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予定変更



 なぜここへ至ったのか?


 経緯は、こうである――



     △




「黒薔薇が、帰ってくる?」




 起床後、絢人は玲雄奈からそう告げられた。

 

「急遽、だそうです」

「チッ……相変わらず、気まぐれな女だな」


 絢人は母親の黒薔薇を名前で呼ぶ。

 しかも呼び捨て。

 泉アヤトの家庭では絶対に考えられない親子関係である。


(……というか)


 本人を前に皇泉院黒薔薇を呼び捨てにできる者など、作中に何人いるのだろうか。


「それで……黒薔薇様なのですが、こちらの家へは戻らず――」


 その足で皇泉院が所有する別荘の一つに寄るそうだ。

 一泊するのだとか。

 で、絢人にも来てほしいと言っているらしい。

 玲雄奈が様子をうかがう顔で、


「いかがいたしますか……?」


 絢人と黒薔薇の関係(パワーバランス)なら拒否はできる――はず。

 しかし、あまり黒薔薇をむげに扱うのも問題だろう。

 息子を溺愛してはいる。

 が、ないがしろにしていいわけでもあるまい。

 こちらも息子として適度に〝愛〟を示さねばその恩寵おんちょうも消えかねない。


 ――黒薔薇の溺愛対象という立場。


 これは、維持しておくべきだろう。

 原作で描かれなかったイベントなので不安もなくはないが、


「仕方ねぇな……オレも、今日は大した予定がなかったはずだ。断るまっとうな理由がない以上、変に拒否すりゃあ黒薔薇の機嫌も悪くなる」


 絢人に矛先は向かないかもしれない。

 が、周りの者に当たり散らす可能性はある。


(個人的にそれも、申し訳ないからなぁ……)


「わかった、出向いてやる」

「それと、もう一つ――今回は、虎葉様も行かれます。これは、黒薔薇様の命令のようです」

「……なんだと?」


(黒薔薇さんが、虎ちゃんを……?)


「理由は……言われてねぇんだろ?」

「はい。ちなみに虎葉様は、わたしたちとは別にお一人で行かれることになるようです」


 玲雄奈は、虎葉に対して悪感情はない――ように思える。

 絢人は自分の周りの人間の情報も、例の資料にまとめてもらった。


〝主観が入るかもしれない〟


 玲雄奈はそう言っていた。

 が、虎葉に対して文面からネガティブな感情は読み取れなかった。

 というより――何か思うところ自体、特にないのかもしれない。

 原作では虎葉と言葉を交わすシーン自体、なかったのではないか?

 つまり〝感情設定〟が存在しないため、特に何も思っていない……

 そんな可能性も、ある。


(いや、あくまで可能性の話だけど……でも、もしそうだとすればポジティブな感情の方に導いていきたいよね)


「で――オレたちの移動は?」


 絢人は尋ねる。

 普段どういう手段で行っているのかわからない。


(まあ移動時間を考えれば、普通に新幹線だろうけど――)


「黒薔薇様をあまりお待たせになるとよくありませんので、新幹線となるかと」

「ならチケットはオレの方で手配しておく――三人分な」

「……、――まさか、虎葉様を?」

「ああ、虎葉はオレたちとは別に一人で行くって話になってるらしいがな。別に黒薔薇から、一緒に行くなと念押しされてるわけでもねーんだろ?」

「それは――はい」

「だから、今回は――」


 絢人は迷いなく言う。


「三人で行く」


 玲雄奈の反応はやや遅れた。

 しかし彼はすぐ「かしこまりました」と承知の旨を返したあと、


「ただ、チケットの手配などという些末事さまつじを絢人様にお願いするわけには……主人が執事のチケットを手配するなど。わたしにお任せくださっても、問題ございませんが」

「アホか、テメェは」

「も、申し訳ございません」


 乱暴な言葉遣いを心の中で土下座し、絢人は言った。


「三人まとめてチケットを取る時、テメェが虎葉の分のチケットまで手配したら――テメェが黒薔薇から、無駄に睨まれかねないだろーが」

「あ……」


「が、オレが取れば黒薔薇もそう強く文句は言えねーだろ……玲雄奈の分だけ別に買うなんてめんどくせぇこともなしだ。席はオレがまとめて三人分取って、配置もオレが決める。つーかな……黒薔薇じゃなくても、このオレのやることに文句をつけていいやつなんて本来この世にいねーんだよ。そうだろ?」


「――、……はい」


 玲雄奈は、感じ入った様子で返した。



「おっしゃる通りに、ございます」




 申し訳ございません、推敲が間に合わないので今日は二分割して更新することにしました。このあと21:00頃にもう一話、更新いたします。


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