第六話
悪田君が勇者になって数日、当の本人はやりたい放題だった。
「おい! メイド! 早くしろよ!」
「も、申し訳ございません!」
メイドに対して、上から目線でこき使っている。
酷いときには暴力も振るっている。
「遅いんだよ! このクソメイド!」
バギッ!
「ひっ……! 申し訳ございません!」
このように、遅ければ殴られる。
勇者だからと言って、何でもしていいのだろうか。
私は、王様に報告したが――
「そんなもの、遅いメイドが悪いのじゃろうよ。」
との一言で済まされた。
殴られたメイドは、心を壊し田舎に帰って行ったという。
「ったくよぉ、こんなことでやめんじゃねぇよ!」
悪田君は機嫌が悪そうに、椅子を蹴り飛ばした。
他のクラスメイトが、落ち着かせようすると――
「うるせぇな、てめぇ、殺すぞ?」
と、脅して黙らせる。
どうしてこうなっちゃったんだろ……?
次の日、王様から命令が下った。
「お主らには、ギルドに入ってもらうぞ。」
ギルド? ギルドって漫画に出てくるあれかな?
「ギルドに入り、力をつけ、魔王を倒してくるのじゃ!」
そう王様が言うと、悪田君は自信満々にいう。
「任せてくださいよぉ! なんたって俺、『勇者』悪田様がついているんだぜぇ!」
「うむ、頼もしい限りじゃ! 他のものも悪田を見習うようにな!」
王様がそういうと、クラスメイトは何とか頷く。
数人は脅しの恐怖がまだ残っているのだろう。
「『聖女』日南も、よろしく頼むぞよ!」
「は、はい!」
私も大きな声で返事をする。
大丈夫、皆がいるんだもの怖くはないわ!
こうして、私たちはギルドへと向かっていった。
ギルド 『ドラファルト』
私たちは、この国のギルド『ドラファルト』に入ることになった。
いわゆる、冒険者というものになるのだ。
緊張するけど、皆がいるから大丈夫!
「おーい! 喜べ! この、『勇者』悪田様が来てやったぞ!」
悪田君は扉を無作法に開け、偉そうに叫ぶ。
扉の先には、いろいろな人がこっちを見ていた。
皆、こっちを一度見たが、元の作業に戻っていく。
「おい! この俺様が来てやったんだぞ!?」
「何が来てやっただよ……。」
「何言ってんのかしら、あの子?」
「勇者って言われてもな~。」
何んかがひそひそ話している、他の人は私たちを気にしいないようだ。
「何だ何だ、何の騒ぎだ?」
一人の男性が、私たちのそばへと近づいてくる。
威圧感が強い、とても強そうだ……。
「誰だ? お前たちは?」
「お、俺達は、王からここに来るように言われたんだ!」
「……あぁ、異世界から来たというやつらか。」
『異世界』という言葉に、私は、夢じゃなかったんだと感じた。
ここでも、悪田君は偉そうだった。
「この! 『勇者』! 悪田様が来てやったんだ! ちょっとは歓迎しろよな!」
「……俺は、ギルドマスターの『バルクス』だ、よろしく頼む。」
「……は?」
『勇者』の言葉に、バルクスさんは驚きもしていなかった。
冷静で、対応をしている。
「おい! 俺はゆうs「黙れ。」……!?」
「ここは、冒険者が集う場所だ、勇者もくそも関係ねぇんだよ……!」
悪田君が威張ろうとしたとき、バルクスさんは黙らせた。
ギロッと私たちを見る。
「死にたきゃ、勝手に死ね。」
そういうと、バルクスさんは二階へと上がって行った。
悪田君は、へなへなと地面に座った。
「な、何なんだよあいつ……。」
「お前ら、マスターを怒らせたな。」
後ろを向くと、一人の男性が立っていた。
この人も冒険者だろうか。
「マスターはな、威張るやつが嫌いなんだよ。」
「い、威張って何が悪い! 俺はゆうsy「それだよ。」……!?」
「そうやって、威張ってるから嫌われるんだよ。」
そういうと、男の人は受付らしきところへと向かっていった。
私たちを残念そうな顔をしてみていたな……。
「な、何だったんだろう……。」
「何だか怖くない……?」
「俺達、やべぇことしたかな……?」
クラスメイト達も、さっきのことで不安になっているようだ。
「だ、大丈夫だって! あんなの、ただの脅かしだろ!」
悪田君も強がってはいるが、足が震えていた。
「脅かしなもんか。」
「あいつら、終わったな……。」
「可哀そうにねぇ。」
ギルド内では、私たちを憐れむような目で見ていた。
これが、崩壊の一歩だということを、私たちはまだ知らなかった。




