第十七話
人さらい騒動から数日後、城下町は賑わっている。
しかし、お店が少なく感じる。
「うーむ、飲食店が少ないかな?」
「そうですね、今あるのは、蕎麦屋と団子屋だけですからね。」
瑠莉奈の言葉に、俺はどうしようかと考える。
エルバストから引き抜くのも、何だしな……。
「八百屋や魚屋は意外とあるか……。」
「料理人が少ないですね。」
どうしようかと考えていると――
「殿! 門に沢山の人だかりができています!」
桜が大慌てで報告に来た。
「人だかり?」
「はい! どうやら、他国からの移住者かと!」
「わかった、とりあえず、城に招いて。」
俺がそういうと、桜は承知しました! とまた走り出していった。
さてさて、何だか嫌な予感がするな。
「殿! 連れてまいりました!」
.
桜に連れられて、沢山の人が広間に入ってくる。
あれ? あの男の人どこかで見たような……。
「もしかして、大臣さん!?」
「おぉ! もしや、誠殿では!?」
そう、この人は、俺がアリネスを追放される前に、色々と助けてくれた大臣さんだった。
ということは、この人たちはアリネスから来たのか?
「いったいどうしたのさ?」
「実は――」
アリネスから来た大臣『モールス』さんは、アリネスのやり方に意見をしたそうだ。
しかし、その意見は王には響かず、むしろ、反逆者として扱われたそうだ。
モールスさんは、国に反対している人たちを集めて、国を出てきたということらしい。
「まさか、そんなことがあったとは……。」
「お恥ずかしい限りでございます。」
モールスさんは、申し訳なさそうに頭を下げる。
アリネスと聞いて、皆は警戒していたが、話を聞いて落ち着いたようだ。
「本当にあそこは、碌なことしないな。」
「こんなにいい人を追い出すなんて……。」
確かに、俺を助けてくれた人をぞんざいに扱うなんて。
何か、アリネスに怒りを感じるわ……。
「これからどうするの?」
「それは、時に思い浮かばなく……。」
どうやら、国を出たものの行き先がないらしい。
「じゃあさ、この国で暮らさない?」
「え!?」
俺の提案に、モールスさんは驚いていた。
皆も反対していないし、大丈夫だろう。
「しかし……。」
「大丈夫! ちょうど人手が足りないところだったんだ!」
俺の言葉に、アリネスの人たちは困惑している。
それもそうだ、知らない土地で暮らせと言われても無理だろう。
「とりあえず、城下町を散策しようか。」
まずは、ヒビキの国に慣れてもらおう。
「殿、おはようございます。」
「とのさまー、おはよー!」
「おはよー。」
城下町の人々に挨拶をしながら回る。
この光景に、モールスさんたちは驚いているようだ。
「誠殿は王なのですよね?」
「まぁ、殿も王も同じか。」
「ここまで住民に愛されているとは、驚きましたぞ。」
アリネスでは王は、パレードの時にしか街に下りないという。
しかし、金はあるので民も簡単に従っているという。
「本当に嫌な国ですね……。」
「返す言葉もございません……。」
瑠莉奈の言葉に、モールスさんは申し訳ない顔をする。
瑠莉奈はあわあわしながら、フォローを入れる。
やれやれと思いながら、散策を続ける。
「成程、中々良い国ですな。」
「でしょ? ただ問題があって……。」
俺はモールスさんに、飲食店が少ないことを告げる。
「どうにかしないとはいけないんだけどね……。」
「ふむぅ……。」
モールスさんは少し悩んだ後、連れてきた人たちと何かを話している。
話が終わると、俺に近づいてくる。
「誠殿、もしよければ、我々をこの国に置いてはくれませんか?」
「本当!? ありがたい!」
モールスさんの提案に、俺はすぐ食いつく。
こうして、ヒビキの国はますます発展する。
一方のアリネスでは
「ダメス様! モールスと一部の住民が逃げ出しました!!」
「何―!? どういうことだ!?」
兵士の言葉に、ダメスは怒りを隠さない。
「この役立たず! 何故簡単に逃がしたのだ!?」
「いえ、我々も気づかぬうちに……。」
「言い訳など聞いておらぬわ!!」
机を蹴り飛ばし、机の物が散乱する。
「ええい! 何処に行ったのかわからぬのか!?」
「多分、ヒビキの国に行ったのかと……。」
「ならば、ヒビキの国に兵を出せい!!」
アリネスは、ヒビキに向かって兵を出す。
崩壊の音が、一歩ずつ近づいていることに気づかずに……。




