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From: ゴミから始まる異世界生活 〜拾い集めて世界最強〜  作者: 水無月いい人
第二章 ヴァレシア王国 『少年編』

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第16話:紅の遺言

お読みいただきありがとうございます!


本編の前に少しだけ。

更新の励みになりますので、ブクマや★★★★★をいただけると嬉しいです。


それでは、本編をお楽しみください。

俺様には、弟がいた。


 二人きり、小さな村でひっそりと暮らしていた。

 優しくて、穏やかで……俺様とは正反対な、誇れる弟だった。


 両親はもういなかった。

 冒険者として命を賭けて生きた二人は、魔獣との戦いの末にその命を落とした。

 だから、弟は──俺様にとって唯一無二の、守るべき存在だった。


 


 だが、悲劇は突然訪れた。


 


 魔族。

 魔獣ではない、人の姿をした“魔”。


 


 あいつは、外見だけなら完全に人間と見紛うほど整った容姿をしていた。

 言葉を話し、態度も人間と同じ。

 だから、俺様も──そして、弟も、疑いすら持たなかった。


 


「案内してほしい場所があるんだ」

 ──そう言って、そいつは弟を連れていった。


 


 ……それきり、弟は戻ってこなかった。


 胸騒ぎがした。

 嫌な予感が、喉の奥を掻きむしるように広がっていった。


 俺様は全力で弟を探し回った。

 そして──


 


「…………嘘、だろ」


 


 弟は、無惨な姿で転がっていた。


 首が不自然な方向に折れ、胸には深々と切り裂かれた跡。

 その体は、まるでおもちゃのように壊されていた。


 


 人間に、こんなことができるわけがない。

 ……いや、魔獣でも、こんな“壊し方”はしない。


 食い荒らされた痕跡はなかった。

 そこにあったのは、ただの──悪意による殺戮。


 


 弟の死体に残されたものは、明確な“意志”による暴力の痕だった。


 


 俺様は頭が真っ白になった。

 何も考えられなかった。

 それでも、必死に足を動かして、家へと戻った。


 


 何か……何か手がかりがあれば。


 そして、俺様は狂ったように書物を漁った。


 


「魔族……魔族魔族魔族魔族……!!」


 


 “伝説の存在”とされる、かつて世界を脅かしたという化け物。


 誰もがその存在を「作り話」と断じていた。


 だが──弟を殺した、あの化け物は。


 間違いなく、“魔族”だった。


 


 俺様は村を飛び出し、この『ヴァレシア王国』にたどり着いた。


 この国に、真実があると信じて──



 俺様は魔族について調べ続けた。

 なけなしの金で魔族に関する文献を買い漁り、衣服や食事すらろくに取らず──

 ただ、ひたすらに“魔族を知る”ことに執着した。


 


 ……だが。


 


 どの書にも、書いてあることはバラバラだった。


 


 「魔族は絶滅した」

 「魔族は未だ世界のどこかに潜んでいる」

 「魔族は人間の心の闇に宿る存在である」


 


 どれもこれも、肝心なことには一切触れていない。


 まるで、何かを“隠そうとしている”ような……


 


「……なぜだ。なぜ誰も魔族の実在を記録に残さねぇ……?」


 


 魔獣の存在は当然のように扱われているというのに。

 魔族の話になると、どの文献も曖昧で、証拠も具体性もない。


 


「──まるで、魔族という存在が“この世から消された”かのようだ……」


 


 疑念は拭えないまま、時間だけが過ぎていった。

 俺様は知識の空虚さに苛立ち、焦り、時には絶望し──

 そんなある日、あいつと出会った。


 


「君、なんで悲しそうな顔してるの?」


 


 ……そいつは銀髪で呑気な奴だった。

 魔族に弟を殺されて血の底から煮えくり返ってるってのに、そいつは一人で球遊びをしていた。


 


「俺様に構うな」


 


「一緒に遊ぼうよ。僕、ずっと一人なんだ」


 


 こいつは馬鹿だった。

 寂しいなら一人で球遊びなんてしねぇだろ。

 ……そう思ったのに。


 


「友達がいないから仕方ないよ。君が友達になってくれるなら嬉しいな」


 


 ……あまりにもバカで。

 あまりにも真っ直ぐで。

 気付いた時には、俺様の中にぽっかり空いていた穴を、そいつが少しずつ埋めていってた。


 


 そして、今──


 


「……ば……か……イデ……ア……」


 


 血の泡混じりに、ソフィアはかすれた声を漏らした。


 


「ソフィアアアアアアアアアアアアアアアアアアッ!!」


 


 イデアの悲鳴が、空に響き渡る。


 


 魔族の尾に貫かれたソフィアの体から、力が抜ける。


 あれほど大事に抱えていた得物が、無惨に地面へ転がり落ちた。


 それはアイシスと同じ結末だった。


 


「後は……頼んだぜ……俺様の……たった一人の……ダ……チ……」


 


 彼女はそう言い遺し、瞳を閉じた。


 呆気ないほどに、静かに──


 


 血が流れる音が、風の中に消えていった。


 


 立っているのは、イデアただ一人。

 ダストは瀕死で地面に横たわり、ソフィアは──もう、動かない。


 


「……僕は……ずっと……謝りたかったよ、ソフィア……」


 


 拳を震わせながら、イデアが呟いた。


 


「君を……信じてやれなかった……あの日の”僕”を……”俺”は何度も悔やんできた……」


 


 声が、かすかに震える。

 けれど、確かな意思がその眼に灯っていた。


 


「だが──君の死は、絶対に無駄にしない」


 


 彼はゆっくりと、ダストの方へ振り返る。


 


「……少年」


 


 その瞳には、どこか遠くを見つめるような陰が宿っていた。


 


「君もいずれ気づくだろう。この血がどれだけ“呪われている”かを」


 


 そう言うと、彼は上着を脱ぎ捨てた。


 


 肌の上を這うように走る、青白い血管。

 それは、明らかに人間のものではなかった。


 


「……私は、混血者だ」


 


 魔族の血を受け継ぐ者──


 


「……私たちは、魔族の血と人間の血の狭間で生まれた存在。

 戦いの中でしか、生きる術を知らぬ者たち」


 


 そして、イデアは鋭く息を吐いた。


 


「──よく見ておきたまえ。これが“混血者”の力だ」


 


 そう言い残し、イデアは再び魔族へと歩を進める。


 


 その背に、もう迷いはなかった。


 


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『From: ゴミから始まる異世界生活 〜拾い集めて世界最強〜 』

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