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前略 不在の親友へ  作者: 碓氷みゆき


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22 選択肢「静観する」

 イグニスの目をみつめて「静観する」ことに決めた。


 教会の鐘が鳴る。年が明けた。1月1日の午前0時ちょうどだ。


 真夜中。住宅街を抜けた小高い丘にひっそりと佇む教会の鐘。僕らは石段のうえに立ちその音を聴いていた。


 音が止んだら彼の答えを受け止めねばならない。どんな答えでもイグニスを尊重したいがわずかに期待している自分がいた。彼は応えてくれるんじゃないかと。


 だが現実は非情だ。


 イグニスが突然苦しみだすことで事態は急変した。腕に抱えた紙袋を取り落とし苦悶の表情でうめき始める。彼は心臓を押さえて崩れ落ちた。

 地面に倒れてなおもがき、発作のように痙攣する。イグニスは、意識が朦朧としてきたのか、「返事を……返事、へんじ……を」とうわ言のようにつぶやく。

 やがて吐血し――とうとうイグニスは気を失った。

 突然の出来事だった。


 僕はとっさに彼を抱えて踏み出した。自分より体格のいいイグニスだから気持ちは急いていても歩みはかなりのろいだろう。それでも彼の体は、祭りで盛り上がる群衆の中で医者はいないかと叫ぶ最中も暖かかった。


「お兄さん、悪いが……。気を確かに」

 やっとみつかった医者に診せようとすると首を振られた。まだおぶってる状態だ。相手に脈をみてくれと頼み、イグニスを下ろして腕を取って愕然とした。


「その人はもう亡くなってるよ」


 祭りの喧騒が耳に遠い。遠くで打ち上がる花火や歓声にまぎれて、僕の口からは悲しみによく似た絶望が色濃く発されたのだった。


 No.09 バッドエンド 『切り出されぬ別れ』

 なにが悪かったんだろう。やっと答えが聞けると思ったのに……。


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