ちょっと、調子に乗るとこうなるんです……ヘコッ
勢いのまま荒野を駆け、今日落盤事故があった場所に辿り着いた。
はぁはぁと息を吐く私の目の前にあったのは、大きな落盤事故の跡ではなかった。
そこにあったのは、穴を塞ぐために広げられたビニールシートだった。
そっか、そっかそっか。盗まれたんじゃなかったんだ。
私は大きく息を吐いた。
すぐに雨に叩き落とされた吐息は複雑だった。
自分の思い通りになっている安堵と共に、行き場を失ったやる気が戸惑っている。
俄然やる気になっていた(何をするかはノープランだったけど)だけに気持ちが空回る。
どうやら私は無駄足だったようだ。
「……でも、よかった」
ちゃんと現場のことを思ってくれた人がいるんだって知れただけも、ちょっとだけ気持ちが浮上した。
ここの現場の人は体力はすごいが、如何せん、作業のゴールが定められていないだけにやる気はない。
ただ金を稼ぐために土を運んでいるだけって感じで、愛着なんて感じていないように思ってた。
だから私が守らないと、彼らのやる気がもっとなくなっていくんじゃないかと、私はそれが怖かった。
フフッ、誰か分からないけど、ツンデレさんだな。
そんな態度、普段はおくびにも出さないくせに、実はこの仕事が好きなんじゃん。
って、十中八九、仕事にストイックなラズロさんの指示だと思うけど……。
彼の指示なら、素人の私にはこれ以上することはない。
早くベティの待つ部屋に帰ろう。
そう、後ろを振り向こうとした。
その時、ふとビニールシートの間に、隙間を見つけた。
「おやおや、ラズロさん、普段はあんなにも完璧な仕事をするのに、こんなところで抜けてるんだから」
私はちょっと上から見線で、自分よりも遥かに完璧に仕事をこなすラズロさんの仕事にケチを付けてみた。
いや~実に気分がいい。
何もできない私が、彼が気付く前にそのフォローに入れるなんて。
うん、実にちっちゃい自己満だけどさ。
でも私も何かできた気がして嬉しかった訳ですよ。
私はその場にしゃがむと、ビニールシートに手を伸ばした。
穴は、子どものマレーバクが一匹半通れるか否かの大きさだった。
ビニールシートは雨がかなり溜まって、下にたるんでいる。
力強く引っ張れば水溜まりもなくなり、ついでにマレーバクの穴もなくなる裁断だ。
うんうん、我ながら素早い現場判断だ。
なんて自分で自分を褒めてみたり。
それが後の祭りになるなんて…………。
きっとこの時、私はかなり気が緩んでいたんだと思う。
手を伸ばしてビニールシートを引っ張った。
だがビニールシートは思いもしない抵抗を見せた。
それもそのはずで、水の重みを受けているシート自体、けっこう限界なほど伸び切っているのだ。
たかが水。されど水。
私ごときインドア運動音痴チキンキャリアなんかが敵う相手じゃなかった。
全体重を両腕に注いでいた私の足元は実に無防備だった。
ずりゅぅぅぅぅぅぅぅぅぅ。
ん?今、とぉっても嫌な感触を踏みしめましてよ?
恐る恐る安全靴に視線をやった。
ぬかるんだ地面に飲み込まれ、靴の先が見えない。
しかも私がいる辺りの地面が実にゆっくりと沈んでいく。
え、え、えええぇぇえぇぇぇぇえぇぇぇぇぇ!!!!
後はもちろん、ベタで王道で、ダイブ残念な結果しか残らない。
ズリュゥゥゥゥゥゥゥゥウウウウゥゥゥゥゥンンンンンンン!!!!
盛大な音を立て、私は深い穴倉に真っ逆様。
ついでに私が引っ張るのをやめた反動か、ビニールシートの水が空に飛びあがり、全力で私目がけて降ってくる。
「ぬぉ、のののののののぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!!!!!」
なんとも乙女らしかならぬ叫びと共に、私は地底の人になった。




