第1章 第9話 『出来損ないの戦い②』
ー《ウオオオオォォォォ!》ー
ダンジョンの1階層、その奥地にそのバケモノはいた。
ヨダレを垂らし、巨大な棍棒振り回すほどの怪力と巨体を持ち合わせ、
洞窟中に響き渡るその咆哮はこちらの戦力を欠いてくる。
そんなバケモノを相手に1人、立ち向かおうとしている青年がいた。
その名はリアム・アルベール。剣聖の家系に生まれながら剣の才能に恵まれず、
不遇な魔法の才能を手にした“出来損ない”。
彼の自分が自分であるための戦いが今、始まろうとしていた。
◇◇◇
リアムは抱えたリットをそっと地面に下ろした。
リットは何も言わないままリアムをじっと見ている。
だが、その顔は混乱と恐怖が入り混じり、足は震えていた。
リアムはそんなリットに自分の『帰還の首飾り』を渡した。
「お前、これ…、何してるんだよ!」
「ああそうだな、何やってんだろな俺は…。でも、これは俺の戦いなんだ」
「お前の…戦い…?」
「言っただろ?俺は醜い奴だけにはなりたくないんだ」
「それが、そんなことが!お前の戦う理由なのかよ!」
「ああそうだ。じゃ、行ってくる!」
「お、おい!」
リアムはその巨大な魔物めがけて走り出す。
何度も攻撃をかわしながら、徐々に距離を詰めていく。
だが、それはリットにとって、
いや、魔術師たちにとって信じられない光景だった。
ー「あいつ、なんで…ーー前線で戦っているんだ?」ー
そう、リットが見た信じられない光景。それは前線で戦うリアムの姿だった。
普通、魔術師は後衛職。前線に出て戦うなど自殺行為だ。
だが、リアムは戦っている。攻撃を交わし、魔法を放ち、戦い続けている。
使う魔法も、特別なものではない。みんなが使うような一般的な魔法。
だからこそ、リアムの異常さに気づいてしまう。
その根本から違う常識に。
では、なぜリアムはそんなことが可能なのか?
それは彼がこれまで受けてきた剣士としての修行にあった。
リアムはこれまで何度も何度も父ロイに扱かれてきた。
そのせいか、いや、“おかげ”というべきか、彼の反射能力は比較的に速いのだ。
そして、前線で戦うことでリットには一切の攻撃が届かない。
まさに、リアムだからこそできる戦い方なのだ。
「す、すげえ…これが…魔術師だと…?」
ー「ライトニングジャベリン!」ー
ー「ライトニングジャベリン!」ー
ー《ギヤャャャャャャ!》ー
「くそっ!攻撃が通らねえ…」
魔物はリアムがどれだけ魔法を打ち込んでも、怯む様子はない。
リアムの魔法では致命傷ほどのダメージを与えることはできないのだ。
「くっ、一体どうしたらっ…ーーえ?」
急にリアムの足が動かなくなったのだ。
つまり、限界である。
ー《ウオオオオォォォォ!》ー
《バコーーーン!》
「グハッ……っ!」
リアムは魔物が振り下ろした棍棒に当たり、壁に激突した。
額からは血が流れ落ち、骨も数本折れている。
「ハア、ハア、グハッ…っ」
声が出ない。身体中が痛くて動けない。
視界に映るのは棍棒を振り上げる魔物の姿だ。
ー《ウオオオオォォォォ!》ー
「リアムーーーっ!」
ー「ライトニングシールド」ー
突如、リアムの前に大きな光の障壁が展開される。
だが、その障壁は格段に精度が高く、リアムのものではない。
ーーカツ、カツ、カツ
誰かが近づいてくる。聞いたことのある声だ。
振り返るとそこには金色の刺繍が施された黒いローブを羽織り、
淡い金色の長い髪を靡かせながら近づいてくる男の影があった。
「ーー君たち、よく粘ったな。後は任せろ」
「レイン…先生…」
魔法学校の光属性の教師、レイン・フィラメントの姿がそこにはあった。




