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迷宮のフィガロ

 その夜、彩は影介のところに警察の状況を知らせる。

「まだどのくらいの被害が生じるか未知だが、大学からの届けなので一通りの捜査はするって。」慎重に捜査していること、コメット珈琲の防犯カメラも見たが怪しい動きの人はいなかった。

影介はテ-ブルの上にパンを並べていた。公園のパン屋で笹塚さんと一緒に買い物して少し食べ、残りを持ち帰って来たのだ。

地産地消を売りにしたいらしくなかなか面白い品揃えだった。

「笹塚さんって結構おっちょこちょいと言うか味噌パンをカレーパンと思って食べたりしてたよ。ところでカバンには他には何が入ってたのかな?」

「手帳、文庫本、部活の資料だって。」

「部活?何の?」

「演劇部だって。定期発表会のチラシが100枚くらい入っていたらしい。」

「演劇ねえ。そのチラシ見られる?」

「今度もらってくるわ。」

台本はオリジナルで「迷宮のフィガロ」って言うらしい。

「フィガロの結婚のもじりみたい。」と彩はそこに食いつき、結構オペラ好きなこともあり、ウンチクをしばらく聞かされてしまった。

影介は店があるので笹塚さんに会うのは明日の店の休憩時間にしてもらい、彩と大学の部活棟に聞きに行くことにした。


演劇部の部活棟の部屋はめちゃくちゃ散らかっていた。資料や舞台道具がわんさとあるのだ。

「笹塚さん、演劇好きなんですか?」早速

彩が聞くと

「うん、特にミュージカルがね。」

「チラシ見たんですが、公演は週末なんですね。

割引券もチラシにある。半額と言うのはすごいですね。」

笹塚さんは苦笑いして

「こういうのは、基本自腹さ。プロじゃないし。

でもノルマがあってとりあえずもらった20枚は配布しないとなんだ。まあ今回は盗まれたことでお役ごめんだけど。」

「配れないとどうなるんですか?」

「基本チラシ買取りなので、通常のチケット代600円を半分割引いた後のチケット代300円かける20枚の6千円が自腹。今回助かったよ。買い取り免除になったんだ。」

「なるほど、じゃあチラシ拾ってもあまりいいことないんですね。」

「まあ割引にはなるけどね。」

影介は何かが引っかかった。

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