『緑の都市』水上パレード 其の一
ウェルデ領主からも正式に事業開催の許可が下り、おもてなし本部は本格的にウェルデ水上パレードの準備に取り掛かり始めた。
始めた、のだが────
「大使!ウェルデの住民から水上パレードへの問い合わせが殺到しています!」
「都市庁舎が王城と連携して臨時問い合わせ窓口を設置したって!そっちに誘導して!詳しい開催場所や進行スケジュールはホームページ確認するように!」
「ラウ大使、報道機関への告知はどうしますか?」
「ベルリアナに一任してる!基本対応は任せるけど、もし僕の顔が必要ならスケジュール調整する用意伝えてくれる?現時点での僕のスケジュールは後で送るから!」
「大使ー!?ゴンドラレースの武装制限について参加者から問い合わせがヤバイです!!」
「とりあえず跳ぶな、回るな、飛ぶなを厳命!!詳細な武装制限については今日これから第一研究室のゴンドラチームと魔道具師協会の会長とドルニカゴンドラ協会長と協議予定だから、決まり次第連携する!都市庁舎に早々に運河通行許可証の臨時発行するように伝えて!」
「パレード当日の陛下の警備体制と通行規制ルートの確認をしたいとウェルデ都市庁舎から連絡が!」
「王城の内政官に回答するように伝えてあるんだけど!?連絡は!?来てない!?あああああああアイツら仕事遅すぎんだけどぉぉ!?」
僕率いる親善大使執務室は、まるで戦場のような有様であった。
怒号と悲鳴が飛び交い、書類が舞う。電話は鳴り止まず、処理しても処理してもタスクは減るどころか増える一方。
もはや全員発狂状態で走り回っていた。
「しぬ、マジで死ぬ……っ!」
「た、大使……王城の政策担当の内政官から『政策への問い合わせ処理案件追加していいですか』って……」
「死ねええええええ!!!」
あまりの忙しさに口調を取り繕うこともせず怨嗟を吐く。もういいから王城から来たあの書類の山突っ返せ!!そしてさっさと都市庁舎に回答だせや内政官ァ!!
出ても出ても鳴り続けるマギホを耳に当てながら、ひたすらに目の前にドンッと積まれた書類を承認と非承認に振り分けていく。
「ドルニカ協会長!?今日の15時からの会議なんですけど、ごめんなさい僕リモート参加でいいですか!?そちらに顔を出す余裕が……ありがとうございます!」
「ラウさん!予算案の修正要望が来てます!今仰った今日の会議までに検討してほしいって」
「はあああ!?今更!?もうどこもかしこも着手してるって、一体どっから……第一ィィイイイ!!あんの武装狂い共、まだ過剰武装諦めてないんかい!博士ぇ!?第一の奴らの暴走止めてください!!」
ドルニカさんとの通話を切るやいなや、今度は父でありリライヴェッジ研究所の所長であるフリント博士に電話を掛ける。第一研究室のゴンドラチーム達を抑えるよう絶叫するように要請する。その最中も書類を捌く手は止めない。何やら了承の言葉と共に『最近ラウと会えてなくてパパ寂しいぃ~』と気持ち悪い言葉が聞こえた気がしたが、全然それどころじゃないので容赦なくブチ切った。
多忙も多忙。もはや全員最後に帰宅したのも覚えていないくらい、僕らはパレードの準備に追われていた。
だから一か月は無理だって言ったんだ……っ!3日ぶりに会ったロイドに「うわクマえぐっ。目ぇ据わりすぎて犯罪者かと思った」とドン引かれた目で、もう常飲と言っても過言ではないくらい毎日飲んでいるエナドリの缶をぐしゃりと握りつぶす。
あの規格外なゴンドラレースの後、ドルニカさん以下水夫の皆様は全員おもてなし本部との雇用契約及びゴンドラの賃借契約を取り交わした。そして陛下の名の下にウェルデゴンドラ協会は復活、ドルニカさんはウェルデゴンドラ協会の協会長に返り咲くことになった。
皆新しい職場や居住地を得てしまっているため、全員が全員すぐに正式雇用とはいかなかったけれども、それでも近い内にゴンドラ乗りの水夫としてウェルデに戻ってくると言ってくれた。
それどころかゴンドラレースを見られなかった水夫達にも声を掛けてくれるという。なんともありがたい話に、僕は満面の笑みで水夫の皆様と握手を交わした。
ちなみにウェルデ領主はというと、あの後随分と大人しくしていると話に聞いた。僕にはついぞ出すことはなかったが、どうやら都市庁舎ではかなり権力を笠に着てやりたい放題していたらしい。
仲良くなった都市庁舎の職員が語るところによると、『緑の都市』の領主の座は世襲制らしく、あの狸領主の前領主、つまり狸のお父様はかなり名君ならぬ名領主だったのだとか。
その名領主の死後、七光りを存分に受けて育ったあの狸も当然のごとく領主となったわけなのだが、まあなんというか……お父様に比べてセンスがある訳でも切れ者であったわけでもない彼はしかしそれでも膨れ上がった自己顕示欲を満たすため、他者の苦痛も顧み得ずに目先の分かり易い名声を夢見てしまうようになった、ということだ。
そこにはきっと優秀であった父への劣等感もあったのだろう。
だが僕にメンツを潰され、陛下に精神と金銭的にボコボコにされたお陰で、その暴君さも過剰なまでの自己顕示欲も鳴りを潜めてしおらしくしているらしい。醜く足搔かないあたり、もしかしたら薄々自分の領主生命の終わりが近いことも感じ取っているのかもしれないな。
そんな領主の内心を知ってか知らずか、ゴンドラ乗りの水夫たちに悪いとは思いつつも言いなりにならざるを得なかった都市庁舎の職員たちに、僕は随分と感謝されてしまった。
とりあえず、そんなこんなでゴンドラを発端とするウェルデの闇が解決しウェルデ都市庁舎の職員たちとも関係が良好になったところで、待ってましたとばかりに陛下は僕を使ってウェルデ水上パレードの広告を打った。
元々陛下とベル経由で準備だけはしていたとのことだが、それにしたって異常と言えるスピードでテレビや雑誌、ネット広告などでウェルデ水上パレードの告知CMが報道され、瞬く間にウェルデ水上パレードの開催と僕の顔は魔法界全土に広まっていった。
休む暇もない程にぎゅうぎゅうに詰められた撮影や取材のスケジュールの過密さはすさまじかった。思わず僕の脳裏に『過労死』の単語が浮かぶくらい。
死にかけた甲斐あって、今やテレビを付けるたびに『ウェルデに来てベルリアナと僕と握手!』とウィンクしてサムズアップする僕が映るらしい。パーシーが嬉しそうに教えてくれた。その狐面の裏の目は死んでるのでなんも嬉しくない。
告知が済めば今度は水上パレード開催にあたっての決まり事やら申請事やら何やらによって忙殺された。ウェルデ領主が無駄に回答を引き伸ばしている間に、イベント進行スケジュールの検討や申請書類の用意などできることは事前に済ましていたが、実際にGOサインが出ないと動けないことも多々ある。今僕らは方々の手を借りてその諸々の処理に追われている真っ最中、ということだ。
「モンスターになっててよかった……」
「何か仰いましたか?大使」
「なんでもございません」
この忙しさ、ニンゲンの体だったら絶対耐えられてない。いやモンスターになったせいで忙殺されてるのでにわとりたまご的な話なんだけど……。
追加の書類を持ってきた美人筆頭補佐官の訝し気な目に首を振る。普段キッチリ制服を着こなしている彼女もどこかヨレヨレだ。サキュバス故の色香がくたびれた雰囲気と相まってえらいことになっておる。目死んでるけど。
いかん、そんなこと考えてる場合じゃなかった。
忙しさのせいでぶっ飛びかける思考を何とか目の前の資料に留めおく努力をしながら、僕は今日も駆けずり回るのであった。
「ぃよ~し、みんな~、生きてるか~」
あっという間に時間は過ぎ、パレード当日。
憎らしいほどの晴天。インカム越しに大使室の面々の生存確認を行った僕は、太陽に照らされる美しい水の都を眼下に掠れた声を上げた。
「大使室の総員よく聞け~、今日のパレードが終わったら陛下が超高級焼肉食べ放題をご馳走してくださるそうだ~。それまで死なないように頑張るぞ~」
ゾンビのようなうめき声がインカムの向こうから聞こえる。わはは、アンデッドが沢山だぁ。当の僕もきっと正しく死体のような有様なんだろうけど。着々と準備が進められていく水上パレードの会場たるウェルデの街並みを、僕の傍らで同じように眺めていたロイドが引き攣った顔をした。
「……なあラウ。最後に寝たのいつだ?ベッドの睡眠データがここ数週間無いんだけど」
「…………寝……?」
「ごめん忘れて。何でもない」
酷く気の毒そうに僕の背中を撫でるロイドに首を傾げる。寝る……?寝るってなんだっけ……?聞き覚えのあるような無いような、でもどこか魅力的に感じる単語にフラフラとよろめきながら考えていると、僕の背後から憂いと好奇心を含んだため息が聞こえた。
「可哀そうに……なまじユウキエネルギーの修復の力が強すぎて逆に倒れることもできないんだね……興味深いなぁ……」
「お労しいですぅラウちゃん……」
ソファーに腰かけてティーカップを傾けるフリント博士と、その対面のソファーに掛けるミモザが嘆息する。
いつもの見慣れた第零研究室のメンバーがそろい踏みしているが、しかしここはいつもの見慣れた第零研究室ではない。ウェルデ主要街において一番高級なホテルのその最上階。いわゆるロイヤルスイートと言われる一室に僕らは押し込まれていた。なんでそんなとんでもなく高級な場所にいるかというと、ここが陛下の控室となるからである。
水上パレードの開始は今から一時間後、10時からの予定だ。時間になったらまずは、親善大使である僕とおもてなし本部のNO.2たるフリント博士、そしてアンバサダーであるベルリアナは陛下と共に水上パレード用に拵えた特設ステージに上がりご挨拶。その後陛下用のゴンドラに乗り込みウェルデ主要街を一周した後、各自担当する地区へ愛想を振りまきながら歩く、というのが午前中のスケジュールである。
そのため、僕とフリント博士は今日用に拵えられた『正装』を身に纏っていた。内訳としては貴族服のような華やかなフリルの付いた七部丈の白いシャツに黒いスラックス、そしてペリースというのだろうか、右肩だけで留められた黒いマントだ。博士は涼し気な顔をしているが僕としては今すぐ脱ぎたくてしょうがない。だって黒のマントてアンタ、この夏真っ盛りな季節に黒はあかんでしょうが。焼き殺す気か?
おもてなし本部の夏服を着用しているロイドとミモザが羨ましくてしょうがない。ダメ元で僕は隣に立つ兄に交渉してみる。
「……ロイド、マントいる?」
「いらない」
一刀両断。取り付く島もない。ですよねぇ、とため息をつきながら首元の金糸の刺繡が入ったリボンを弄る。この黒地に金糸という色が僕の所属を表しているのは分かっている。リライヴェッジ研究所第零研究室の黒と、王城の色である金。この二つが外せないのは百も承知だ。けれども季節を考えてほしいところである。あとマントは絶対やりすぎ。
二の腕の切り替えしから袖の絞りに掛けてたっぷりと広がるフリル袖に邪魔くささを覚え顔をしかめる。と、ロイヤルスイートの豪華な扉がトントンと叩かれた。
「陛下が入られます。御起立ください」
陛下の近衛兵が部屋に入ってくる。一応控室とはいえおもてなし本部以外のモンスターもいる公式の場であるため、僕らは近衛兵の言う通り背筋を伸ばした。
ゆったりと先導の近衛の後から入ってきたのは、この国の王にして魔法界の主導者、そして僕の上司たるクロード・ヒルデガルド国王陛下だ。僕やフリント博士とは非にならないほど豪奢で暑そうな衣装をまとった陛下は、しかしその顔に苦さなど一切感じさせない笑顔を浮かべて僕らに着席を促した。
「ご苦労。出てていいよ」
そう優しく、有無を言わせない声色で近衛に言い放つ陛下。その言葉に近衛は音もなく扉の外に控えた。パタン、と扉が閉まる音と同時に陛下が僕らに向き直る。
「みんなもご苦労様。……おや、ラウくん。なんだか顔色が悪い気がするが大丈夫かな?」
「オ気ニ掛ケテ下サリアリガトウゴザイマス。全ク問題ゴザイマセン」
「問題しかなさそうだねぇ。大丈夫?フリント博士。バグってない?」
「まあ大丈夫かと」
誰のせいだと思ってんだこの腹黒国王。この準備期間に当てた一か月、無茶ぶりに無茶ぶりを重ねて僕をさんざん絶叫させた黒狼に引き攣った笑顔を向ける。しかし陛下は「そっか~」と本当に気にした様子もなく、ソファーに掛けながらウェルデの街並みを穏やかな目で眺めた。
「いやぁ、さっきチラッとウェルデの転移門の方も見てきたんだけどね、すごいモンスター混みだったよ。各都市からも観光客が来ている。広告宣伝は大成功だね、流石ラウくん」
「……陛下が組んでくださった鬼のような過密撮影スケジュールと、恐ろしいまでの各テレビ局各出版社への根回しのおかげですよ」
「そんな褒められると照れるねぇ」
褒めてな……もういいや。この面の皮が厚すぎるモンスターにはオブラートに包んだ嫌味は通用しない。この一か月でよーく学んだ僕は無駄な体力を消費しないように押し黙った。
陛下は開催時間が迫るにつれ賑やかに、そして華やかになっていくウェルデ主要街を一望しながら徐に懐からマギホを取り出した。
「まさかウェルデがこんなに賑やかになるとはね……見てごらんベアトリーゼ。君とデートしたあの静かな街が今やこんなに……」
そういってその理知的な瞳にうりゅりゅっと大粒の涙を溜める陛下。あ、やばい。と思ったものの、まだ完全にスイッチが入ったとは言えないトんでる頭では耳を塞げと体に指令を出すのが数舜遅れた。ウォォォオオオオンッッ!!とホテル中に響いたんじゃないかと思う咆哮、もとい大音量の泣き声が鼓膜をぶち抜く。
「ベアトリーゼェェェ!!君とこの水上パレード一緒に回りたかったよぉぉお!!」
「陛下~?他の客……は防犯の関係上貸し切りにしてるのでいないにしても、従業員が吃驚しますから落ち着いてくださいね~」
珍しくまともなことを言うフリント博士がテーブルに突っ伏して泣く陛下を宥める。対してばっちりきっかり咆哮を受けてしまった僕は、突然の脳へのダメージに四つん這いで沈んでいた。
「おえええ……グロッキーな時に陛下の泣き声、うぷ、うええ……」
「おい吐くな。絶対吐くな。ここは絶対ダメだ。陛下の控室で親善大使が吐いたとかシャレにならねーぞ。耐えろ、頑張れラウ」
「ラウちゃんしっかりぃ!今鎮静の香を焚きますからぁ!」
今にも吐き戻しそうな僕の背中をロイドが叩き、ミモザが大慌てでお香を焚いてくれる。部屋に充満する清涼な香りによって何とか持ち直した、危ねえ……。
辛うじて親善大使の尊厳を失わずに済んだ僕は、荒い呼吸を繰り返しながらロイドとミモザの手を借りてなんとか立ち上がる。するとまたしても扉をノックする音が。
「ベルリアナですわ。失礼しても?」
「いいよ。お入り」
これまたミモザの香によって持ち直したらしい陛下が、泣いていたことなど微塵も思わせないけろっとした顔で扉の向こうのモンスターに入室を許可する。
すると間髪入れずにバァーンッと音を立てて扉が開け放たれた。暴力的な美貌がシュルシュルと優雅に床を滑って現れる。
ウェルデ水上パレードアンバサダーとして用意された正装を見事に着こなし、緑に金糸の刺繍が入ったリボンを揺らした赤髪のラミア、トップモデルのベルリアナは自信が満ち溢れる表情でぐるりと部屋の中を見回した。
そして勝気な笑みを浮かべて陛下の足元で臣下の礼を取る。
「陛下、この度は大役を賜り恐悦至極でございます。このベルリアナ、全力でアンバサダーの任を務めさせていただきますわ」
「うん。よろしくねベルリアナくん。期待しているよ」
「必ずやご期待に応えて見せます」
すっくと立ちあがったベルリアナが得意げに胸を張る。なんでだろう、僕と同じ服のはずなのに胸元のボリュームにすごい差があるな……いや考えるな。別に僕は小さくない。標準だから気にするな。大丈夫大丈夫……。
主張激しいラミアの胸元を極力見ないようにしながら僕はため息をついた。
「毎度毎度バァーンッしないと部屋に入れないんかアンタは……響くんだけど頭に。ドア壊れるよ」
「あらラウ。顔色最悪ね、そんな顔でアタシの横に立つ気?殺すわよ」
「聞いてる?ちなみに僕の顔色にとどめを刺したのはアンタの上司だよ」
僕の上司でもあるけどな。へっと荒むと暴力的なのは美貌だけではないラミアが無遠慮に僕の顔面を鷲掴んだ。そしてどこに隠し持っていたのか化粧品の数々を取り出しては突然のスキンケアを始める。
しかしもう僕は驚きもせずに為されるがままだ。これにももう慣れた。顔を合わすたびに「アンタ何日顔洗って無い訳ぇ!?」と絶叫し親善大使に全力スキンケアするラミアの奇行はもう大使室ではおなじみの光景なのである。お陰で休む暇もなかった僕だがお肌だけはピカピカです。
「アンタ、ほんっとに宝の持ち腐れすぎるんだけど?自分の美を磨かない奴は悪だわ。処すわよ」
「過激すぎる……明日からはちゃんとしまぁす」
撮影やら何やらで恐れ多くもベルリアナの隣に立つことが多くなってしまった僕は、こうして美容ガチ勢であるベルに度々叱られながらも面倒を見てもらっている。お陰で初対面時から遠慮など殆ど無かったが、輪をかけてベルとは気安く話せるようになっていた。
姉が居たらこんな感じだろうか、と一瞬考えてしまったが、しかしやっぱりこんな暴力的なお姉ちゃんはいらんな……と思いとどまったところで、多数の視線に晒されているのに気づく。
「……何この空気」
「いつの間にそんな仲良くなったんだ、お前さん達……」
「元々ベルちゃんは面倒見いいですけどねぇ……でもそれにしても距離が近いというか……何故か後ろに白いユリの花が見えますぅ」
「は?」
「ふうむ、その路線の売り出し方もアリだね」
「ラウ、パパは女の子同士でもいいとは思うけどね……まだ早いよ、君生まれてまだ二ヶ月だし……」
「は?」
訳の分からない一同の言葉に胡乱気な視線を向ける。が、しかし僕のスキンケアに全力で何も耳に入っていないベルの指によって顎を掴まれ顔を向き直される。
「んふふ、化粧もしちゃいましょ。今日はパレードだからね、少し派手目でいいわね。むしろ控えめじゃ衣装にもアタシにも負けるわ……ククク、見てなさい。これが美の頂点と言われたベルリアナの本気よ……っ!この女を使ってアタシは天下を取る!!そしていつかこの世界の頂点に……っ!」
「ちょ、陛下の前でなんという不敬発言……ってベル?ベルさん?ベルリアナさん!?なんかヤバイ目してるんだけど!?やめ、離せ!!いやああああ怖いいいいい!!」
老若男女問わず虜にする蠱惑的な目に狂気の光を宿すラミアに恐怖を覚えた僕は絶叫した。しかしキャッキャッと僕とベルの様子を仲睦まじいと捉えるポンコツオーディエン共には、何故かその絶叫は聞こえていないようであった────。
────パレード開始まで、あと45分。
うちの主人公、何故かゲロインなんですよねぇ……。




