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わーい兄さんと姉さんがたくさーん(錯乱)

ふざけてたら長くなっちゃったでござる。

木々の隙間から差し込む陽光が地面をチラチラと照らす。鳥の鳴き声と小動物が走る音を聞きながら、明るいとは言えない森の中を僕ら一行は進んでいた。

ミモザの言う通り森の中は草原よりかは幾分涼しい。森特有の自然の空気を吸い込んでリラックスしていると、なにやら手持ち機材を見ながら道を進んでいたロイドが徐に顔を上げた。


「そうだラウ、これ渡しとく。付けなくてもいいけど携帯しておいて」


「ん?なに……うおおおっ!?こ、これはっ!?」


白衣のポケットから何かを取り出したロイドに手を差し出す。そして手の中でころりと転がる金属製のそれを見て僕は興奮で雄たけびを上げた。


それ───黒地に銀の精緻な意匠が施されたバッジは、前に博士に欲しい欲しいと強請ったリライヴェッジ研究所所属バッジだ。リライヴェッジ研究員しか付けることが許されていない雪の結晶のような幾何学模様のそれはリライヴェッジ研究所への入所を目指す理系達の憧れであるとか。


前に欲しいと言った時は「でも君研究員じゃなくて実験体だしねぇ……」と血も涙もないことを言われた挙句、実験体ナンバーが振られたタグを渡されるという屈辱を受けたのに。


大喜びではしゃぎながらなんで!?いいの!?とロイドに纏わりつく。


「ええい、纏わりつくな暑苦しい。公共の場で剣とか魔法杖とか武器の携帯は特定の団体に属していない限り剣杖(けんじょう)法違反で捕まるんだよ。リライヴェッジ研究員は携帯が許されてるからそれ持ってれば職質はされても捕まりはしねえ。外出するときは絶対持っとけよ」


「ほほう?」


剣杖法違反……ニンゲン界で言う所の銃刀法違反に相当するものだろうか。まあ確かに魔法ありのファンタジー世界であっても中世どころか現代的───なんなら近未来に片足突っ込んでいる魔法界なのだから、そう言った危険物取扱に関しての法整備もされていて当然か。

なるほど、と納得すると同時に新たな疑問が生まれる。


「なんでリライヴェッジ所属の研究員は武器の携帯が許されてんの?研究機関ですよね?」


「そりゃ研究に必要な素材とか実験体とかは自分達で取りに行くこともあるからな。超大型のモヴの素材とかじゃない限り基本は自分たちで採取するんだよ。一々騎士団とか魔導士団に依頼してたら時間も金もかかるし」


「リライヴェッジの採用試験では戦闘能力の有無も見られるんですよぉ」


「研究者とは……?」


僕の中の研究者の概念が崩れそう。いやまあ常々「なんでロイド研究者のくせにこんな強いん?」って疑問だったし、ウェルデのゴンドラレースに携わった第一研究室のモンスターとかインドアとは思えないフィジカル(と武装へのパッション)をお持ちでいらっしゃるなぁとは思っていたので納得ですけども。

正直第一の皆さんに関しては滾る武装への熱意で限界突破してるだけだと思ってた。あれ素かぁ……。戦える頭脳派とか怖すぎるわ。


ちなみにリライヴェッジ研究所以外に武器の携帯が手放しで認められているのは王国騎士団、王国魔導師団、各都市憲兵隊といった公的機関くらいで、あとは商人や職人、その他特殊な職業者向けの商工業者組合(ギルド)で臨時の武具携帯許可証を逐次臨時発行するのが基本らしい。


商工業者組合というのは、専門職に就くモンスターを支援したり規約を定めてトラブルに対応したりする組合のことだ。

色んな商工業者組合があるらしく、例えば未知を求めて世界中の秘境を旅する冒険者を取り纏める冒険者組合とか、漁業に携わるモンスターを纏める漁師組合、武具や装飾品などを製作する鍛冶師や宝飾師が所属する鍛冶師組合などなど。都市によってもその種別は異なるのだとか。


ちなみに商工業者組合で臨時で発行される武具携帯許可証は、所属する組合や使用用途にもよるが都度発行が必要だったり期間制だったりと制約が多い。無制限で携帯が許されている団体というのはそれだけ社会的地位と信用が高い証明でもある。


リライヴェッジ以外の研究機関は必要な素材があれば組合や魔導師団、騎士団に依頼をしなくてはいけないので、公的機関と肩を並べるリライヴェッジすげー案件である。


「勿論、携帯が認められているからと言って正当な理由なくモンスターを傷つけたら犯罪者だからな。そこらへんは気をつけろよ」


「例えば痴漢に襲われたりしたら?」


「切ってよーし」


「切る前に憲兵を呼べでござる……」


僕を脳筋呼ばわりする癖に自分も結構な脳筋思考なロイドにアジェルが呆れた顔で突っ込みを入れる。

正当防衛のラインって見極め難しいからね……生命が脅かされそうになった時だけ抜くようにしよう。内心でうんうんと自分のスタンスを図っていると、後ろを歩いていたミモザが「あ!」と声を上げた。


「ロイくん、この辺じゃないですかぁ?」


「んー……そうだな。丁度拓けてるしここで待ち伏せるか」


視界を埋め尽くしていた木立が途切れ、ぽっかりと開けた場所に出る。

周囲をぐるりと見回し何かを確認したロイドはミモザに賛同を示し、近衛に持たせていた荷物を地面に置いた。そして鞄をごそごそと漁りだす。ミモザは何やらレーダーのようなものを手にフラフラと探し物でもするようにその辺を歩き出した。


「ねえアジェル、ここで今から何するの?」


「ロイド達が研究で使う素材の採取でござるよ。ついでにお主の第一回戦闘訓練もしようと思っているでござる」


「え!?」


研究員ふたりが何やら調査のようなものを始め手持無沙汰になった僕は、騎士甲冑の調子を確かめるアジェルを見上げた。ついぞロイドからまともな回答を得られなかったための問であったが、回答と同時に予想だにもしない言葉が続いて身構える。


なになになに!?何かと戦うの!?それならそうと先に言え!何の心構えもなく戦場に放り出されそうになっていたと知り憤り半分焦り半分で狼狽える僕をアジェルは苦笑した。


「とはいえ、今日の所は戦闘時の空気感を学んでもらえればそれでいいでござる。無理に剣は振らず、ハナガタミ流の基本歩法『無拍子』の練習をするつもりで」


「うげ……『無拍子』か……」


そう言って懐からアジェルが取り出したのは、昨日帰り際に博士から渡されていたハナガタミ流剣術の資料の束であった。ペラペラと項をめくった彼は、ハナガタミ流を振るう際に用いる独特な歩法について記された箇所を指し示した。


ハナタガミ流歩法『無拍子』

体全体に身体強化魔法を施した上で、踏み込みのタイミングで地面を蹴る足に身体強化魔法を一瞬だけ重ね掛けし爆発的な推進力を生み出すという技である。拍子も取れないほどの速さで敵に肉薄したり背後に回りこんだりする歩法の為、無拍子という名がつけられた。

成功すれば瞬間移動じみた高速移動が可能となる。成功すればだが。


アジェルの言葉を聞いて顔が苦くなる。この歩法こそが昨日僕の右足首を脱臼させた元凶なのである。自動人形に近づく際に一歩分だけ使用したのだが、掛けた魔力量が多すぎたせいか地面を蹴った瞬間足首が抜けたような感覚と激痛が走ったのはまだ記憶に新しすぎる。


しかしながら、僕が習得させられたこのハナガタミ流はほぼ全ての技において『無拍子』の使用を想定しているので、逃げ続けることはできないのだ。


「恐らくだが、昨日は足首から下にだけ身体強化魔法をかけていたであろう?そうではなくて足の付け根から足裏まで一定に魔力を広げ保護しつつ、足裏、足首、ふくらはぎを活性化させるように一瞬加えるのが正しいやり方でござる。それを左右で交互に行うのでござるよ」


「とんでもなく高度な技を要求されている……」


アジェルの解説にげんなりする。本来であればこの『無拍子』は最大6歩分連続使用できる技なのだが、戦闘中に、しかも高速で移動しながらタイミングよく左右に交互に掛けるという繊細な魔力操作が必要らしい。


僕ついこの間ようやく全身の身体強化が瞬時にムラ無くできるようになってロイドに及第点もらったばっかなんですけど……。


「ロイドからはお主はどちらかというと感覚で物を覚える派だというのは聞いているでござる。となれば実践を重ねていくのが一番の近道。頑張るでござるよ」


「ぐぬぬ……敵に囲まれてる状態でまた足首脱臼したらヤバくない……?」


「大丈夫でござるよ。今日の敵はそこまで素早くない上、お主には常にロイドの近衛を付ける。ロイドの近衛ならロイドがいなくとも『移動』で早い動きにも付いていけるし、盾にもなれるから安心するでござる。危なくなれば拙者もフォローするでござるし」


「そっすか……よろしくお願いします」


あっけらかんと笑うアジェルもロイドに負けず劣らずな鬼畜コーチになりそうな予感がして口元が引き攣る。しかしいつまでも泣き言を言っていてもしょうがない。とりあえず死なないように頑張るぞ、と自分を鼓舞するように両手を握ると、背後からミモザが僕らを呼ぶ声が聞こえた。


「アジェル、ラウちゃん。ちょっとこっち来れますかぁ?」


見ればいつの間にか地面にはいくつもの物々しい機材が設置されており、機材を操作していたミモザがベルト状のものを手に持ってこいこいと手招きしている。アジェルと共に伺えば細長い試験官が数本収められた硬質なケースポーチ付きベルトを手渡された。

試験官の中では透き通った青い液体がチャプチャプ揺れている。


「倒したらこの薬液を垂らしてくださいねぇ。凝固薬ですぅ」


「凝固薬?なんの?」


「ユウキエネルギーのですよぉ」


「ぎゃああああ劇物!?!!?」


余りにも恐ろしすぎる薬液を気軽に渡されて悲鳴を上げる。なななななんちゅー代物渡してくんねん!!そんなのユウキエネルギーに生命維持依存してる僕が接種したら死ぬやんけ!!遠回しの殺意なの!?ガクガク震えながらアジェルの後ろに隠れて半身を隠していると、僕が放り投げたポーチを伸ばしたツタで危なげなく空中キャッチしたミモザが苦笑いを浮かべた。


「ラウちゃんは経口摂取しなければ平気ですよぉ。接触くらいじゃ死なないですぅ。………多分」


「今多分って言った!!ちっちゃい声で多分って言った!!」


「大丈夫ですってぇ。とりあえずこれ振りかけたらエネルギーが結晶化するんで拾ってくださぁい」


あらあらうふふ、と笑いながらミモザのツタが逃げる僕の体を拘束する。ひいい博士と言いミモザと言いすぐ僕のこと拘束するのやめようよ!!ジタバタと暴れるもいつもののんびりさからは想像もできないほど俊敏な動きで僕の腰にベルトを取り付けていくミモザ。ついでに「げへへ……ラウちゃんの腰細いですねぇ……」ってセクハラするのもやめてぇ!!


「ラウちゃんのユウキエネルギー含有量はアレの比にはならないですからねぇ。ラウちゃんを稼働停止させるなら理論上少なくともこれ二本分の接種は必要ですから、わざわざ飲まない限り大丈夫ですよぉ」


「持ってるだけで怖いんだよぉ……なんでこんなの作ってるの?」


「野生からエネルギー採取する際に必要だったのでぇ。でも勇者に対しても有効なのではということで今改良中なんですよぉ」


「怖いんだか頼もしいんだか……」


っていうかさっきからアレとか野生とか誰も具体名を教えてくれないんだけど一体これから何と戦わせられるの僕。流石に不安を覚えていると、突然ロイドが手に持っていた機器からピーピーと甲高い音が鳴り響いた。森中に響く機械音にギクリと体が跳ねる。


「な、なに……?」


「おー、活性化し始めたな、そろそろだ。ラウちゃんと戦闘準備しておけよ」


「こちらも準備しましょうかぁ。ロイくんそっち持ってくださぁい」


「はいはい」


研究員ふたりが真面目な顔で頷きあい、そして大判のシートを協力して広げ始めた。

な、何が始まるんだ……?とりあえず言われた通り右手に剣を転送させてその様子を固唾を飲んで見守る。


まずふたりは、広げたシートを地面に敷き、その四隅を石で固定し始めた。そしてその上にミモザが持ってきていたランチバックを置き始める。

次に、ロイドが鞄から取り出した水筒やカトラリーをシートの上に等間隔で並べた。その他にも持ち込んだ諸々をふたりで協力して置いていく。


あらかた備品をセットし終わった様子のふたりは、そのまま靴脱いで座り、ふう、と一息……。


「よし、じゃああと頑張れよふたりとも」


「ふぁいとー!ですぅ」


「ピクニックか!!」


唐突に和やかな森の中でのピクニック風景を生み出したふたりに思わずぺしーんっ!と膝を叩いて突っ込む。遠足か!もしくは子供の運動会観に来た父兄か!?剣持ってる僕とアジェルとの対比えっぐいけど大丈夫!?


あはは、うふふ、とロイドの近衛が淹れる紅茶を嗜む白衣のふたりは絶叫する僕と黙るアジェルにヒラヒラ手を振った。


「非戦闘員はこっちで応援してるよ」


「非戦闘員!?どの口が!?そんでさっきリライヴェッジの研究員は戦闘能力持ってるって言ってませんでした!?」


「流石に本職には負けますよぉ」


ランチパックを開けて「お、卵サンドあるじゃん」とか「ラウちゃんもアジェルも沢山食べるのでいっぱい作りましたよぉ」とか和やかに会話する研究員共。

なんという緩さ……これから戦闘始まるんですよね?と胡乱気な眼差しでその光景を見ていると、サンドイッチを片手にロイドがニヤニヤと悪い笑みを浮かべた。


「早く片付けろよー。でないとミモザお手製の弁当が無くなるぞ」


「……」


じゃあお前も戦えと無言で兄に訴えていると、隣から怨ッと凄まじい殺気が膨れ上がった。


ヒッ!?と震えあがりながら殺気の発生源を辿れば目をあらん限りに見開いて血走らせるアジェルからだった。騎士あるまじき形相でピクニック組をみつめている。しかもなんかブツブツ呟いてる。聞こえないけど絶対怨嗟吐いてる。怖い。


き、きっとミモザのお手製弁当食べてるロイドに嫉妬を……嫉妬なんて可愛らしい形相じゃないけど、多分嫉妬してるっぽい。いやマジでモンスター殺すことも厭わなそうな感じ出てるけど多分そう。


餅がキツネ色どころか真っ黒に焼けそうなくらい嫉妬と怒気の炎を噴き上げる騎士にガクガクと腰を抜かす。狐面被ってる僕も炭にされちゃいそう……。ロイドさんミモザから離れた方が……アッ違う!よく見たらあれわざとだ!すごいニコニコしてる!絶対そうした方が効率良いなとか考えてわざとやってる!


相変わらず性格の悪い……とロイドにドン引きしていると、突然後ろから体をひょいッと持ち上げられた。


「お?ああ、ありがとフィーア」


「……」


地面にへたり込む僕の両腕を持って立ち上がらせてくれたのはロイドの5体いる近衛の内1体、ヤギ角を持つ4番目の近衛(フィーア)であった。全身顕現した近衛は喋らないものの、何となく彼から『どういたしまして』と言っているような雰囲気を感じる。


その後ろから更にガシャガシャと音を立ててもう2体の近衛───恐竜っぽい爬虫類的な頭蓋骨の3番目(ドライ)と、シカ角の5番目(フィフ)が歩いてきた。2体の手には大槍と大槌が握られている。


おお、僕を守る近衛の布陣だ。大楯を持ったフィーアが僕の傍らに並んだ、ということは基本的にはフィーアと行動しろという事か。オッケー了解と右手に転送した剣を肩に担ぐ。

こうしないと刀身が長すぎて普通に持つと地面を削ってしまって持て余すのだ。なので今後これが基本抜刀状態になりそう。なんか一昔前のバッド持ったヤンキーみたいでちょっと嫌だけども。


「……準備はいいな。無理は禁物、危ないと思ったらすぐに近衛を盾にして逃げるでござる」


「お、おっけー」


とりあえず我を取り戻したっぽいアジェルにビクビクしながらも頷く。機材から鳴る警告音が更に激しく鳴りだした。


ごく、と喉を鳴らしてアジェルが見据える方向に目を凝らす。森の奥は鬱蒼としているが日中ということもあって木漏れ日が差し込んで───否。


「……っ!?」


「来るぞ」


僕が息を飲むのと、アジェルが鋭く警告の声を上げるのは同時だった。


チラチラと陽光が地面を照らしていた筈なのに、突如その地面からジワリと黒い何かが沁みだした。インクのようにジワジワと滲み広がるそれは、瞬く間に立ち上がって二腕二足の人型を形作っていく。


一体ではない、ずるりと音が聞こえてきそうな程に不気味な動きで、それは次々と立ち上がった。


「え……っ、ひええええっ!?何あれっ!キキキキモォッ!?」


「前に話したであろう、ソウルレスでござる。とはいえ無機物に取り付く前の状態だ、まだ対処はしやすい」


「アレはユウキエネルギーで活動している生物?だからな。研究に使ってるユウキエネルギーが少なくなったらアレから採取してんだ」


「首か胸部を破壊すると倒せますよぉ。頑張ってくださいねぇ」


「あばばばばっ!ちょ、無理、むり……っ!」


目も鼻も見えない黒一色の人型が森から這い出して来る。余りのホラー映像に無意識のうちにたじたじと足が後退した。


無理無理無理無理!あれと戦うの!?無理!おどろおどろしい動きでゆっくり迫ってくる人型の影にへっぴり腰でブルブルと首を横に振る。


「あー……もしかしてラウちゃん、そういう系苦手ですぅ?」


「無理、無理です……っ!」


「猫とどっちが無理ー?」


「猫ぉ!!!!!!!!」


「猫なのか……」


猫科系獣人であるアジェルの耳がしょん、と萎びる。しかし全然労わる余裕皆無の僕はアジェルとフィーアを盾に体を隠した。すると一番近い一体の影───ソウルレスが顔を上げる。

何もない影なのに、明らかに目が合ったと分かった。ゾッと背筋が冷たくなる。

嫌だ怖い、怖すぎる、すみませんアジェルさんちょっと一回精神統一の為退却を……


「ラウ、大丈夫だ落ち着け。アレは怖いもんじゃねえよ」


「ロイド……?」


「アレはな、お前さんの家族だ」


「「は?」」


わざわざ『移動』で僕の隣にやってきたロイドが意味不明なことを宣った。余りにも意味不明すぎて恐怖も忘れてアジェルと共に怪訝な声を上げる。

僕のこの雪のように白い美しい肌見てアレと同列と語るのならその目腐ってるよ。取り替えてこい。


しかしロイドは僕の肩に腕を回して屈ませ「よく見ろ」とソウルレスを指さした。


「アイツらにはな、お前さんの体に流れるユウキエネルギーと同質のものが流れているんだ。っていうかお前さんに投与されたエネルギーの何割かはアイツらから採取したもんだしな。ということはアレとお前さんは血(?)を分けたきょうだいな訳だ」


「きょ、きょうだい……!?」


「そうだ。ほらよく見たらそんな気がしてくるだろ、右の奴なんて心なしかお前さんに似てるじゃねえか」


「え、え」


耳に流し込まれる言葉に脳がバグる。あ、あの黒いのと僕がきょうだい……きょうだい……?か、体を構成する物質が同じということはきょうだいなのか……?きょうだい……きょうだいって何だっけ……?


迫るソウルレスへの焦りと恐怖と、ロイドの言葉に頭が混乱する。な、なんかその通りな気がしてきた……そうだよね、同じ血が流れてるならそれはDNAレベルで家族であるってことだし……?


「……ロイド、お主何してる」


「いやぁ、ちょっとした実験を……精神的に揺らいでる時に滅茶苦茶出力絞った『王命』使ったら意識誘導できるかなぁって」


「ロイくんもたまに博士並に倫理観エグイ時有りますよねぇ。フロッグルに育てられた子はフロッグルということですかねぇ」


「やめて」


遠くでそんな会話が聞こえる気がするけども、いっぱいいっぱいの僕の脳は全くその内容を処理できずに『ソウルレスは僕の家族か否か』でひたすら検討を重ねている。

やがてキャパオーバーした頭はボンッと爆発した。


「……に、兄さん……!?姉さん……!?」


「ブッフォッ」


そうじゃないか、アレは僕の兄さんと姉さんじゃないか!!同じエネルギーで動いてるんだからそうだそうに決まってる!!怖がることなんてない、これは感動の再会なのだからぁ!!

目をぐるぐる回して出した結論を口にした瞬間、ロイドが噴き出した。


「ぶくくくく……っ……ヒイ……し、死ぬ……ぐふっ……そ、そうだぞラウ。アレはお前さんのきょうだいだ。だがな……っ、このままじゃ兄さんも姉さんも暴れて周りに迷惑を掛けちまうからな、お、お前さんが止めろ……ぐ、くく……」


「そ、そんな!?ダメだよ兄さん姉さん!!そんなの絶対ダメ、許せない!貴方達の暴挙は僕が何としてでも止める!!そう、たとえ刺し違えてでも……っ!」


「あーあー……なんかえらいことに……後でちゃんと解くでござるよ、ロイド」


「そういえばベルちゃんがラウちゃんは精神干渉系の魔法に耐性がないって言ってましたねえ。ロイくんの『王命』は同種族に対する絶対命令権ですから、使い方次第じゃ下手な精神魔法よりも強力なんでしょうねぇ……極悪すぎますぅ」


何故か声を震わせて苦しみ悶えるロイドと、そんなロイドにしら~っとした目を向けるアジェルとミモザを他所に、悲壮な覚悟を胸に携えた僕はキッと道を誤った家族を睨みつける。


これは僕がやらなきゃいけない事なんだ。家族として、兄さんと姉さんを愛する僕が手を下さなくては。例え悲しみに身が引き裂かれそうになろうと、家族に手を掛ける苦しみに襲われようとも……っ!!


瞑目すれば、楽しかった思い出たちが瞼の裏で蘇る。夏には海に行き、秋には紅葉を楽しみ、冬にはかまくらを作って、春には一緒に遊園地ではしゃいだ……。


いつだって優しかった兄さん、僕を甘やかしてくれる姉さん、そしてその他大勢よ……っ!僕は悲しい、なんでそんな選択をしてしまったの?もっと僕らは会話をするべきだったんだ……悔やんでも悔やみ切れない。


でもこの悲しみを糧に前に進まなくてはならない。

くっと眦から零れる涙を拭って、僕は剣の切っ先を愛する家族に向けた。


「貴方達には、この僕が引導を渡します!!」


「渡すな。お主は歩法の練習してろでござる」



この後すぐ戻してもらいました。ロイドは後で〆る。





突如、ラウの脳裏に溢れ出した

・・・・・

存在しない記憶───


ちなみにフロッグルとはカエル型のモヴです。

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