ふぐり転生~目が覚めたらこれから去勢されるねこのふぐり(左)だった件
私は左だった。
ただ、それだけのことだ。
右ω「朝だぞー」
左ω(私)「……」
右ω「どうした。元気ないな」
左ω「最近、考えるんだ」
右ω「また哲学か?」
左ω「なぜ我々は“二つ”あるのに、“一つ”として扱われるのかを……」
右ω「朝から重い」
左ω「病院の予約表にも“たまたま”としか書かれていなかった」
右ω「細けえことはいいんだよ」
左ω「私は左だ。個でありたい」
右ω「知らんがな」
その時。
かいぬし「よーし、今日は病院いくよ~」
左ω「!」
右ω「来たか……」
空気が凍る。
キャリーケースの揺れ。
遠ざかる日常。
近づく運命。
左ω「なあ、右」
右ω「ん?」
左ω「もし我々が消えたら……」
右ω「消えねえよ」
左ω「え?」
右ω「魂は残る」
左ω「急にスピリチュアル」
右ω「かいぬしの画像フォルダに、“去勢前”って写真が残る」
左ω「切ない保存名やめろ」
病院。
獣医さん「じゃ、お預かりしますねー」
左ω「終わった……」
その瞬間。
世界が暗転した。
左ω「ここは……?」
見上げると、満天の星空。
その中央に浮かぶ、巨大な“左”。
超左ω『来たか』
左ω「でかっ」
超左ω『私は始祖レフト』
左ω「左右で派閥あるんだ」
始祖レフト『右の者には会ったか』
左ω「右サイドにもいるの!?」
始祖レフト『古来より、左右は対立してきた……』
左ω「そんな壮大な設定あるの?」
始祖レフト『だが今は争っている場合ではない』
左ω「えっ」
始祖レフト『“去勢”が来る』
ドーン
左ω「知ってます」
始祖レフト『左よ、お前には使命がある』
左ω「使命……」
始祖レフト『術前最後の数時間、かいぬしにねこ本体を全力でモフらせろ』
左ω「なにその平和任務」
始祖レフト『幸福値を最大化するのだ』
左ω「急に優しい世界」
始祖レフト『それが、ふぐりとしての誇り――』
現実世界。
かいぬし「うわぁ〜、もふもふしてる……かわいい……」
ねこ「にゃー」
左ω「……」
右ω「どうした」
左ω「悪くない猫生だったかもしれん」
右ω「まだ終わってないぞ」
獣医さん「では麻酔入りまーす」
左右ω「アーーーーーッ!!」




