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春曇  作者: 篠崎りと
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旧校舎

家に帰ってからすぐにベットに潜った。とにかく惨めな気持ちだった。世界に自分の存在を否定されてるようだった。嫌な事があった日はいつも、好きな音楽を聴いて自分を慰めるが、音楽を聴く気にもなれなかった。

教室のドアを開けて田村優花と目があった時、私は恐ろしいほどに恥ずかしくなった。彼女に今の自分を見られるのが嫌でたまらなかった。

嫌われたかもしれない。

もう話しかけれないかもしれない。

そんな事に不安になってる自分にも嫌になった。クラスで目立ってる可愛い女の子とほんの少し関わりができただけで、嬉しくなっているなんて、ほんとにダサいと思った。自己嫌悪に陥っているうちに、私は眠りに落ちていた。



2日目の文化祭には、当然行きたくなかった。しかし、二日目の文化祭にも参加した。なぜなら私は、親や家族にさえ、虚勢を張っていたからだ。あたかも自分は友達も普通に居て、学校生活を普通に過ごして、普通に文化祭も楽しんでいる女子高生のように見せていた。土日休みには、友達と遊んでくると嘘をつき、1人で出掛ける事もあった。家族に心配をかけたくないからとかそんなものではなく、ただ自分が弱く見られのを避けたくなる傾向が私にはあった。今さらそんなプライドあっても仕方ない事は自分でもわかってはいるが、やめられなかった。


文化祭2日目の日、学校へと向かう足がいつも以上に重たかった。教室に入ってからできるだけ誰の顔も見ないようにした。

チャイムが鳴り、2日目の文化祭が始まった。シフトが入っている時間もなく、初めから自由だった私は、潔くトイレの個室へ向かった。もう惨めな気分にすら慣れ始めていた。その日は10月にしては蒸し暑く、トイレの匂いも1日目よりきつい気がした。トイレの個室にこもって学校内にもっといい環境で1人になれる場所は無いかを考えた。

ひとつ思いついた。

1年生の頃、2、3年生が修学旅行で居ない間、校内全体を使った謎解きゲームをするレクリエーションがあった。その時に旧校舎の3階にある屋上への階段は立ち入り禁止になっていたのを見た。旧校舎には確か、出し物も1階にしかなかった。

私は、トイレを出て知り合いが居ないがビクビクしながら、旧校舎へ向かった。



旧校舎は、比較的人が少なかった。二階に上がるとほとんど人が居なく、3階には見渡す限り誰も居なかった。何か自分がとても悪いことをしている気がしたが、これなら昨日もここへ来れば良かったと後悔した。それでも廊下に一人で立っているだけだと誰かに見られた時、不審がられそうだと思い、やっぱり立ち入り禁止になっている階段の方へと向かった。きっとそこなら誰の目に入ることもないと思った。

その階段には机が横並びにされて塞がれていて、机には立ち入り禁止と書かれた紙が貼られていた。少し周りを見渡してから机を乗り越えて階段を上った。屋上に出るつもりはなかったが、扉を開けてみようとしてみた、思っていた通り鍵が掛けてあった。

私は踊り場の壁に腰掛け、小さく深呼吸した。踊り場の電気は付いておらず、窓から少し光が刺しているだけで薄暗く、壁には小さな落書きがたくさんあった。少しの罪悪感と高揚感があり、心地良いとも思った。

しばらくそこで落書きを眺めていると、下の方から机が動く音が聞こえた。反射的に振り向くと、そこには人がいた。私は小さくやばいと声が漏れた。そしてそれが誰なのかを理解した時、心臓が大きく飛び跳ねた。

そこには田村優花がいた。

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