癒しはまだまだ
「そろそろホテルに帰ろっか」
「あれだけ試食して回ればもう夕飯は良いんじゃね?」
「それとこれとは別」
女の胃袋をナメるなよ!
「そうですか……」
荷物を置きに一旦ホテルへ戻り、夕食のお店へ向かう。
「あそこにマックあるぞ」
「またあ、ファストフードにしたらほんとに殴るからね!」
「街中で物騒な事言うな。ちゃんと店は決めてあるから」
「なら宜しい」
駅から徒歩4分で海鮮丼が食べられるというお店に到着した。
注文して約10分。運ばれて来た海鮮丼を見て唾液が分泌する。イクラやホタテの貝柱などが乗っていた。
お昼の鰻屋もそうだったけど、まだ旅行、帰省シーズンじゃないからお店の中は以外と空いている。
「うわあ、美味しそう!」
イクラはプチプチしていて鮪は中トロで軟らかい。15分くらいで完食してしまった。
「女は良く食うなあ」
「自分だって完食してるじゃない」
「オレはデパ地下で試食はあんまりしてないもん」
「甘い物と食事は別腹」
古い事を言っちゃった。でも午後は楽しい時間を過ごさせて貰ったなあ。
相方がお会計をする。今回の小旅行はユースケが誘い予定を立てたので、移動、食事、ホテル代は全て彼が支払う。
新しい財布から出て行く、「栄一」「梅子」「柴三郎」達に心中で「さようなら!」とでも叫んでいるのだろうか? お金が出て行くのは痛いだろうけど、「独り」ではない生活だからこれくらいの出費は仕方がないよ、ユースケ。
「キャッシュレスとかアプリ使ったら? そんなに紙幣持ち歩かなくても済むのに」
「いや、オレは性格上金を見ながらでないとどんどんキャッシュレスで決済しちゃって、後から物憂い気持ちになるから」
何と頑な……。長子は頑固者が多いという。そういう私も長子だけど、やっぱり中山裕介は見た目は若くても中身はお爺ちゃんだ。
「せっかくスマートフォンも変えたばっかりなのに、何か勿体ない。それに、これからは現金は受付けないっていうお店も増えて来るよ」
「嗤うんだったら嗤えば良いさ。現金使えなくなった時に考えれば」
また頑なな。そういや彼は幼児期の頃、よく母方の祖父の家で遊んでたって言ってたっけ。お爺ちゃんぽいのはその影響かもしれない。




