第九話
「殿、周りを確認してきましたが、特に異常はありませんでした。」
「こっちも、問題ないっすよ。」
「こっちも。」
桜と流ノ介、水無月が周りを確認してくれていた。
俺と瑠莉奈は、ホッとする。
「おいおいおい、殿様よぉ、早くしてくんねぇかぁ?」
一人の男が俺に声をかける。
すげーモヒカン頭、悪者っていうことがわかる。
キヒキヒと笑っている。
「貴様! 殿に向かって、何という口の利き方を!」
「まぁまぁ、桜、落ち着いて。」
男の言葉に桜が怒鳴り声を上げる。
俺と瑠莉奈が、何とか落ち着かせる。
「ううん! 改めて、東! モーヒカ! 西! 穂香!」
さっきの男、『モーヒカ』と『穂香』と呼ばれた女性が前の立つ。
モーヒカは短剣、穂香は……、丸腰?
「よろしくお願いしますね~。」
何だがのほほんとした人だな~、胸も大きい……。
「あ・な・た?」
瑠莉奈が笑いながら読んでくる、またもや目が笑っていない。
俺は、何とかごまかす。
「試合開始!」
キヒキヒと笑うモーヒカに対し、穂香は周りをキョロキョロとしている。
そして、灯篭を見つけると、足取り軽く歩いていく。
「これにしましょうか~。」
そういうと、何と重そうな灯篭を軽々と片手で持ち上げた。
モーヒカは勿論、その場にいた全員が呆然としていた。
「よいしょ~!」
そして、持ち上げた灯篭をモーヒカに向かって投げたのだ。
モーヒカは慌てて、避ける。
「あらあら~、外れてしまいましたね~。」
ウフフ、と笑う穂香に対し、モーヒカは涙目になっている。
「う、うわぁぁぁぁぁ!!! おかあちゃぁぁぁぁん!!!!」
怖くなったのか、泣きながらその場を去って行った。
俺達は、何が起こったのかわからず、ポカーンとしていた。
「え、えっと、勝者! 穂香!」
とりあえず、勝敗は決まったようだ。
風雅と流ノ介が、灯篭を運んで元の場所に戻す。
そして、次の試合が始まる。
「次! 東! バーズラ! 西! 冬樹!」
次の試合は、『バーズラ』と呼ばれた女と、『冬樹』と呼ばれた男の試合のようだ。
バーズラは鞭を、冬樹はまたもや丸腰だ。
「ウフフ、遊んであげる♪」
「……そうですか。」
バーズラの挑発に、冬樹は落ち着いていた。
バシンと叩く鞭にも、ふーッとため息をついていた。
「始め!」
「喰らいなさいな!」
始めの合図と共に、バーズラは鞭を冬樹に向かって振るう。
しかし、鞭は冬樹の前で弾かれた。
「は、はぁ!? どうなっているのよ!?」
何度も鞭を振るうが、冬樹には当たらず、目の前で弾かれていた。
「もしかして、結界?」
「だろうな。」
俺の言葉に、風雅が同意する。
どうやら、目には見えない結界が張られているようだ。
「何なのよ! 何なのよ!?」
「次は、こちらから行きますよ?」
自棄になっているバーズラに対し、冬樹は印を結ぶ。
「舞え、『水龍』」
印を結ぶと、水が出てきて龍となる。
その光景に誰もが驚いていた。
「まさかの、陰陽師か……!」
流ノ介の言葉に、俺は成程と頷く。
この世界にも、陰陽師がいるのだ。
魔導士とは違い、陰陽師は印を結ぶことで発動できるのだという。
「ひ、ひぃ……!」
「放て。」
腰が引けているバズーラに対し、冬樹は龍に命令する。
龍は口から、水を吐き出す。
「き、きゃぁぁぁぁぁぁぁ!?」
水に流され、バズーラは気絶していた。
「勝者! 冬樹!」
勝敗が決まった。
試合は残っているが、後の者たちは辞退を申し出た。
四つの試合を見て、自信を無くしたらいい。
「さてさて、皆さまお疲れ様でした。」
残った四人を瑠莉奈が労う。
「皆さまには、我が軍の将になってもらいます。」
真剣な顔をして、瑠莉奈は言う。
それに、おずおずと数間が手を挙げる。
「あ、あの、おら、将よりも欲しいものがあるだ……。」
「あら、なんでしょうか?」
「おら、お金がなくて、家もボロボロで……。」
数間の言葉に、瑠莉奈は微笑む。
「ご安心を、家は新しくしますし、お金も出しますよ。」
「しょ、将にならなくてもだが?」
「勿論、それは、数間さんが決めることです。」
瑠莉奈は微笑む。
数間は何かを考えた後、決めたように顔を上げる。
「おら、将になりますだ! そして、家族と殿様と姫を守るだよ!」
「私も、及ばずながら、将になります。
「私も~、武器があれば~。」
「私も、我、術で、皆さまの力となりましょう!」
こうして、数間、柊、穂香、冬樹が仲間となり、将になった。
そして、始まるのが――
「お前ら! 飲め! 食え! 騒げ!」
そう、宴だ。
数間は、家族を呼んでもいいかと聞き、許可をもらった。
「ほわ~、お姫様奇麗だな~!」
「ありがとうございます、宮ちゃんも大きくなったら、奇麗になりますよ。」
「ほ、ほんとだが? 嬉しいだぁ!」
数間の妹『宮』は瑠莉奈と楽しくおしゃべりをしている。
桜と柊は、お互いのことを紹介しあっている。
いずれは、手合わせをと考えているようだ。
穂香は、出てきた料理をもりもりと食べている。
見た目に似合わず、かなりの大食いのようだ。
冬樹は流ノ介と水無月と話している、同じ後衛だからか話が合っているようだ。
こうして、楽しいときは過ぎて行った。




