第1章 第10話 『初めての学友』
ーーガン!ガン!ガン!
魔物が展開された光の障壁に容赦なく棍棒を振るう。
だが、その障壁は壊れるどころかヒビ一つ入らない。
この圧倒的な精度の魔法を展開している男こそレイン・フィラメント。
アシュリー魔法学校の光闇の塔を担当する一人、光属性の教師である。
「リット・バーソン、私が今から中級魔法でこいつを処理する。君は、そこのリアム・アルベールを背負って転送石に触れろ」
「は、はいっ!」
そう言うとレインは魔法を展開する。
ー「サンダーネット」ー
魔物は雷の網に囚われる。
その網は電気を放出し続け、魔物を麻痺させる。
その後、レインは天に手のひらを掲げ、詠唱を始める。
「天よ、空は黒く曇りて雷鳴を呼び、我が前に立ち塞がるものを打ち砕く。光り、鳴り、爆ぜろ、その光は万物を穿つ!…ーーお前たち!耳を塞げーっ!」
その声に反応し、リアムとリットは咄嗟に手で耳を覆う。
黒い雲が魔物の頭上に展開される。
そして、レインは掲げていた手を振り下ろす。
ー「天の雷鳴!」ー
《ピシッ……ドカーーーン!》
ー《ギヤャャャャャャャャ!》ー
黒い雲から放たれた特大の雷は、洞窟内に轟音を響かせ、
魔物の体を、肉を、切り裂き、焼き、破壊する。
あっという間にその巨体は黒焦げになり、地面に崩れ落ちた。
まさに自分たちとは格が違う。圧倒的な強者がそこには立っていた。
リットはリアムを背負い、転送石のある1階層の奥に向かっていた。
背負っているリアムはなんとか意識を保っている。
「……なあ」
「…ん?」
「お前はすげえ魔術師だよ。バカにして悪かった…」
「…そうか、ありがとう」
「……」
「……」
「……なあ」
「…ん?」
「こんな最低な俺だが、その…友達に…なってくれるか?」
「…ああ。よろしくな…リット」
「こちらこそ、助けてくれてありがとう」
二人はそのまま進み続けるのだった。
やがて、転送石が見えてきた。
二人は一緒にその転送石に手を触れる。
すると、白い光が二人を包み込み、その場から消えたのであった。
◇◇◇
ーーコンコンコン
夜、校長室の扉がたたかれた。
「入りなさい」
「…失礼致します」
「合格者の確認かしら、レイン?」
「はい、校長。ですがもう一つご報告が」
「言ってみなさい?」
「今回のダンジョン突破試験で本来5階層にいるはずのオークが確認されました」
「へえ、でも5階層くらいの魔物ならこの二人で十分対処できるはずでは?」
女は二人の受験者の記録用紙を見る。
それはリアムとリットのものだ。
「はい、それが何らかの原因でオークのレベルが20階層の魔物に匹敵するほどになっておりました。もしかすれば…」
「ーー『奴ら』の仕業の可能性があると?」
「はい、おそらくは…」
「はあー、本当に何がしたいんだか。…引き続き調査をお願い」
「分かりました」
〜帝国のとある森〜
「あれ〜、やられちゃったか。今回は失敗かな〜」
木の幹に純白のローブを着た人物が立っている。
顔にはフードがかかっており、口元しか見えない。
「僕らを甘くみない方がいいよ。次は必ず成功させる…」
ふと、突風が吹き、一瞬だが男の片目が映る。
その目は金色に光っていた。
そして、男は一言を残して夜闇に消えていった。
ー「我らに神の祝福があらんことを」ー
これにて、第1章、『追放・入学試験編』は終わりです。




