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前略 不在の親友へ  作者: 碓氷みゆき


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14 選択肢「共に諦める」

 「共に諦める」ように呼び出された場所に立ち尽くす。


 僕らの手は繋がれたままだ。

 じっと犯人が現れるまで寒さにもめげず、ふたりきりで居た。

 そんな狭い世界に割って入るように現れたのは、謎のローブ姿の人物だった。

 そいつはフードを目深に被り、杖を持ったまま、こちらに近づく。 

 無言だった。


「なにが目的だ!」、叫ぶイグニス。

 嵐はどんどんひどくなる。

「彼のものを返せ!」

「え?」


 沈黙で返す謎の相手が杖を持っていない手には、アクセサリーが乗っていた。僕は思わず自分の右腕を見た。そういえばいつも付けているブレスレットを失くしていたと――?

 そんな僕ら二人の手をみて覆面の相手は舌打ちをすると、いきなり火炎魔法を爆発させた。


 足元が崩れる。


 脆い崖の上、繋いでいたのは手だけだった。魔術による崩落により、僕らは揃って海面に叩きつけられた。一緒に終わりたいと願いながら水しぶきに巻き込まれて。 


 寄り添っていたはずの彼の手がない。激しく荒れ狂う海中で必死に彼を探した。ふたりして海面に飲み込まれるも姿を見失って、ついに呼吸ができなくなった。ギリギリ存在する意識、閉じるまぶた、最後までイグニスの黒の直毛を探して手はさまよった。


 それでも叶わぬ望みだったのだ。離れてしまった手と手とは永遠に――……。


 漂流先の島で僕は目覚めた。遭難している事実にも目もくれず、嵐でいろんな漂流物が流れた浜を海を、僕は探した。海中で分かれたイグニス、彼の姿を思い浮かべて。


 白い砂浜に何か目につく漂着物があった。僕は迷いなく遠浅めがけて走った。

 イグニスの腕だった。ボロボロになった着衣が絡みついている。


 一緒に、自分も。それでよかったはずなのに。

 ともに終わりたかった、その願いさえ、許されない。


 静謐な浜辺に流れ着いていた傷ついた腕を拾い上げる。イグニスの一部を抱きしめて僕は慟哭した。この寂しい世界に独りぼっちになったことを。ふたりでなら悲劇で幕を閉じようとも、それで良かったはずなのに――……。


 朝焼けの美しい海岸線、ただ僕の心だけが暗い絶望に染められていた。


 No.05 バッドエンド 『メメント・モリ』

 ずっと一緒だって言ったのに……。ここには約束も守れなかった僕しかいないんだね。


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