魔法ってなーに?
今回の登場人物
ミリア:常識人。たぶん。
ココ :無邪気。
魔術師:宿の宿泊客
岩ノ山:フィジカルモンスター
◇
山神村の宿屋『山神の宿』。
夕飯の支度をしようとしたミリアちゃんは、困った顔で小さな筒をカチカチ鳴らしているよ。
火のトーテム(村のライター)の調子が悪いみたい。
そこへ、
ちょうど宿泊手続きに来た旅の魔術師さんが、
そっと釜戸の前に進み出た。
木の杖を構えて、
きりっとした顔で呪文を唱える。
「ファイア!」
ぼうっ、と
釜戸の薪に綺麗な火が灯ったよ。
「わ、助かりました」
ミリアちゃんは魔術師さんにお辞儀。
お礼に夕飯のエールを一杯サービスしたんだ。
大喜びでエールを飲む魔術師さんを見て、
ココちゃんが不思議そうに首をかしげた。
「お姉ちゃん、
魔法のトーテムと、
魔術師さんの魔法って違うの?」
「基本は一緒のエネルギーだよ。
地水火風の力を発現させるんだ」
ミリアちゃんが説明してくれる。
「トーテムは、
地のトーテムから
エネルギーを充填して使うの」
見ると、厨房の棚には
『地のトーテム台』が置いてあるね。
その上で各種トーテムがさながら
充電中の家電のようにずらりと並んでいるよ。
ミリアちゃんが台から一つ、
氷のトーテムを取り出す。
「わ! 冷んやりする!」
ココちゃんが目を丸くした。
「対して、魔術師さんの魔法は、
自分の身体を通して力を発現させるんだよ」
魔術師さんは得意げに頷くと、
杖を振って心地よい風を起こしたり、
足元の石つぶてをふわふわと浮かせて見せた。
「ただし、魔法を使いすぎると、
とってもお腹が空くし、
疲れちゃうから注意だね」
「ココも魔法使いたーい!」
「うん、お勉強と練習を頑張れば、
使えるようになるかもね」
「うへえ、お勉強かあ……」
ココちゃんががっかりしていると、
ドスドスと地響きを立てて、
夕飯を食べに岩ノ山さんが入ってきた。
ココちゃんはきらきらした目で駆け寄る。
「岩ノ山さんも魔法使える?」
「使えるぞ」
岩ノ山さんは胸を張った。
「えっ、本当!?」
驚く魔術師さんの前で、
岩ノ山さんはその辺にあった
漬物石ほどの岩をひょいと拾い上げた。
「ストーン!」
ビュンッ!!!
と空気を引き裂く音を立てて、
漬物石が恐ろしい速度で窓の外へ投擲された。
「なっ……!?」
彼方から巨木が倒れた音がした。
絶句する魔術師さんをよそに、
岩ノ山さんは今度は
太い薪を二本、両手に持った。
そして、フンッ!
と凄まじい背筋力で薪を
超高速でこすり合わせたんだ。
「ファイアー!」
激しい摩擦熱で、
薪から一瞬でごうごうと炎が噴き出したよ。
「ファイアーがプロレスの掛け声にしか
聞こえないんだよなあ……」
ミリアちゃんが遠い目をしている。
「結果は合ってる」
岩ノ山さんは満足そうに頷いた。
今日も山神村は平和です。




