第2章 第5話 『ダンジョンへ』
『氷の令嬢』、リアムはなぜかその名に覚えがあった。
何故だろう、彼女とはどこかであったことがあっただろうか?
リアムは頭をフル回転させて思い出そうとした。
「あ!、思い出した!」
「ええ、何を!?」
リットは急に大声を出したリアムに驚いた。
リアムはアリスの方を見て話し出す。
「アリス嬢だよ。俺がまだ5歳くらいだった頃に王城のパーティーで見たことがあったんだ。まあ、直接話したことはないんだけどさ」
「王城のパーティーって…流石は名家だな」
「なんだ、皮肉か?」
「冗談だよ冗談!」
そんな意味もない会話をして二人はまた歩き始めるのだった。
「そういえば疑問なんだが…」
「ん?、何がだ?」
「お前ってあの剣聖の家系なんだよな?よく魔法学校なんかに行かせてくれたな」
「あー、それはだなーー」
(流石に全部は言えないよな…)
そう、あの初代剣聖の一人であるリアナが魔法を使えていたなど口が裂けても言えない。そもそも信じもしないだろう。
「俺には剣の才能が無かったんだよ。それで呆れた親が渋々入学を許可したのさ」
「へー。剣聖の家系も大変なんだな」
「まあ、その代わり俺は家族との縁を完全に切られたが…」
「おい!今、しれっととんでもないこと言ったぞ!」
「ああ、気にしないでくれ。俺ももうあの人たちと絡むことはないからさ」
「……リアム」
その時のリアムはどこか寂しそうな顔をしていた。
まるで、何か大きなものを失った人のように。
「さ、こんな暗い話は終わり!俺行きたい所があるんだ!」
「なんだ?どこに行きたいんだ?」
「冒険の棟、冒険者ギルドに行きたい!」
「え?、あそこは主に冒険者が使用する場所だろう?生徒が使うとしてもダンジョンの実技授業くらいだよ?」
「さっきも言っただろ?俺はもう家族と縁を切ったんだ。だからお金も自分で稼がなくちゃいけないんだ」
「なるほど…。正直あの試験以来行きたくは無かったが、俺も行くよ!」
「なんでだよ、行きたくなかったら来なくていいのに…」
「どうせなら、俺もお前みたいに強くなりたいし!」
「……そうか。よし、じゃあ行こうーー冒険者ギルドへ!」
二人は冒険の棟に走り出したのだった。
◇◇◇
帝国の王都カザリアの路地に純白のローブを着た男がいた。
だが、その男はフードが深く被っており顔は見えない。
そんな男に男二人が近づく。
「おいおい兄ちゃん、そんな綺麗な召し物を着てここを歩くのは危ねえぜ」
「ああ、お気遣いありがとうね〜。でも僕は大丈夫だよ〜」
「何が大丈夫だ。がら空きなんだよっ!」
男の一人が純白のローブの男に襲いかかる。
だが、その時だった。
「だ〜か〜ら〜、大丈夫だって!」
《ザシュッ》
「え…?」
襲いかかった男の首が一瞬にして裂かれた。
もう一方の男は驚いた。そして恐怖した。
何故なら相手が自分たちよりも体が細身で力で勝てないはずがないと思っていたからだ。なのに相手は攻撃を軽々とかわし、殺したのだ。なんの躊躇もなく。
ローブの男は血濡れた短剣をちらつかせながら近づいてくる。
「お、お前!何なんだ!一体何なんだ!」
「何って、襲いかかってきたのはそっちじゃん。だから君も同罪だよ?」
「や、やめてくれ!俺が悪かっーー」
《ーーザシュッ》
男は言い終えるより早く首を裂かれた。
だが、男の純白のローブには汚れ一つついていない。
「さ、そろそろ僕も本格的に動かなくちゃね。我らに神の祝福があらんことを」
男は路地から見える魔法学校を見つめるのだった。




