昼下がりの窃盗事件の謎!
喫茶シャドウの朝は影丸とのジョギング、店での朝食で始まる。FMを聴きながら新聞を読んでいると彩が入ってくる。
「おはよう、お兄ちゃん。」
「おはよう、彩、今日は早いなあ。まだ開店前だぞ。」
喫茶シャドウは朝8時開店でモ-ニングを出す。最近は犬誘拐事件の長谷川さんも来るようになった。自分の愛犬のお相手探しの豆柴犬誘拐についてはまあ褒められないやり方だったが、犬がおめでたということで、まあこの件はもういいだろう。
しかし長谷川さんは事件解決の影介らのやり方に感銘を受けたらしい。彩は呆れ顔だが、まあ贔屓の客が増えるのは喫茶店営業ではいいことだ。
「おはようございます」と昔からの常連の蘭さんも来る。他にも大学の職員や学生さんが利用することが多い。
「ああ蘭さん、おはようございます。」
「彩ちゃんおはよう。先日は大学研究室の紹介をありがとう。学内でも評判いいよ。」
「こちらこそありがとうございます。いろいろ他にも紹介いただき助かります。」
「紹介?」と影介が聞くと
「そう、大学内の研究で面白いこととかなかなかわからないじゃない。シ-ズを求めているのは研究者だけじゃないのよ。」と彩。
「なるほどね。」
「ただやはり先進的な研究室はなかなか取材引き受けてくれないのよ。そこで私が間に入って大学の事務方に紹介して大学側が横で見ながら取材引き受けたりしているのよ。今日は土壌研究の研究室でね。」と蘭さんは得意気だ。まあ蘭さんは科学を紹介するサイエンスコミュニケータ-という職業を考えたこともあるのでまんざらでもないのだろう。
「ああこの前聞いた園芸学部と何かするやつね。」影介は思い出す。
「初稿を送ったら内容の修正依頼が来てね。今日はその打ち合わせで8時半に理学部棟の広報に行くの。」彩は少し真面目な顔で話す。
「それで今朝は早かったのか。蘭さんも?」影介は珈琲を出しながら尋ねる。
「ええ、研究内容についてなので、私も一緒に聞いて相談に乗ってほしいって。」蘭さんはそう話すと美味しそうに珈琲を口にしながら目を閉じて悦に浸っていた。
二人は早々と食事して大学に向かった。
そして、1時間くらいして二人は戻って来たのだが。
「驚いた。研究室で盗難事件よ。」彩がウンザリしたように言う。
「何が盗まれたんだ?」
「今回の紹介研究の元ネタの資料なの。」蘭さんが話を受ける。
「最初の整理されていないデ-タの図らしいんだけど、今回の、紹介記事と合わせると内容が理解できてしまう恐れがあるのでしばらく今回の記事を出すのは待って欲しいそうよ。」
「大学側も今後の扱いに困っているみたい。」
「どんなものが盗まれたの?」
「暗号みたいな図面。ただ、土壌の採取場所が暗に表されているらしい。」
「どこで盗まれたの?」
「千葉西公園よ。学生が、よく散歩やジョギングもするあそこ。」彩がその方向を指差す。
「大手のカフェショップもできたよね。」
と影介はぼやき気味。
「そのカフェで珈琲テイクアウトしてベンチでぼ-としてたら寝込んでしまって気がついたらリュックが盗まれたらしい。」
「盗まれたのは落書きに近い絵みたいだけど本人は慌てている。場所が分かると土地の価格とか変わったりもするし、企業との共同研究開発にも影響するかも。」
蘭さんが帰ってから、「ねえ、お兄ちゃん、調べてみる気ない?」
「ないない。」と返事するが影介は自分も研究の権利関係でウンザリした経験を思い出していた。
ただ場所が分かると付加価値がそんなにつくものにも興味があったが。
その日の夕方、先日も来た影介の父の会社の人が今回は西さんと名乗って現れた。奥の席を陣取り、影介が水を持って行くと手紙を影介に渡した。「お父様からです。後で読んでください。エビドリアを。」西さんはしばらく読書してから、ふいにスマホを確認すると急いで出て行った。
仕事を終えて部屋で親父からの手紙を開く、
「親愛なるシャドウへ、研究資料盗難の話は聞いたと思う。彩に協力してやって欲しい。雄介」
影介は立ち上がり黒縁の眼鏡をかけると階下の店から彩に電話する。
「シャドウだ。父さんから手紙がきた。協力するから調査を影介に頼め。」




