとうございます」



 オーシャイン公爵夫人の言葉に、公爵も私に向かって頷いた。顔には出していないけれど、一体お二人は何を考えているのか。……少なくとも、表立って敵視する事はない、ということでしょうね。大公殿下の前だから、というのもあるかもしれないけれど。


 それからも順番に挨拶に来る貴族の方々は、おめでとうございますと簡単にまとめて逃げるように去る方もいれば、分かりやすい程にゴマすりをしてくる方もいる。


 皆さまは、中立である大公殿下をどう思っているのか。いろいろと評判や噂があるから大体二択でしょうけれど……対する大公殿下は面白くなさそうな態度だ。その様子に焦ってくる人はいるものの……



「ローズ、疲れたか。飲み物でも用意させよう」


「いえ、大丈夫です……」


「そうか?」



 どうして私に対してはそんな笑顔を見せてくるのか実に恐ろしい。更には腰に手を回して密着してくる。周りはこの大公殿下を見てぎょっとした様子の方々ばかりだ。きっと、これもわざとなのでしょうね。とことん遊ぶつもりなのかしら。


 きっと、この様子も光の速さで社交界に広まるでしょうね。一体どんな尾ひれまで付いてくるのかしら。



「ご夫人のウェディングドレス姿はとても素晴らしかったですわ。お二人が並ばれる姿なんて、美しくて見惚れてしまうほどでした」



 そんな中、私達にその言葉をかけたのはリトナ夫人。以前私と大公殿下が初めて会った時に参加していたパーティーの主催者である。夫婦と娘息子の4人で参列したリトナ夫人は、とてもにこやかにドレスの話を出した。


 今は披露宴用のドレスに着替えてしまっているけれど、まさかあの黒いウェディングドレスを評価してくるとは思わなかった。周りの参列者達はその話題を避けていたというのに。


 とはいえ、あの婚約破棄事件後すぐにパーティーを開けるほどの度胸があるのならそれも出来るわね。



「急に決まった結婚と存じていましたが、とても仲睦まじいようで安心いたしました」



 本当に、この方は恐ろしいわね。分かっていてそう言っていらっしゃるのかしら。


 社交界を仕切っていた方にしてみれば、いきなり下位貴族の令嬢が自分より上の地位に立ってしまった事を黙って見ているわけがない。一番重要視している社交界を小娘に荒らされてしまっては困るもの。


 それに、先日のロラン4股騒動だって私が社交界にばらした。果たして、リトナ夫人はどう思っていらっしゃるのかしら。


 となれば、社交界に関しては慎重にならないといけない。ただでさえ、メルリアナ嬢と王太子の婚約破棄に、王太子と男爵令嬢の婚約、ロランの4股騒動からの、今度は変人大公殿下と下位貴族の令嬢の結婚まで起こってしまったのだから。


 とはいえ、なってしまったものは仕方ないわ。下位貴族ではあっても、ずっと上位貴族のご令嬢であったメルリアナ嬢と一緒にいた。だから、顔見知りも多数いらっしゃる。


 なら、まずはどこから手を付けましょうか。


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