酔っ払いども
木曜日、『ドヤ顔で一言選手権』のロケが品川の居酒屋で行われた。この企画、シミュレーションの時の方が盛上ったのだ。
「居酒屋って設定だから、本当は駄目なんだけどお酒飲んでも良いよ」
大石さんの一言に、
「マジっすか!?」
ナリ君は目を丸くする。
「その方がよりリアルに出来ると思うから」
この後の仕事もあるだろうに、大石さんも呑気なものだ。とはいえ、飲酒のお許しが出たのはナリ君と女性だが男性役として大場、それとディレクターの真鍋君の3名。早速ADがコンビニまでビールなどのアルコールを買いに行く。
そして何故かオレは進行役に抜擢された。
「ユースケ君はいつも落着いてて安定感があるから、進行に向いてるんだよ」
とは大石談。プロデューサーから頼まれたのだから仕方がない。ターゲットになる従業員役には枦山夕貴ディレクターが選ばれた。
会議開始早々に3名はADが買って来たビール、チューハイやつまみなどを飲食し始めた。然程酒に強くない3名は飲み始めてから20分くらいで酔いが回り始め、このタイミングでシミュレーション開始。
「ほら3人共、もう十分酔って来ただろ? 枦山さんにドヤ顔で一言言ってみたら」
「オレから行っても良いっすか?」
「良いよナリ君。別に順番は決まってないから」
「私を彼女だと思って言ってみて」
枦山さんは今の所笑顔だが、3人には酒が入っている為、目は全く期待していない。
「夕貴、重なり合おう」
下種……。
「真顔で言う事かよ!」
「オレ的には純粋に言ったつもりなんっすけど」
枦山さんとナリ君のやり取りに笑ってしまうが、
「面白かったから、今の候補に入れといて」
お貴さんにメモするよう指示した。
「次オレ行くわ」
真鍋君が手を挙げる。またどうせ……。真鍋君はビールを一口飲み、
「夕貴、一緒に死のう」
重っ……。「ハハハハハッ!」笑ってしまう。
「笑顔で言う事かよ!」
「純粋な愛じゃないか!」
「愛なんて感じねえよ!」
枦山、真鍋のツッコミ合いを見ながら、
「今のも面白かったからメモしといて」
「はい」
またお貴さんに指示。
ここまででお貴さん含め会議室内は失笑に包まれている。
「オレもう一回行っても良いっすか」
「どうぞナリ君」
「夕貴、裸体を見せてくれ」
ダイレクト過ぎ……。
「何それ? 真顔で言うの止めて!」
枦山さんも、苦笑するしかないだろう。
「下種な言葉ばっかだけど、今のもメモっといて」
「下ネタばっかり……」
お貴さんも、然り。
「アルコールが入った男の頭はそんなもんだよ」
正直呆れてしまうが事実でもあるから。
「あんた達の口からは下ネタしか出て来ない訳?」
下平も呆れ顔。
「そんなに下ネタが続くんだったら……」
今まで黙っていた大場が手を挙げる。
「夕貴、お前の事は一生忘れないぜ!」
純粋で切ない……。
「やっと奇麗な台詞が出たね。これは採用だ」
お貴さんはまたメモに取る。だがその後は……。
「夕貴、君で毎日オナニーしてるよ」「夕貴、オレは君であんな事もしたしこんな事もしたよ」。真鍋、ナリ君の下種回答は続く。2人共、悪酔いしているからそんな台詞ばっかり。初めは笑ってツッコんでいた枦山さんも、流石に気色ばんで来た。大石さんも呆れ顔。
「3人共、というより2人は悪酔いしちゃってるからこの辺にしとこうか。面白いのはもう解ったし」
大石さんからストップが掛かったが、
「じゃあ最後にナリ君、もし枦山さんが二股掛けちゃったっていう設定で一言ビシッ! と言ってみて」
面白がって彼に振ってみた。
「私二股なんか掛けねえよ!」
「飽迄も設定」
「そうっすねえ……ちょっと夕貴、そんな事して貰っちゃ困るんっすけど!」
「全然ビシッ! と言われた気がしない。二股掛ける女はまたやるね」
「うん。語調にパンチがなかった」
枦山さんとオレの指摘に、
「オレ的にはビシッと言ったつもりなんすけどねえ」
ナリ君は腑に落ちず首を傾げる。
シミュレーションはこんな感じだった。3人が出した回答からピックアップし、ホンにして行く。
この回のホンは書きようがあった。出演者達はホン通りに企画を進めて行ったからだ。かといって特に珍しい事でもないのだが、唯一アドリブがあったのは、オクリズの大政功希の「アヤメ、君の乳首を口の中で転がしたい」という、やっぱり「下種な」発言だけだった。




