第17話:第三の生命
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熱い。痛い。
目がぼやけて、もう誰が何を言っているのかすら分からない。
死の間際。
ただ──
一人、また目の前で命が失われたことだけは分かった。
俺はなぜ未だに生きている……?腹に穴が空いてんだぞ?
そして、その元凶に向かっていく男の姿が、微かに見えた。
俺にはもう、何も見えない。
誰が何を喋っているのかすら分からない。
ただ、全身が熱くて、だるくて──
それでも伝わってくる。この空気の震え。
“人外”と“魔族”の戦闘の、余波が。
「ンガアアアアアアアアアアアッ」
どっちの声かも分からない。
瀕死の俺に伝わる衝撃が、骨の芯まで響いてくる。
早く──
早く、死なせてくれ。
【ユニークスキル:廃棄収納を発動可能です】
またか。
お前は、どこまで俺を……。
……何にだ?
何に対して、発動可能なんだ?
【……】
やっぱり、答えない。
そうだよなお前は、いつだって一方通行だった。
ここに、ゴミなんて落ちてない。
お前の判断はいつも間違って──
【ユニークスキル:廃棄収納を発動可能です】
もういいって言ってんだろうが!
……いい加減、俺を楽にさせてくれ……。
ここにゴミなんて、落ちてねぇんだよ。
…………静かになった。
どっちが勝った……?
イデアか?それとも、あの黒いやつか……?
「……わたし……」
お前かよ……。
イデアのやつ、あんなに勝ちムーブ出しておいて、結局死んだのかよ。
……この国は、この世界は──もう終わりだ。
人類は魔族に勝てない。
──全く、この世界はゴミだ。
【ユニークスキル:廃棄収納を発動可能です】
「…………しょう……ねん」
イデアの声が聞こえてきた。
それは、あまりにも弱々しいものだった。
「……君に……たく……した……」
瀕死の俺に、何を託すってんだよ。
力を振り絞り、重い瞼を開く。
うっすらとぼやける視界に映ったのは──
イデアの上半身だった。
上半身だけの彼が、這いずって俺のところへと近づいてきていた。
「……君に」
既に魔族はいない。きっとまた無差別な殺戮にでも出かけたんだろう。
なのに、イデアは俺の前に来て、笑って──
「たく……す」
こいつ今笑って……いやそうじゃない!無理だって!
俺も瀕死なんだよ。お前、馬鹿なのか……?
【ユニークスキル:廃棄収納を発動可能です】
もう、お前は黙れ。
【ユニークスキル:廃棄収納を発動可能です】
【ユニークスキル:廃棄収納を発動可能です】
【ユニークスキル:廃棄収納を発動可能です】
うるせえええええええええええっ!!
黙れ!ここにゴミは無いんだ!!
お前の出番は……もう…………
「……」
俺の最後の視界に映ったのは──
イデアの、穏やかな笑顔だった。
まるで、自分を使えと……言っているかのような。
【ユニークスキル:廃棄収納を発動可能です】
……まさか。
スキル。お前は……イデアを“ゴミ”と言いたいのか?
【ユニークスキル:廃棄収納を発動可能です】
ふざけんなよ……人間はゴミじゃない。
ゴミなのは、魔族のほうだ。
勘違いするなよ……?
……でも。
それでも、お前はコイツを“ゴミ”だというのか……?
もう役割を終えたとでも言いたいのか。
【ユニークスキル:廃棄収納を発動可能です】
お前、それしか言わねぇのな。やっぱお前とはとことん合わねぇのな。
一方通行で俺の話なんて聞きやしない。ただ俺の命に関わる時にだけ警告するように同じ言葉を連呼する。
まるで俺を死なせないとでも言うかのように何度も何度も何度も……
俺はお前が嫌いだスキル。
機械みてぇなお前がな。……せめて会話くらい交わそうぜ。
……分かったよ。分かった。
お前の言う通りにしてやる。
ただし一つだけ言いたいことがある。
──ゴミはイデアだけじゃない。
この世界全てがゴミだ。
俺は、最後の力を振り絞り、
イデアへと、手を伸ばした。
そして、俺の視界は──
そこで、途絶えた。
---
熱。痛み。
意識は既に朦朧としていた。
でも……それでも──
最後に、確かに見たんだ。
イデアの、あの顔を。
やつは涙を流しながら笑ってた。
こんな時に、笑ってやがった。
お前、ほんとに……最後の最後まで、意味わかんねぇ奴だったな。
でも、きっとあれは──
俺に自分を「使え」って、言ってたんだろ?
──だったら使ってやるよ。
この腐った世界を、丸ごとぶち込む“箱”として。
お前の死も、俺の死も、このスキルに叩き込んで──
全て終わらせてやる。
【ユニークスキル:廃棄収納──起動】
黒く、重く、どこまでも深い穴が、目の前に口を開いた。
まるで地獄の底だ。
いや、違う。あれは“無”だ。全てを呑み込む、世界の果て。
「……俺のスキルの中で眠れ、イデア」
握った手が、ぐらつく。
崩れ落ちそうな腕に、残った力を込めて──
「これで、終わりにしてやる……」
俺の手が、彼を飲み込んだ。
世界が、視界が、音もなく、歪んだ。
目の奥が焼けつくような痛み。
脳に直接、何かが流れ込んでくる。
それは、イデアが持っていたものだった。
感情。
後悔。
誓い。
怒り。
孤独。
そして、希望。
その全てが、俺の中に──叩き込まれた。
「があああああああああああああああッ!!!」
頭が割れそうだった。
体が千切れるほど、熱を帯びていく。
臓腑が焼け、骨が軋み、血が沸騰する。
だが、ここで止まれない。
俺は──まだ、“何も始めていない”。
この世界がどれだけゴミに塗れていようが。
俺がどれだけ弱かろうが。
ぶち壊すんだ。
全部、全部だ。全部壊して廃にして破棄する。
あの日、アレシアの笑顔を見たあの場所へ──
もう一度、帰るために。
そうして俺は──
第三の命を、手に入れた。
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