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聖霊教会大聖堂 地下大図書館 其の一

 聖霊教会大聖堂 地下大図書館。


 そこは、数百年という長い年月をかけて聖職者達が聖霊に関する蔵書を集め、纏めた地下図書館である。


 叡智を求める聖職者によって収集保存され、聖職者達に蔵書を通して知恵を与えるそこはしかし図書館である以前に聖霊教会にとって無くてはならない祭(・)場(・)であり、そして魔法界の防(・)衛(・)の(・)要(・)を担う重要な施設である───そう語るのは、共に地下に向かうエレベーターに乗り込んだ聖女シエルリーファ様だった。



「大図書館には遥か昔始祖聖霊様が一柱、知と時を司るサマルエラ様がモンスターにお与えになった『時の祭壇』が安置されています」


「時の祭壇?初めて聞くでござるな」


「聖霊教会に所属する聖職者にしか伝えられない超機密事項ですから。この祭壇は始祖聖霊サマルエラ様を祀る祭壇であり……そして都市結界よりも強固な結界を張る結界装置でもあるのです」


 ゴウン、と重低音を響かせて下へ下へと僕らを運ぶエレベーターの音よりずっと耳馴染みの良い静かな声で、これから向かう施設の説明をしてくれるシエルリーファ様。

 大司教よりも更に偉い、枢機卿という教会頂点に限りなく近い肩書を持つ聖女が語るところによると、なんでもこの時の祭壇は大昔に実直に聖霊への崇拝を捧げるモンスター達に感銘を受けた始祖聖霊サマルエラ様が自らの信徒たちを守るために授けたものとされており、以来聖霊教会大聖堂は都市結界とは別に時の祭壇が常時発動させている結界によって守られているらしい。


 時の祭壇による結界は、規模こそこの城のような大聖堂全域という小さいものであるが、その防衛力は各都市や王都を守る都市結界よりも強固であり、魔法界に何某かが攻め入り蹂躙を開始した際にはモンスターを守る最後の砦としてその門戸を開くのだとか。


「聖霊教会にとって……いいえ、魔法界にとって大図書館および時の祭壇は重要施設です。万に一つも時の祭壇が害されてはならない。それ故に外部のモンスターの立ち入りは固く禁じています。それどころか聖霊教会所属の聖職者といえどもみだりに足を踏み入れることは許可されていないのです」


 モンスターを守る最後の砦を守ることはモンスターの安寧を祈る聖霊教会にとって何よりも優先すべきことだと言うシエルリーファ様は、階数表示から視線を外し、そっと服の胸元から首に下げたロザリオを取り出した。


 昨晩も見た銀製のそれの中央には白い宝石が嵌め込まれており、美しく精緻な意匠が施されている。よくよく見れば中央の宝石にはムーンストーンのように石の内から輝く光の帯のようなものが浮かんでいる。

 確かラブラドレッセンスって言うのだったか。白い光沢にも青や緑の光にも見える不思議な美しさを内包するそれはシエルリーファ様の銀髪を思わせる神秘的な色で、自然感嘆の息が漏れた。


「その為、大図書館への入館にはこの大司教以上のモンスターが持つ鍵が必須であり、鍵の所有者による同行が義務付けられています」

 

 どうやらこのロザリオは聖霊教会内でも序列を表す指標であり、同時に大図書館入館のための鍵でもあるらしい。よくよく目を凝らしてみれば、最近なんとなく感じ取れるようになった魔道具特有の魔力の流れのようなものが見えた。


「……この大図書館の重要性はご理解いただけたでしょう。今回は特例であることを忘れず、聖霊様に粗相なきよう」


「肝に銘じます」


 そんな場所への入館を許したということは、僕たちがやっていることもまたモンスターを守るためであると教皇様が理解を示してくれたという証左である。

 期待を裏切らないようにお行儀良く……具体的に言うならいつぞやにここを訪れたらしい博士の二の舞にだけはなら無いように気をつけよう。


 いや普通にしてるだけでいいか、アレ(モンスターを指す)のアレ(一般的に奇行と称される行動を指す)の真似なんてシラフでできるもんじゃ無いからな……。っていうかアレのアレは犯罪だ。良い子は真似ダメ絶対。

 


 小気味いいチーンという音と共に浮遊感が消える。先導のシエルリーファ様についてエレベーターから出れば、聳えるほど大きい木製の扉が現れた。


 地上の礼拝堂の青銅の扉のように表面には魔術を構築する文字列が薄らと浮かび上がっている。ロザリオを片手に扉へと触れたシエルリーファ様は、小さな声で何事かを唱え始めた。


「───解錠」


 鍵を持つ者が扉よ開けと唱えると同時に、それは現れる。

 不可視の錠前が落ちる音、古びた扉がひとりでに開く重たい音、木と古い紙の匂い、そして───巨大なシャンデリアによって全貌が照らされ顕になる、何千何万という膨大な数の本が収められた本棚、本棚、本棚……。


「す、ごい……」


「これは中々……ヴィオレットの都市立図書館に並ぶのでは無いか?」


 まさに圧巻という言葉がぴったりな光景にアジェルと共に口を開けて広い空間を見渡す。本棚の森と称しても大げさではないほどにそこかしこに本棚が立ち並んでおり、もはや本棚が作る通路は迷路のようになっている。


「流石に学術都市ヴィオレットが誇る図書館には蔵書量も規模も劣ります。なにせここに納められている蔵書は基本的に聖霊様関係のみですから」


「へええ……」


 聖霊関係だけでこの量とは恐れ入る。よもやはるか頭上にある天井に届くのでは無いかと思うほど高い本棚は、ざっと見回す限りでも50はある。壁一面どころか天井と床以外で本が収まっていない場所を探す方が大変なくらいだ。    

 計り知れない……というか上の方の本はどうやって取るんだろう。まさかあの梯子使うとか言いませんよね……?


 目算7、8メートルはある癖になぜか木製という安心の欠片も見えない素材でかつ落下防止とか安全装置的なもの一切無さそうな作りの梯子を見て見ぬふりしていると、さっさと図書館の中に歩を進めていたシエルリーファ様にはよ来いと目線で急かされた。慌てて後を付いていく。


「こちらが目録と地図です。聖戦関係でしたら恐らく西側5番から7番書架あたりでしょうか。手分けしましょう。私は5番書架を見てきます」


「えっ……と、シエルリーファ様も手伝ってくださるのですか?」


 至極当然のように自らも捜索に加わると言うシエルリーファ様に驚いて思わず素っ頓狂な声が出かかる。勿論お目付け役でもある為にじゃあ案内したからこれでさよなら、とはならないだろうとは思っていたが……口からまろびでた疑問に、しかし聖女は「何言ってんだお前は」みたいな顔で振り返った。


「ここにどれだけの蔵書があると思っているのですか?手分けした方が効率がいいでしょう。いいから貴女は6番書架を見てきなさい。騎士様は7番書架をお願いします」


「お、おおん……」


「うむ、承知した」


 てきぱきと指示を出しては大きく5と振られた本棚へと向かって行くシエルリーファ様。なんだかトゲトゲした物言いは昨日から変わっていないけども、どことなく昨日よりも優しいような……お前呼びじゃなくなってるし。 一体何の心境の変化だろう。

 去っていった背中に首を傾げる。傍らのアジェルは顎を撫でてはふむ、と頷いた。


「やはり仲良くなってるな?」


「うーん……?」


 ベルへの取次が相当嬉しかったのかなぁ……?


 

 



 疑問は尽きず、しかして時間は有限。とりあえずシエルリーファ様の指示通り僕とアジェルも割り振られた本棚へと向かった訳なのだが。


「いやこれマジで上の方どうすんのよ……」


 首が痛くなるほどに見上げなければ一番上が見えない高さの本棚を前に腕を組む。物理的に取るのが難しすぎるて。やっぱりあの梯子使わなきゃダメか?高所恐怖症って訳じゃないけど余りにも頼りなさ過ぎて怖いんだよなぁ。具体的に言うと細さが。


『上の方の本持ってきてあげようカ?』


「取って来てくれるんなら嬉しいけどねー」


 というか幅も両手を広げても届かないほど大きいんだけど、一体一つの本棚に何冊入ってんだこれは……。端から端までみっちり本詰まってるし。

 しょうがない、下の方から順繰りに見ていくか。耳元で聞こえた声に適当に相槌を打ち、げんなりしながらしゃがみこみ本の背表紙と目録を見比べる。


 この辺は……ああなるほど、教会の軍備関係の本がある場所なのか。へえ、ちょっと面白そう。間違いなく機密事項だろうけど後で時間あったらちょっと読ませてもらおうかな。アジェルも好きそうだし。

 あーでも5代目勇者との交戦記録とは微妙に内容がズレてるんだよなぁ。目録見る限り歴史書というか戦史系はやっぱり上の方にあるっぽい。取ってきてくれるのならお願いしようか……あ?


『本の名前教えてくれたら取ってきてあげるヨ』


「おおおおおわあああ!?妖精!?」


 顔のすぐ横に浮かんでいた小さい顔と目が合い、驚いて野太い叫びが迸る。思わずその場から飛びのいて距離を取る僕に、その小さいイキモノ……蜻蛉の羽をパタパタさせる陶器の人形のようなそれは、表情も変えず口も開かないままくすくすと笑い声をあげた。


『地下大図書館へようこそお客サマ。お困りです……オゥッ?』


「ああああああアジェルウウウウッ!」

 

 超高速の手さばきでぐわしっとボールペン5本分束ねたくらいしか無さそうな細い胴体を両手で掴み、そのまま隣の本棚へダッシュする。

 やばいやばいティ〇カーベル見つけた!ティン〇ーベル見つけたぁ!!


「アジェル見てこれやばいティンカーうわあああめっちゃ囲まれてるううう!?」


「なんだラウ、静かにするでござるよ」


 大興奮でとっ捕まえた妖精を見せようとアジェルの元に飛び込んだ僕が目の当たりにしたのは、今手の中に居る妖精と同じイキモノ×10に囲まれるアジェルの姿だった。


 キャッキャッウフフと和やかな空気の中、アジェルの元に本を届けたり本棚へ本を戻したりと『お手伝い』をする小さな羽の生えた陶器人形達に目玉が飛び出る。

 するとアジェルは僕の拘束から必死に逃れようと藻掻く妖精を見て「こらこら」と少し焦ったように手を放させた。


「コディアでござるよ。図書館によくいるゴーレムでござるが見たこと無いか?」


「ゴーレム!?これが!?」


 僕の知ってるゴーレムとだいぶ剥離があるんですが!?ゴーレムってデカくて泥とか雪とかで出来ててそんでデカくて作成者の指示がないと動けないからってバカの代名詞になってる哀れな創造物じゃなかったっけ!?

 

「コディアは自立する目録(インデックスゴーレム)でござる。命令指揮系統に自動思考知能を組み込んでいて、ある程度自立して動ける賢いゴーレムだ。本を持ってきたり片付けたり翻訳したりと利用者をサポートする役割が振られているのでござるよ」


「あ、アーティフィシャルインテリジェンス搭載人形ってことすか……?」


 つまりそれって人工ならぬモ(・)ン(・)工的ツクモガーミ、もしくはモン工生命体(ホムンクルス)……いわゆる禁忌というやつなのでは……。


 いややめよう、深くは考えまい。そこ突っ込みすぎるとモン工カテゴライズの話になり僕とロイドのアイデンティティとかそういうのに踏み込まざるを得なくなる。割かしその辺ナイーブだから僕ら。

 なんだかんだお互い自分の生命としての定義みたいなところには暗黙の了解で触れないようにしてるから。ノンデリカシー創造主はそういう情緒みたいなの全く察知できないからよく僕らの不況買ってるけど。「アンデッドって生きてると定義していいか微妙なところあるよね」じゃないんだよお前が言うな案件すぎる。

 うん大丈夫大丈夫、僕らは意思ある生命、尊き生命……。


 僕の手から命からがら脱出し、一目散に仲間たちの元へと逃げていく全長約20cmのインテリジェンスゴーレムを見送る。

 なるほどAI搭載ゴーレムかぁ、正直ニンゲンがあったらいいなって考えてる近未来な存在だよねこれ。あっぱれモンスターの魔法科学技術。

 っていうか何故こんな技術があって魔法も使えるのにニンゲンに勝てないモンスター……いやまあ勇者のせいですねわかります。


「高い所の本も持ってきてくれるから活用するでござるよ」


「わーおナイスマッソー……」


 アジェルが持ってくるようお願いしたであろう分厚い本を、そのマッチ数本分しかなさそうな細腕で軽々持ってくるコディアに顔引き攣らせる。あの腕で顔面ぶん殴られたらそこそこ痛そうだ。敵対存在とみなされないように気を付けよう。さっき早速わし掴んでしまったけども。


 とりあえず少し残念だが不思議生命体では無いらしい。ならば活用させてもらおうじゃないか、あの梯子に上るのは極力避けたいところであるので。可愛らしい人形達を振り返る、が……。



『『『『…………』』』』


「…………あの?」


「乱暴するからでござる」


 目が合った瞬間さっきまでの和やかさはどこへやら、サッとアジェルの陰に身を隠しじっと僕を見つめ始めるコディア達。人形故に表情が動くことは無いが、纏う雰囲気が「要警戒生物」と対峙している時みたいになっていた。

 どうやら先ほどの無体が効いてしまっているらしい。全く出てこようとしない。


 利用者をサポートするゴーレムなのに職務放棄か?っていうかゴーレムなのに感情が豊かすぎない?

 ひくりと頬が痙攣するが、しかし僕が乱暴したのは事実。怖くないよーとアピールのために笑顔を継続してハンズアップ、非武装無抵抗を全身で示す。


「えーっと……さっきはごめんね?もうしないから手伝ってほしいなー……なんて……」


『そう言って安心した所を食べる気だヨ』


『教皇サマが前に言ってた、コディアを食べる悪いモンスターがいるっテ。アレだヨ』


『なんか犬?狼?みたいな気配すル』


『アレすっごい力強いのヨ。さっきお腹潰されちゃうかとおもったもン』


『多分近くに行ったらお菓子みたいに食べられちゃウ。ぽりぽりっテ』


『その内巨大化するんだワ。そしてビーム出しながらコディア達を全部食べるんだワ』


「そんなバケモンみたいな生態しとらんわ」


 陶器の人形なんて食べたら口の中ズタズタになるわ。いやそうではなくて、意志ある生命体らしきものを食べるほど社会性捨てないし巨大化もビームも致しません。

 引き攣る笑顔でそんなことしないと手を振るが、コディア達は暫く無言で僕を観察した後やっぱりコソコソと何かを言い合ってチラチラ怯えた視線を向けてくるだけ。距離が縮まる気がしない。


くっ……初手コミュニケーションをミスってしまった弊害が……だって突然目の前にTheファンタジーな妖精お出しされたら興奮しちゃうよ。こちとら小さい頃の夢は「お嫁さん、ダメなら妖精さん」だぞ。アニメに出てくる妖精に憧れて自作の羽(素材:新聞紙)背中にくっつけて幼稚園の教室の窓からアイキャンフライしようとして全力で先生方に止められた過去を持つ女なんだぞ。本物目の前に出てきたら興奮するのは当然の摂理なんだって。


 しかしながら僕の内心の言い訳がコディア達に届く訳がなく。

 ううむ致し方ない、この方法は取りたくなかったが……いつまでもタイムをロスり続ける訳にはいかない。やるか。


「アジェル。コディア達って何食べてるの?」


「え?ああ……活動エネルギーは魔力でござるからな、食物を摂取してる訳では無いと思うが」


「ふむ、じゃあ魔力がご飯代わりね」


 覚悟しろ妖精たちよ。転生(?)系テンプレ主人公あるあるを見せてやろうぞ……!

 ふっと笑って髪を背中に払い、人差し指の先に魔力を集める。

 しかしいつものように魔力を紫炎に変換することはせず、そのままアジェルの影に隠れるコディア達に向けて差し出した。


「そろそろ10時のおやつの時間だしね、仲直りの印として魔力を分けてあげよう。オイシイヨ!」


「う、嘘だろ……?こやつゴーレムを餌付けしようとしている……!?」


 そうだ!もはや恥も外聞も捨てましょうとも!使えるものは何でも使うのが我々おもてなし本部ならびに親善大使執務室のモットーなのでね!

 ちゅーるに飛びつかん猫が居ないように、骨にしゃぶりつかん犬が居ないように、コディアもおやつを目の前に差し出せば警戒も解けようというものよ!その名も魔ちゅーる大作戦!


 呆れ顔のアジェルの後ろから顔を覗かせるコディア達に見えるように人差し指をホレホレと振って見せる。警戒心バリバリだった彼女らも、魔力と聞くや否いやソワソワとし始めた。その様子ににんまりと口の端を裂く。いいぞいいぞ、こっちゃこい。

 

『……いいノ?襲ってこなイ?』


「襲わない襲わない、聖霊様に誓って襲いません」


「こんな時ばかり聖霊様の名前を出しおってからに……聖女に聞かれたら叩き潰されるでござるぞ」


 だまらっしゃい!そもそもこんな所で油売ってんのバレた時点でボコボコにされるわい!そうならないためにも可及的速やかに本探しに戻るべく餌付けてるんでしょうが!


 隣の書架に居るであろうシエルリーファ様の気配が近づいてきていないのを何度も確認しながらも、逸る気持ちを抑えてコディア達を待つ。

 するとようやく一体だけが恐る恐るという風に近寄ってきた。


『…………………………イタダキマス』


「お」


 ちょん、と差し出した人差し指に恐々と手を触れるコディア。すると同時に触れられた個所から僅かに魔力が抜き取られるような不思議な感覚を覚えた。


 特殊な食事風景を興味深く見守っていると、じっと僕の指先を見つめていたコディアが突然パッと顔を上げた。そしてフルフルとその体を震わせ始める。

 ふふ、どうやら気が付いたようだな……僕に備わっているチートに!

 

 そう、今どきの異世界テンプレじゃ転生者や召喚者の魔力なりなんなりは原生生物にとって美味なるものと相場が決まっている。それは転生(と言っていいのか甚だ疑問は残るが)しこの魔法界に来た僕とて同じであるはずである、多分!

 さあさあこの甘美な魔力の虜になっちまえよぉ……そんで仕事手伝ってください。ちなみに体液は危険物な可能性が非常に高いので勘弁な!


 げへへ、とどう見ても悪役側の笑顔で反応を待っていると、そっと手を離したコディアはおのれのその小さな手で小さな口を押えた。


 さあ打ち震えろ!僕の美味なる魔力によっ……



『な、なんカ……辛苦……っ』


「辛苦!?!!?!」


 辛苦って何!?そこは「お、美味しい……っこんな魔力食べたこと無い……っ」って恍惚とするところじゃないの!?ちょっと苦しそうなうめき声上げるのやめてくれない!?不味い通り越して苦悶ってこと!?辛いと苦い同時に味わうことそうそうないよね!?

 ちょっとヤバイ食べ物食べた時みたいなリアクションしないでよぉ!


『……ア、でも慣れてきたらイケる……かモ?』


「珍味じゃん!食べ慣れない珍味食べてる時リアクションじゃん!」

 

 首を傾げながらもおかわりを求めてくるコディア。するとテレビなら視聴率低迷間違いなしの食レポに興味を持ったらしい他のコディア達もわらわらと寄ってきた。妖精の群れに取り囲まれる。


『ワタシも食べてみたーイ』


『辛くて苦いノ?気になル……』


『なんかネー、始めは不味い気がするんだけど、噛み続けてるとちょっと美味しくなル』


「大変不名誉な評価なんですけど……」


 ホルモン食わず嫌いしてたけど周りに勧められて食べて見たら案外美味しかった……みたいなリアクションすな。複雑だわ。


 しかし僕の不満な顔もなんのその、案外好奇心が強いらしい妖精たちはさっきまで怯えていたのにも関わらず僕の周りに寄ってきては『ちょうだーい』の大合唱を始める。


 くう、ずるいぞ。そんな可愛くおねだりされたら文句も言えないじゃないか……っ!ええいもってけドロボー!

 腹を括って両手の全ての指に魔力を集めると、僕の手にワッとコディア達が殺到した。

 

『襲わないでネ。約束だヨ』


『ウッ……!な、なにこレ……こんな魔力食べたこと無イ……辛苦ッ』


『…………ア、でもずっと噛んでるとほんのちょっと旨味が出てくル……おい、しイ……?』


『なんカ、指によって味違うよネー?親指が一番不味美味イー』


『髪の毛の方、ほんのり甘イ……?』


『なぁにそレ、気になルー!』


『アッちょっト!次ワタシだヨー!』


「ちょっと喧嘩しないで!いや待て数多い、待て待て待て魔力枯渇するうううわわわわわあああ!?」



 次第に、関わっていなかったコディア達までもが騒ぎを聞きつけて集まってくる事態となり、そして最終的に────







 

「………………何をしてるのですか、お前は」


「………………業務サポーターとの友好を深める兼、サポート業務の報酬の前払い提供……ですかね……」


「もはや逆に本探しなんてできようもない有様でござるな……」

 

 極寒の眼差しを僕に向けているであろうお前呼びに戻ったシエルリーファ様と、ドン引きしているであろうアジェルの顔すら見えないくらい、僕はコディアに群がられる羽目になるのであった。



『なんか……癖になル……』


「髪食べんのやめて」


 その後、シエルリーファ様にバチバチに怒られたのは言うまでもない。


 

ここがすごいぞ女児優ちゃん(4)

・先生に「優ちゃんはどんな人のお嫁さんになりたいの?」と聞かれて「妖精の羽が生えてるイケメンのおじさん」と答える。

・新聞紙製の羽を背負い、意気揚々とベランダから飛び立とうとするのも先生方のナイスプレーにより阻止され「羽生えたから大丈夫なの!羽生えたから大丈夫なのおおおお!」と号泣する。

・空が飛べるようになる魔法の粉と称して母親の目を盗み片栗粉を家中にぶち撒ける。(なんでこんなことをしたのかと問い詰める母親に対し「お父さんを妖精にしたかった」と供述する)

・いじめっ子の背中にそっと蝉をくっ付けて「◯◯くんもこれで妖精だね……」と言ってフッと笑って去っていった。いじめっ子は泣いた。


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