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From: ゴミから始まる異世界生活 〜拾い集めて世界最強〜  作者: 水無月いい人
第三章 覚醒 『青年編』

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第18話:廃棄知識体

お読みいただきありがとうございます!


本編の前に少しだけ。

更新の励みになりますので、ブクマや★★★★★をいただけると嬉しいです。


それでは、本編をお楽しみください。

 目を開けると、俺は──立っていた。


 地面に倒れていたはずの俺が、今は立っている。

 思わず、自分の手足に目を向ける。指を動かす。膝を曲げる。そして──恐る恐る腹に目をやる。


「……穴が塞がってる」

 

 視点の高さまでが、以前とは違う。


「…………ああ、そうか。俺はイデアをスキルで取り込んだのか」


 ポツリと呟く。

 この感覚……間違いない。俺は“イデアの身体”を、自分のものにした。


 その事実に実感が湧くより先に、俺の視線は一点へと吸い寄せられる。


 ソフィア──。


 血に濡れたその身体は、微動だにしない。豪胆で生意気だったあの笑みは、もうそこにはなかった。

 静かに目を閉じた彼女の顔は、どこか安らかで……それがかえって、胸を締めつけた。


「……お前も、ゴミなのか……ソフィア」


 その言葉が、無意識に漏れた瞬間だった。


  【ユニークスキル:廃棄収納(トラッシュボックス)を発動可能です】


 頭の奥に響く、あの無機質な声。

 ……そうか。俺は、また“何か”を拾える状態にあるらしい。


 だが思い出す。このスキルは、俺が「価値がない」と認識したものしか取り込めない。

 俺自身が“ゴミ”だと見なしたものだけが対象だった。


 じゃあ今、目の前に横たわるソフィアが、そうだというのか。お前は。


 ……確かに。今の彼女は動かない。ただの、声を持たない死体だ。


 喋らない。

 動かない。

 何も、残らない。


 もう、この世界に価値を残せない存在。

 それが、“ゴミ”じゃないと言えるか?


「──なら、お前も……俺の糧となれ」


 俺は、静かに手を伸ばす。

 無言で、動かない死体(ゴミ)に向かって。


 

 ……

 …………

 ………………


「……こいつはイデアのような肉体は無かった。本当に価値のないゴミだったか」


 もしかしたら、イデアの様に何か貰えるなんて考えていたが、浅はかだったか。

 

 でもまぁ、この体に胸が付いたりなんてしたら最悪だしな。結果的に良かったと言えるだろう。

 ゴミを埋葬したんだ。置いておくよりはマシだろう。


 

【おい】


 不意に、どこからか声が響いた。


【──誰がゴミだ、ガキ】


 ……スキルの声?

 だが今まで聞いてきたような機械的な音声じゃない。妙にリアルで、生々しい。しかも、女の声……?


【俺様だよ。お前、俺を変な力で取り込みやがったな。ふざけんじゃねぇ。俺様を“ゴミ”扱いとは、良い度胸してんじゃねぇか】


「……ソフィア……なのか?なんで俺のスキルになってんだ」


 混乱する。

 だが、この乱暴な口調、威圧感……間違いない。


【なんで俺様がお前のスキルとか言うのになってんだか、そんなの俺様にも分かんねぇよ! けどそれより、イデアはどうした】


「……お前と同じだ。取り込んだ。あいつは……俺の身体の一部になった」


【……そうか。そういう事か】


「何がだよ」


【……お前に取り込まれてから、やけに情報が流れ込んでくると思ったら……あれはイデアの記憶……いや、あいつの想いだ】


「……お前らの友情なんてどうでもいい」


【ああ? ……お前、その仏頂面、ほんとイデアに似てきてるな】


「かもしれないな。……感情も、考え方も変わった気がする。……いや、確実に変わった。全部、イデアのせいだ」


【……なあ。イデアと俺様を取り込んだ今のお前なら、あの魔族……殺せねぇのか?】


「無理だな」


 即答だった。


「身体がイデアになっただけ。スキルが乱暴に喋るようになっただけ。それだけじゃまだ、あの黒い魔族に勝てるわけがない」


 あいつは、人外であるイデアすら瞬殺した。

 取り込んだだけで超えられる様な壁じゃない。


【……そうかよ】


「…………アイシス」


 目の前の亡骸へ、名を呼ぶように呟いた。


【……コイツも取り込むのか?】


「……そんなわけねぇだろ。彼女はただの人間だ。ゴミなんかじゃない」


【……随分な言い草だな、俺様たちには】


「お前らは人外で、魔族を殺すために人生を捧げた馬鹿だ。──けど、彼女は違う」


【……お前、ほんと口が悪くなったな】


「スキルが喋り出してから、ろくなことがねぇんだよ」


【いいか。俺様は魔族を倒すために必要な知識をたくさん持ってる! 俺様を使えば──】


「……ああ、分かった。いい加減黙れ。必要な時は呼ぶ。だが今は、黙ってろ」


【チッ……ったくよ。俺様のナイスバディ、もっと堪能しとけばよかったのにな】


「……はぁ」


【……分かったよ。じゃあ、黙る。俺様、もう喋らねぇ!】


(……俺のスキル、退化したのかもしれない)


---


 「……この国は、もう終わったな」


 ぽつりと、そう呟いた。


 今頃あの黒い魔族は、街を蹂躙しているか、あるいはもう終えたか。


 ならば、もうここにいる理由はない。


「出るか。この国を」


 本来の目的。それは、最初からそうだった。


【待て】


 頭の奥に声が響く。


「……喋らないんじゃなかったのか」


【あそこに落ちてる、俺様の武器を持ってけ。魔族を殺すために、俺様が生涯を懸けて作ったモンだ。お前にとっても、絶対役に立つ】


 視線を落とす。筒のような形状のそれ。大砲か、あるいは砲身兵器か……。


「無理だな」


【なんでだよ!? 魔族を殺すために作ったんだぞ!? あれさえあれば──】


「だからこそだ。お前が生涯かけて作ったそれは、“ゴミじゃない”」


 はっきりと告げる。


「俺のスキルは、“俺が価値がないと判断したもの”しか取り込めない。そして今の俺のスキルは、ソフィア──お前だ」


【……つまり、俺様がそれを“ゴミじゃない”と認めちまってる以上……】


「ああ。お前が否定する限り、それは俺には扱えない」


【……そっか。……そうだな】


「分かってくれたならいい。──出るぞ、この国を」


 歩き出す。


 振り返ることはない。


 ヴァレシア王国。ここに俺の居場所はない。


 ここにいたのは、死体と、終わりと、もう失われた過去だけだった。


【なぁ……ちなみに一応聞くが、あれは結局何だったんだ?】


 ちらりと後ろを見ずに問いかける。


【よくぞ聞いてくれた! あれはな──】


「やっぱいい。出だしから腹が立つ」


【……なんだよそれ】


 ――歩く。


 瓦礫と血の匂いが混じる風を裂いて。


 ---


 ヴァレシア王国を出た。


 これで、ようやく自由になれた。


 

「……そういえば、この世界をこの目で見たのは初めてかもしれない」


 俺がこの世界で見てきたのは、転生先の村と、この国だけ。


 この国に来るまでの道中は意識がなかった。


 だから、ここから先は──未知の世界だ。


 それなのに、俺は、なぜか笑っていた。


 感覚で分かる。この身体だ。軽い。イデアを取り込んだ俺の身体は、確かに強くなっている。


 今の俺なら素手でも岩くらいなら砕けるかもしれない、そう思えるほどに。


「なぁ、ソフィア」


【……】


「おい」


【……んがっ!? な、なんだよ】


「……今、寝てただろ」


【寝てねぇ! 俺様が寝るわけねぇだろ!!】


「……まぁいい。お前、魔族以外の知識、あるか?」


【……無い】


「……やっぱりか」


 ため息をつく。

 どうやら、俺のスキルは、喋る“魔族専門家”になってしまったらしい。


 あまりにも偏ったスキル構成に、頭が痛い。


「さて、どこへ行くか……」


【だったら、俺様の故郷へ行け】


「お前の? そこに何がある」


【強くなれる。……そういう場所だ】


「……行けば分かるってやつか?」


【ああ。信じるかはお前次第だ】


 ……正直、行く当てもなかった。いや、あるにはあるが分からない。

 なら、少しくらい信じてみてもいいか。


「分かった。じゃあ──」


 その時だった。


 地面が鳴った。


 土を踏みしめる音が、無数に迫ってくる。


 音に反応して顔を上げると、見えたのは──黒い影。


 牙を剥き、唸り声を上げながら迫る魔獣の群れ。


 数十匹はいる。


「……そう簡単には、行かせてくれねぇか」


 剥き出しの殺意。


 空気が張り詰める。


 だけど、俺は恐怖を感じてなどいなかった。


 不思議と、落ち着いていた。


 そう──この世界は、優しくなんかない。


 それを、俺はもう知っている。


 アレシア、アイシス。


 俺に優しくしてくれたのは、あの人たちだけだった。



 ……ああ、そうだな。イデア、お前も一応入れといてやるか。


「……蹴散らしてから行くか」


俺にはこの世界について知る権利がある。それを知っているのは恐らく──


【そうだなァ! そう来なくっちゃなァ!!】


「スキル──いや、今は“お前”だな。武器をくれ、廃棄知識体(ソフィア)


【へへ、つっても……ゴミしかねぇぞ、お前の中】


「……忘れたのか? 俺の取り柄は、“ゴミ”を扱うことだ。ゴミの中でも使えそうなモンをよこせ」


 手に握られるのは、折れた剣。


 ──だが、それでいい。


「……上出来だ」


 価値なんてものは、使う奴が決める。


 それが“俺”だ。


 牙を剥いた魔獣たちが吠える。


 俺はそれに応えるように、大地を蹴った。


「はあああああああああああああっ!!」


 剣を振るう。

 手応えは重く、鮮烈だった。刃が錆びているせいか、力量で叩き込んでいる感じだ。


 折れた刃が、喉を裂き、肉を断ち、血飛沫が舞う。


 一匹、また一匹。狂ったように吠える魔獣たちが、無心で振るわれる刃に沈んでいく。


 腕が悲鳴を上げても、止まらない。


 ──止めない。


「は……あはははははははははッ!!」


 俺は、笑った。


 これが、今の俺の“力”だ。


 この世界の、ゴミみてぇな現実の中で──俺は、生きている。

 

本日もお読みいただきありがとうございました!


応援いただけると、本当に励みになります。

ブクマや★★★★★、感想などお待ちしています!


それでは、また次回もお楽しみに。

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『From: ゴミから始まる異世界生活 〜拾い集めて世界最強〜 』

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