ガツガツ行きたいのなら、
翌週月曜の『ーーSTREET』の会議。
「『ドヤ顔』は今週ロケに行くんだけど、来週はどうしようかねえ」
大石さんはホワイトボードを見ながら迷っている。既に幾つかの企画案はディレクター達と勘考して挙がっているのだが……。
「候補には挙がってませんけど、新しい企画を思い付いたんですが」
「何? ユースケ君」
大石さんは期待している表情。
「ご希望に添えるかは解りませんけど、ナギジュンと臼杵さん、それとうちの事務所に川並光哉って新人がいるんですけど、新人作家が出演者に企画をプレゼンするスタジオ企画があっても良いんじゃないかと」
「ちょっとユースケ君、マジで言ってるの!?」
ナギジュンはプロデューサーより前に反応する。
「だってガツガツ行きたいんだろ? 臼杵さんはどう?」
「私はやらせて貰えるんなら幾らでも考えます。テレビに出れば他のディレクターさんやプロデューサーさんにも観て貰えるかもしれないですし」
「ほら、ライバルがそう言ってるんだぞ」
「そうよナギジュンちゃん。先輩がチャンスをくれたんじゃないの」
「確かに他局のプロデューサーとかが観てて「こいつは面白い」って判断したら、仕事のオファーが来るかもしれないね」
大石、下平両プロデューサーからけしかけられたナギジュンは、
「解りました。智弥ちゃんに負けないような企画を考えます」
臼杵さんを一瞥する。
「面白い企画を考えようね」
「解ってるよ! そんな事」
笑顔の臼杵に対し、ナギジュンの表情は無機質。バチバチ火花が飛び交っていた。
「じゃあ決まりね。再来週はその企画で行きましょ。後はどの企画を煮詰めて行こうか?」
「うーん……」
「これからで行くと、そうっすねえ」
大石さんもオレもナリ君も2人に対しては素知らぬ顔。会議は進行されて行く。
その会議が終わり、帰り支度をしていると、
「ねえ、何であんな企画案を出したのよ」
ナギジュンは納得していない。さっきの火花はどうした?
「企画っていうのはちょっとした会話がヒントになって思い付く事もあるんだよ」
「そうそう、会議中の何気ない会話からもね。だから作家やディレクターは常にアンテナを張っておく必要があるの」
オレと大石さんの解説にも、
「そうなんだあ……」
まだ釈然としていない。
「とにかく臼杵さんには負けたくないんだろ?」
「そりゃあの子には負けたくないよ!」
「だったら企画を練りに練る事だな」
「解ったよ。やってみる」
ナギジュンの目に力が籠った。でも、ここまで説得せねば解らんのか……。




