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迫る嵐の予報。家にいた僕はイグニス宛に手紙が届いたのを確認した。彼の部屋をのぞくと手紙を隠すようにしまったイグニス。
様子がおかしく感じた僕だが、隠し事や秘密の匂いにいちいち目くじらを立てていたらこちらが追い出されてしまうかも、と僕は言及しないことにして扉を閉めた。
どうせ気の所為だろう、と。
だが――……目を離した隙にイグニスは家をこっそり出ていったらしい。嘘だろ、僕は絶句していた。
日付は8月5日、夜明けまで悶々と待つが連絡はない。
そして丸一日待っても、彼は帰ってこなかった。そう、……二度と。
一睡もせず酩酊するように倒れる僕の体。床に放り出されてラブレターに映し出されたのは見覚えのありすぎる――ゲームオーバーの文字。
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涙を拭った。イグニスの異変はあの手紙の直後だった。彼が受け取った手紙を彼の居ぬ間に盗み取る。机に出しっぱなしの手紙を。
――返してほしくばイリス岬まで取りに来い。
内容は明らかに不穏なものだった。ここでイグニスがおびき出されていたことを知る。ご丁寧な手紙のおかげで居場所を辿ることができた。
切り立った海辺の断崖、僕は、イリス岬へと家を飛び出した。
そうだったのか。イグニスは土砂災害の件とは別の事件に巻き込まれていたのか。一括りにされたせいでみえていなかった状況がみえてくる。それにしてもイグニスの何を奪ったら彼は嵐の前夜に飛び出す?
到着した岬には人影は一つしかなかった。僕は走って彼に抱きついた。慌てた相手も僕の姿を認めると驚く。イグニスは申し訳なさそうにつぶやいた。
「……見たのか」
やはり隠そうとしていた! 僕にみつかってイグニスは照れたように頬をかいた。
「心当たりは? ねえ、誰の仕業?」
「さあ、誰の仕業だろうな。見当もつかない。見え透いた罠でも俺が行くしか、」
僕は一人で解決しようとするイグニスを引き止めた。
「もう誰にも殺させやしない! 誰にも、君をッ……!!」、風にも負けずに叫んだ。
「俺だって同じだ。お前がいなくなったら俺は生きられない」
イグニスの声は震えていた。僕の頬を押さえるその指先も頼りなく思える。目を腫らして僕をみつめる視線に、痛いほどの気持ちが乗っている。
「それなら………」
手を繋ぐ僕。彼と、どんなときも一緒がいい。それがたとえ死地でも。
そうして選択肢を採る。僕らはふたりで――。




