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剣才無き魔術師   作者: ZIKIRU
第2章 ダンジョン編
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第2章 第10話 『リベンジマッチ②』


恐怖で震える足を力強く地面に押しつける。

自分でもわかるほどに手が震え、押しつぶされそうな不安を感じる。

怖いのか?ああ、怖いさ。今すぐにでも逃げ出したい。

でも、俺は逃げない。逃げる訳にはいかない。


リットは隣に立つリアムを見る。

自分の憧れた男が隣で戦おうとしている。そして、その憧れの隣に自分がいる。

彼と同じ『前線』で、同じ『敵』に向かって二人は立っているのだった。


ー《グオォォォォォォ!》ー


オークのけたたましい咆哮が鳴り響く。

そしてまた、大きく足を開き、鋭い爪をぎらつかせながら構える。

二人は即座に戦闘体勢に入る。


ーー《ダンッ!》


ー「ライトニングシールド!」ー


《ガキンッ!》

鋭い爪が勢いよく光の障壁にぶつかり、火花を散らす。

しかし、何度も降り注ぐその一撃一撃は重く、光の障壁はギシギシと音を立てる。

だがこの時、このオークは気づいていなかった。

その障壁を張る男の背中に潜んでいるもう一人の存在に。


ーーザッ

ー「ファイヤーボール!」ー


ー《ギヤァァァァァァ》ー


オークが炎に包まれ、後ろによろめく。

二人は、その隙を逃さない。即座に次の体勢に入る。

その動きはまるで綿密な打ち合わせをしていたかのように正確だ。

それは、お互いを信頼しているからこそできる動きだ。


「リアム、俺があのオークに特大のを打ち込む。時間を稼げるか?」

「しょうがないな…。任せとけ!」


リアムはオークに向けて手をかざす。そして、魔力を込める。


ー「ライトニングバインド!」ー


手から伸びた数本の光の縄がオークの四肢を縛る。

その隙に、リットがオークに近づく。


リットはリアムのように反射神経が特別良いわけではない。

もし、リアムと完全に同じような戦い方をすると、体がついていかないだろう。

だからこそ、出来ないことは補ってもらうのだ。

何も一人で戦わなくていい。隣で戦ってくれる仲間がいるなら存分に頼るのだ。


オークとリットの距離がみるみる近づいていく。

リットが放とうとしている魔法は近距離型。

魔術師という役職上、滅多に使うことはないが、その分火力が上がる。


ー《グオォォォォォォ!》ー


《パリンッ!》

「くそっ…重い!」


オークの右手の光の縄が破られる。

流石はオークだ。力が半端ではない。


《パリンッ!》

《パリンッ!》


続いて右足、左足と破られ、残りは左手のみだ。


ー《グオォォォォォォ!》ー


オークが左腕を引っ張る。

リアムは残りの魔力をその一本の光の縄に流し込む。


「させないよ!」


ー《グオォォォォォォ!》ー


その時、リットがオークの懐に潜り込む。

右手にはすでに魔力が込められており、あとは放つだけだ。


ーーザシュ

「ーーっ!」


オークは縛られていない方の右手を振るった。

リットの頬に傷が走る。だが、リットは止まらない。

そして、オークに向かって手をかざす。

右手に込められた魔力は高温の熱を放つ。


「ーーこれが俺の特大だ!受け取りな!」


ー「レイジング・ファイヤ!」ー


ー《ギヤァァァァァァ》ー


オークは立ち昇る猛火に包まれ、身悶えする。

だが、火力は落ちることなくオークの肉を焼き、骨まで焼く。

やがて、騒がしかった悲鳴は聞こえなくなり、その場には形も分からなくなった何かが静かに残った。


二人はお互いの顔を見る。ひどい顔だ。

片方の顔には傷が残り、片方の顔は魔力を使い果たし、目元が黒くなっている。


「ーーはは、ひでえ顔だな」

「ふっ…お前が言えることかよ…」


喉から出たのは掠れた笑い声だった。

疲労と、呆れと、達成感が混じったような乾いた笑い声。

二人は同時に地面に仰向けで倒れ込む。体が重くて動かない。


その時、リットが隣で倒れているリアムに向かって拳を向ける。

リアムは最初、何がしたいのか分からなかった。

だが、不思議と自分も拳を差し出していた。二人の拳が合わさる。

その拳の交わし合いは、声も出ない二人が勝利を喜んでいるように見えた。


「……やったな、『相棒』」

「なんだよ、それ……。まあでも、そうだな、――『相棒』」


二人はその言葉を最後に意識が落ちたのであった。

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