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イグニスを探して村の中を走り回る。声をあげて名前を呼んでいると誰かに捕まった。口元に手を当てられて、背中から抱きつくような格好で身動きを封じられている。
「しっ……」
耳元に吹き込まれた黙っていろ、の合図。指示どおり壁際で大人しくしていると、村の通路を中型の魔物が獲物を探して闊歩していく。ただよう甘ったるい香りに鼻をひくつかせながら。
安堵して肩を落とすと、僕を拘束していた腕が解ける。
「怪我はないか」、そう告げるのはイグニスだった。
「平気。それよりイグニスは……」
「俺のことはいい。お前は村人を守る別隊と一緒に逃げろ、いいな!」
「あ、待っ……!!」
仲間を頼って山を降りるよう指示されるが、僕はとっさにイグニスを追いかけた。逃げろと言われたが僕が心配なのは彼の方だ。今、離れられるのは困る。
焼けた瓦礫や石ころに躓きそうになりながら、僕はなんとか彼の背中を追った。がむしゃらに進むと、開けた村の一帯でイグニスは彼の相棒と合流したところだった。
人気のない辺りで情報交換か、二言三言話し合っているふたり。とっくに避難誘導は終わったのかだれもいないその場所。イグニスが身を翻した瞬間、白銀が閃いた。血しぶきが飛ぶ。倒れる体、すべて、スローモーションに見えた。斬りかかられて倒れているのはイグニスだ。
「おまえっ……」
そう、彼を襲ったのは魔物ではない。相棒である騎士、マルクスだった。
騎士仲間、それも相棒に背中からざっくり斬りつけられた。ふたりきり、背後をとって揺らめいた剣。背後からイグニスの腰に足を乗せて致命傷を何度も刺すマルクス。彼は、執念深くイグニスを殺そうとしている。肉に刺さる鋭い凶刃に僕は怯えた。やめて、もうやめて。見てられない僕は目を覆ってしまう。止めればよかった、でも恐ろしくて震えるしかない。
「ん? なぁんだ居たんですね」
影法師のようにふりかえったマルクスと目が合う。
「見られてしまいましたか。ではあなたもご一緒に」
マルクスはにっこりと薄ら寒くなる笑みを貼り付けている。僕の頭上に剣が迫って、――以降の記憶はない。あるのはただのゲームオーバーの表記だけ。
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悪夢のような4月17日にループして戻ってきた。
目覚めて動悸がしている。親しい間柄だと思っていた。イグニスは、信じていた相手に殺されたのだ。あの男に彼を近づけてはならない。激しい動揺でもそれだけは思いだした。
「ん? トイレ……じゃ、なさそうだな。って、顔が青いぞ!」
「大丈夫、……ちょっと気分が悪いだけだから」
僕が平気だと告げてもイグニスは動揺したような様子で飲み物はいるか、体を温めるか、次々に提案してくる。僕はそんなにひどい顔をしているのだろうか、自分ではわからない。
「あのさ、もしもだよ? 信じてた相手にひどい裏切りを受けたら、君は……」
「それってまた例の予知の話か」
うなずくと彼は「そうか、俺は裏切られるのか」とあくまで静観している。誰とは言っていないが、それでも悲しそうな目をして。
「先に知るのはマナー違反か」
「そんなことないよ!」
そして僕は彼の相棒の名前を出した。思ってもみなかったようで、肩を震わしてびっくりするイグニス。彼は僕と目をしっかり合わせる。言うことは守る、そういったニュアンスを含ませて。
「普段なら信じられないが、以前のこともある。今度こそお前を信じる。あいつのことは警戒しておくからお前は大人しくしててくれ」
イグニス、僕は――。




