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時間魔法と雪の像

しれっとタイトルを変更いたしました。

「ま、レクスの力は便利だからありがたく使わせてもらってるけどな」


痛そうに離した手を振るロイドの言葉に、僕ははっと我に返った。

ごめん振りすぎた。そうだよね、今の僕本気出せば小石くらいなら粉々にできる握力だもんね。自分のことながら怖いです。


「……じゃあ、その見た目もレクスになったときに?」


「いや違う。この見た目はレクスの力じゃなくて俺の魔法によるものだな。ほら、スケルトンのままだとモヴだと思われて攻撃されるから、さ……」


「せ、先輩……っ!!」


やっぱりアンデッドモンスターに成り立ち聞くのはデリケートな問題だよ!僕らしかアンデッドモンスターがいないっていうなら今ここで定義として定めよう……!


とはいえロイドの魔法については気になるので深堀りしたい。

一昨日から基本的にずっとロイドと共に行動しているが、魔法と言えばで候補に挙がる火とか水とかの属性的な魔法を使用している様子はなかった。よくアンデッドを召喚しているので『召喚魔法』の使い手なのかと勝手に予想していたのだが、しかしそれはレクスの種族特性の一つなのだとか。レクス強すぎない?


「で、ロイドの魔法って結局何なの?」


「んー……超ザックリ言うと『時間』だな」


「時間?」


あまり想像がつかず首を傾げる。


「自分と、まあ細かい定義があるんだが……自分が眷属と定めたモノの時間が操れる。進めたり戻したりな。この見た目も、この体の時間を弄って生前の姿に戻してるって訳だ。だから……」


「?」


再び立ち止まったロイドを振り返る。俯いているせいでその表情は前髪に隠され見えない。

「どうしたの?」と何の気なしにロイドの顔をひょい、と覗き込み────僕は大絶叫をあげた。


「うわっぎゃあああああああああ!?」


「時間を進めて、こういう風にすることもできるんだぜ~」


「とっ溶けてるうううううう!?グロい!!怖い!!いやあああこっち来んなああああ!!!」


覗き込んだロイドの顔はとんでもない有様だった。死後何日ですか?みたいな状態に溶けたその顔は間違いなくモザイク必至。何の心構えもしていなかった僕は突然のR18G映像に雪道の上で腰を抜かした。

しかもフラフラとゾンビみたいな動きで迫ってくる。怖すぎて思わず尻餅をついて後ずさりした。


「はっはっはっ。いい反応だなぁ、相変わらず」


「こ、こいつぅ!!」


瞬時にいつもの顔に戻し、とても愉快そうに笑うロイドをギリギリと睨みつける。

差し出された手を乱暴にとって立ち上がり、腹いせにブンブンブンブンッと思いっきり振ってやる。「痛い痛い。ごめんって」と悲鳴を上げるロイドにようやく溜飲の下がった僕は大きくため息をついた。


スケルトンとはつまりは生者の成れの果てだ。モンスターだろうがニンゲンだろうが関係なく、骨だけとなった体が空気中の魔力に触れ続けることで発生するモヴなのだという。

ロイドは自分の魔法で、スケルトンになる前の生前の姿にまで体の時間を戻し固定しているのだとか。


ちなみに骨になる前に魔力を得てモヴとなるのがリビングデッドで、あえて種族のカテゴライズをするのならば僕はこちらに分類される。嫌だなあ。


しかし先程ロイドが語ったように、この魔法が施せるのは自分と自分の眷属……レクスの力で召喚したモヴや、眷属契約なるものを交わした存在のみのため、例えば僕にロイドが触れた瞬間突然老化し死ぬってことは無いらしい。絶望ドッキリすぎるなそれ。


聞けば、ロイドが使う例の瞬間移動────ロイドや博士は『移動』と呼んでいるようだが、その移動もこの魔法の応用であるらしい。

自身と指定したポイントまでの移動時間を短縮するという魔法で、移動距離や移動人数に応じて消費魔力が増減する。


時間の短縮であるため、発動には現在位置とポイントまでの大体の移動時間を把握している必要がある。なので行ったことのない場所や行き方の分からない場所には移動不可ということだが、それにしたって大概チートだ。


余談だが、勇者として目覚めたサーシャはこの『移動』を発動前に視認するというとんでも超能力で対応していた。軽い未来予知じゃないか、化け物か。


「巻き戻してその見た目ってことは、ロイドも元々ニンゲンだったってこと?」


「どうだろうなぁ。スケルトンになる前の記憶とかっていうのはなんもないんだよな。気がついたら土の中にいて、ぼんやりとした意識の中でひたすら『働きたくねぇ~』って考えてた気がする」


「怠惰の極み……」


雪道を行く足を再び動かす。

生前がニンゲンだとすれば、生前の彼は勇者と共にこの世界にやってきた勇者軍の一兵士か勇者パーティの一員ということになるのだろうか。

となると少なくとも200年以上前の時代を生きていた訳で……うーん、やっぱりジジイじゃないですか。


「……うん?ってなると、僕もロイドもフリント博士産のモンスターってことか」


「え?あー、まあ……うーん、そう、なる、かなあ……」


苦々しく歯切れの悪い肯定をするロイド。どうやら次の僕の言葉を察しているようだ。凄く嫌そうな顔をしている。

しかし先程の意趣返しができると、僕はニヤニヤと笑いながら構わず続けた。


「ということは、ロイドは僕のお兄ちゃんでもあるってことだね?」


「うわ、絶対言われると思った……。その理論だと俺もあの変態を父と呼ばなくちゃいけなくなるから嫌だ」


「そんな寂しいこと言わないでよロイドお兄ちゃん!」


「やめろ、マジ無理。俺の兄弟はパーシーだけでいい。変態な父親付の妹はいりません」


弾む足取りで嫌がるロイドの正面に回り込み顔を覗き込むが、ロイドは耳を塞いで僕と目が合わないように体ごと顔を背けた。

しかし逃がさず再び回り込む、そして背けられる。反対側から回り込む、背けられる、回り込む、横合いから頭蓋骨が飛んできて吹っ飛ばされる。


「……ん?なんか騒がしいね?」


本日二度目の雪ペロから体を起こす。

いつの間にか並木道の終点まで来ていたようだ。T字路のように左右に道が分かれている。

ここを右に曲がるとレードの町、左に曲がると別の町に行けるらしい。風に乗って届いた歓声のような声は右の道、レードの町方面から聞こえてくる。


「子供たちが雪合戦でもしてるんじゃないか?ここは年中雪が降るから子供はみんな雪遊びのプロだよ」


「………」


その見た目で子供のことを大人目線で語るのか、とロイドに目を向ける。しかしこの男が自分より年上であることはもう重々承知なので口に出すことはしない。


僕はいい加減学んだのだ、モンスターを見た目で判断してはいけないと。

例えばこのパッと見気だるげな美少年なモンスターの中身が鬼畜おじいちゃんアンデッドであるとか、絶世の美貌を持つくせに酒癖が悪すぎる唯我独尊ラミアだとか、ゆるふわ天使な見た目のくせにニンゲン大好きな変態アルラウネとか……。


「また吹っ飛ばされてーのか?」


「まだ何も言ってないじゃないですか……」


雪を払って立ち上がる。っていうか普通生後三日のモンスター、しかもこんな可愛らしい女の子容赦なく吹っ飛ばしますかね。いくら雪の上と言えどもさぁ。だから鬼畜って言われるんだよ。

恨みがましい目を向けると吹っ飛ばした鬼畜に鼻で笑われた。腹立つぅぅ!


とりあえず怒りを抑えてロイドと共に右の道へ進む。歩き始めてすぐに『レードの町はこちら』という道案内板が見えた。

しかし僕とロイドは町のゲートが近づくにつれ、なんだか町の様子がおかしいことに気が付く。


「……?なんか、やっぱり賑やかだな……?」


「だよねぇ?なんか子供の声だけじゃない気がするん……だけ……ど……?」


遂に『ようこそ、レードの町へ!』と書かれた看板が掛けられたアーチ状の門に辿り着いた僕らは、門を潜り抜けた先で来客を出迎えた()()に言葉を失った。





ロイドがいた。



僕の隣にいる生身のロイドじゃない、雪で作られた見上げる程に大きいロイド像が、そこにはあった。




「……………………………………えっ?」


「……………………………ブフォッ!!!」


先に立ち直ったのは僕だった。

訳が分からないとばかりに間抜け面で雪像を見上げるロイドと対極的に凛々しい顔をしてるロイド雪像に耐え切れず、地面に沈む。


「あーははははははっ!!な、なにこれクソデカロイド像……くっくくくぶふっ!ロ、ロイドさんこれ、あっひゃっひゃっひゃっひゃっ!!」


「…………………今日の朝には、無かった」


地面をドンドン叩いて笑う僕の隣で、未だ衝撃から立ち直れていないロイドが呆然と呟く。

それが余計に面白くて、僕は笑いの衝動から逃れらることができなかった。


「いーひひひひっ!ちょ、ちょっと待ってお腹痛い……く、くくくっ、げほっごほっ、ふふふふっ」


「おいラウ。次笑ったら一生消えない痕を頭に残す」


「アダアアアアア!?あた、頭割れるっ!待って待ってもう消えない傷できちゃう!生後三日で死ぬ!死んじゃう!」


地面でヒイヒイ笑っていた僕の顔面を片手で鷲掴み、ミリミリと握り潰さんとするロイドの腕を必死にタップする。

僕生まれてこの方毎日死の恐怖感じてるんですけどー!?っていうかロイド力強いっ!全然はがせない!なんで……ハッ!そういえばリリ剣でモンスターは『身体強化魔法』が使えるって語られてたな!?内包魔力で腕力とか脚力を一時的に補うってやつ、これか!?今ロイドがしてるのそれか!?イテエエエ頭割れるぅ!!


「割られたくなければ燃やせ、これを、今すぐに、全力で」


「仰せのままにィィィイイイ!!!」


ドスの効いた声で僕にそう命じるロイドには『王』の風格があった。流石レクス、いやこれもう間違いなく恐怖政治ですけどね!


必死に全身から魔力を噴き上げる。唸れ魔力!燃やせ魂!僕の頭がカチ割られる前にこの雪像を燃やし溶かせーーーッ!!

そう力を込めた瞬間、ゴオッと謎の風圧なようなものが僕の体から発生した。同時に何故か僕の体から紫色の光が溢れ始める。


えっこれ大丈夫!?暴走とかはしてなさそうだけど平気なの!?すっごいペカペカしてるけど!?いやでも今止めたらロイドに殺され────っておいおいロイドさん?何『こいつぁやべえぜ……っ!』みたいな顔して顔を腕で庇ってるんですか!?焚きつけたの貴方ですよ!?これなんかあったら何とかせえよお前!!


「……あれ?兄様?」


「えっ!?」


もうどうにでもなれやああ!とばかりに魔力の放出を止めない僕と、「やっべー」とかなんとか言いながら見てるロイドの背中に、突然そんな声が掛かった。

その覚えのある声と呼び方に驚いて思わず魔力の放出が止まる。シュウウ……とばかりに風圧が消え、体の発光が止まった。

ロイドと共に振り返った僕は、背後に立つモンスターを見て驚きの声を上げた。


「ぱ、ぱぱぱ、パーシー!?」


「……?どちら様ですか?」


訝し気に僕を見下ろすのは、大きな角を持った羊の獣人────ロイドの弟であり、僕の本日のお目当てのモンスター、パーシーであった。



昨今の市場競争を鑑み……っ、作者としても誠に不本意ながら……!検討に検討を重ね……!サブタイトルをつけました……っ!!!

より一層の作品の面白さ探究を続けて参る所存ではございますので、変わらずのご愛顧……っ、よろしく!お願いします!!


いやまあ、作者の個人的な趣味趣向として長いタイトルが得意でないというだけの話です。

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