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そのナギジュンの企画案

 この日出演する放送作家は、奈木野、臼杵、川並と他事務所の新人作家を入れた5名。沢矢さんも臼杵の出来、プレゼンの仕方をチェックしようとスタジオに訪れていたが、川並の教育係だった大畑の姿は、なし。自立したら「はい、それまでよ」って事か……。


「さあ、2人共どんな企画を出して来るか」

「私達は見守るだけですね」

 この口振りだと、沢矢さんも事前にチェックはしていないようだ。


「プレ放送作家!」

 安在政高さんのタイトルコールでコーナーは始まった。トップバッターは私からだ。

「新人放送作家がこれから企画をプレゼンします。それを貴方達が見立てて良い企画は実践してみようというコーナーです」

「ありもしない知識を絞ってね」

 多田夕起さんはボケるけど、私達は笑えない。  ペットボトルの水を二口飲む。


「フフンッ」

 智弥ちゃんは笑ってる。あんた幾らボケでも貶されたのによく笑っていられるね? それともぎゃふんと言わせる自信がある訳? まっ、笑ってる余裕があるんだったら、篤と力量を見せて貰いましょう。


「まずは奈木野淳子ちゃんからです」

 呼ばれて立上りカメラの前に立つ。多田さんからマイクを渡された。私の顔と声が初めて電波に乗るのだ。緊張するなって言う方が無理に決まってる。

 それに出演者はレギュラー5人にプラス、ゲストにお笑いコンビとピン芸人が1人の計8人だし。みんな素人の頃からテレビで観て来た人達ばっか。


「内容を聞いてる途中でこれはつまらないと思ったら、そこでボツにしても良いですから」

 何だと!? 安在さん。ボツになんか絶対にさせない!!

「私が考案した企画は『アドレナリンピック』です。皆さんには色んなシチュエーションでロケをして貰い、例えば飛込んだ部屋が女風呂だったとか、半裸の女性に抱き付かれても如何に冷静でいられるか、アドレナリンを出さないでいられるかをチーム、又は個人で競って頂き、冷静でいられたチーム、人が優勝、という内容です」

 

 終わった。足は小刻みに震え口内もパッサパサの状態だったけど、何とかかまずに言説し、「アドレナリンも」少なくて済んだ。後はどういう反応が返って来るか……。

 

「フーー……」ナギジュン、良くやったな。大甘だが安堵の溜息が出てしまう。まるで自分が考案した企画がプレゼンされたような気持ちだ。内容からして深夜向けだし面白いとオレは思うのだが、果たして採用かボツか……。


「面白いと思うよ。只ロケとなると色々準備も掛かるし、アドレナリンもどうやって測るかだよなあ」

 多田さんは若干難色ぎみ。やっぱお金掛け過ぎたか?

「企画会議でもっと煮詰めて貰えれば、実現は出来るんじゃない」

 大政功希さんには好感触のようだ。

「もし実現した時にはオレ達は呼ばれるの」

 コンビのツッコミ担当の人が心配そうな顔をして訊いたけど、

「それは解りませんねえ」

 安在さんはボケで返す。そんなやり取りは良いから早くジャッジしてよ!


「でも一回やってみる価値はありそうだよね」

「ありがとうございます!!」

 飯田孝秋さんに笑みを浮かべて頭を下げる。オクリズには好感触みたい。

「じゃあ採用だね」

「ほんとですか!? ありがとうございます!!」

 安在さんにも頭を下げた。今日の出演者の人達は皆さん良い人ばかりだ。

 

 採用のファンファーレが流れ、私は「フー」と息を吐きながら席に戻る。

「良かったね。採用されて」

 智弥ちゃんの満面の笑み。次はあんたなのに人に声掛けられる程余裕なの?



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