アカデミー 3
感想ください。
誤字脱字、改善点などがあれば教えて下さい。
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同日 二三時〇〇分
洞窟
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初は、開豁地の入口一〇○メート手前でバンを止めるとエンジンを切った。
洞窟の入口まで行かないのは、エンジン音やライトの光などで作戦が露見する恐れがあるからだ。その為、ここから先は徒歩になる。
「行ってくる」
リレアにシーナ、キリエ、エリシーはドアを開けるとバンから降りる。
「索敵魔法には注意してくれ」
「了解」
リレアを先頭にシーナ、キリエ、エリシーの順でフォーマンセルを形成すると洞窟に向け前進を開始する。
開豁地の入口が見えたことに先頭を進んでいたリレアは、拳を頭の高さに掲げると、片膝をつく。
それは停止のハンドサインであり、シーナにキリエ、エリシーも停止すると片膝をついた。
「エリシー」
小さな声で名前を呼んだリレアに、エリシーは隊列から抜けると洞窟の入口が見える位置に移動する。
ぼさの中、小銃を構えたエリシーはスコープを覗くと魔法を発動した。
「〈ライフビジョン〉」
モノクロになった視界に生物だけが白く強調されて映る。
洞窟の奥を覗くとモノクロのままの視界に開豁地、洞窟の中ともに人影はなかった。
『洞窟の中、クリア』
『了解。前進する』
『了解』
エリシーからの無線に、リレアは自身を指さすと右を指さし、シーナとキリエを指さすと左を指さした。次いでぱっぱっ、と手を前に振ると立ち上がった。
手を前に振るのは前進のハンドサインであり、指さしたのは隊形の指示。
立ち上がったキリエとシーナに、前進を開始するとそれまでの一列縦隊から右はリレア、左はシーナが先頭次にキリエの順で二列縦隊を形成する。
エリシーが言った通り開豁地に人影はなく、洞窟の入口まで前進すると、停止し片膝をつくと、リレアとシーナは入口の両端からクロスを組む形で入口を警戒する。
『エリシー、いいよ』
リレアとシーナが入口を警戒していることにエリシーがこれ以上入口を警戒する必要はない。
リレアからの前進の合図の無線に、エリシーはぼさから出るとできるだけ洞窟の入口から見えない場所を通って合流する。
右一、左二の隊形にリレアの後ろに着くと、リレアの肩を叩く。
エリシーからの合流したという合図に、肩を叩かれたリレアはシーナの方を向いた。
クロスでの警戒に、右から警戒をしているリレアは、左方向は見られるが右方向は死角で見えない。
右方向を警戒していたシーナは、リレアの視線に小さく頷いた。
クリア。そう目で伝えてきたシーナに、リレアは鉄格子の前に姿をさらす。
索敵魔法の中には警備結界と呼ばれるものがある。
それはいわば警報装置であり、敵の侵入など、結界で異常を感知するというもの。
警備結界を張るなら洞窟の入口。
アカデミーが警備結界を張っていれば、この瞬間にも侵入は感知される。
鉄格子を施錠している南京錠。
破壊し中に入れば戦闘が始まる。
リレアは、連射に入れた小銃の切換えレバーに、南京錠に手を押しあてると魔法を発動した。
「〈ヒートチャージ〉」
発動した魔法に南京錠が砕け散る。
閂を外し、鉄格子を開くとリレアを先頭にシーナ、キリエ、エリシーの順で中に入る。
入口付近は暗かった洞窟も、奥へ進むにつれて明かりが見えてくる。
所々を木材で補強してある洞窟に、壁面にはケーブルとともに等間隔に電球が配置されていた。
複雑に入り組んだ洞窟内。
リレアにシーナ、キリエ、エリシーは、クリアリングを行うと敵が居ないかを確認しながら進む。その前進する足取りに先ほどまでの隠密性はない。
直線の通路を進んでいると、前方から黒のローブを着た敵が二人歩いてきた。
「コンタクト」
敵を発見したリレアは、自分たちにだけ聞こえる小さな声で告げると、構えていた小銃の照準を敵へ合わせる。
敵の足が止まる。敵もまたこちらを発見していた。しかし、敵にアクションはない。
パパパーン。パパパーン。
既に照準を終えていたリレアが引金を引くと、二人の敵は倒れる。
見えなかったが、倒した二人の敵の後ろにもう一人敵が居た。
二人を倒したことで見えた敵に、目の前で仲間を撃たれた敵は踵を返すと逃げようとする。
パパパーン。
その背中にリレアは照準を合わせると引金を引いた。
「ダウン」
パパーン。パパーン。パパーン。
倒した敵に近づくと頭を撃って死亡確認を行うと、半分ほど撃った弾倉に弾倉交換を行う。
洞窟内の広間。
天井にも照明が設置されているが、全体をカバーし切れてはおらず、所々に薄暗い場所が残っていた。
入口から現在地までの洞窟内の照明はすべて電球だった。
クリアリングを行うと踏み込んだリレアに、電球とは別の、炎のような明かりが目に入る。
「〈ファイアボール〉」
薄暗闇から現れた炎は火球であり、人の頭ほどの大きさをした火球がこちらに向かって飛翔してくる。
命中すれば人体など容易く焼き焦がすような炎。
素早く身を隠したリレアに、火球は壁面に着弾すると炸裂し周囲へ炎を撒き散らす。
閉鎖空間では音は反響し増幅される。
広間には銃声を聞きつけたのか、敵が集まっていた。
今いる通路にファイアボールを撃ち込まれれば逃げ場はない。
パパパパパパパーン。
リレアにシーナ、キリエ、エリシーは弾幕を張り広間に突入すると、障害物を利用し横隊に展開した。
「〈ファイアボール〉」
「〈アクアランス〉」
「〈エアインパクト〉」
「〈ストーンアロー〉」
「〈サンダーボルト〉」
魔法を放ってくる敵に応射する。
その戦闘は、始まりからして何故魔法が現代兵器に負けたのか、それを敵に教えるようなものだった。
音速を超えられず、感覚で狙い、一発放つごとに唱えなければいけない魔法。
対して銃は違う。
銃弾は音速を超え、光学機器や照準器を用いて正確に狙うことができ、装填されている限り引金を引くだけで撃てる。
魔法が放たれれば身を隠す。
敵が感覚で狙うのに対し、こちらは照準器を用いて狙う。
敵が一発ごとなのに対し、こちらは連射で撃つ。
「「「「クリア」」」」
リレアにシーナ、キリエ、エリシーは自身の警戒方向に敵が居ないことを確認すると言った。
「了解。オールクリア。キリエ、シーナ、リロードして」
広間の敵を殲滅したことに弾倉交換を行う。
弾倉交換をするにしても一度に全員がしてしまうと誰も警戒していない間が生まれてしまう。
「被弾していないかも一緒に」
言ったリレアに、シーナが付け加えた。
「「「了解」」」
「リロードよし、被弾なし」
「リロードよし」
「了解。エリシー」
「了解。リロードよし、被弾なし」
「被弾なし」
「「了解」」
シーナとキリエが弾倉交換と被弾確認を行っている間はリレアとエリシーが警戒を行い、リレアとエリシーが弾倉交換と被弾確認を行っている間はシーナとキリエが警戒を行う。
全員が弾倉交換を終えたことを確認したリレアに、全員が被弾していないことを確認したシーナ。
体制が取り直せたことにフォーマンセルを形成すると前進する。
目視での確認が可能な場所につてはクリアリングを行い、目視での確認が困難な場所については式神で偵察を行う。
施錠された扉にリレアは、キリエに見ろ、というハンドサインを送る。
キリエは、左手で左目を覆うと式神を操作する。扉の隙間から式神を侵入させると扉の向こうの様子を確認する。
「牢屋だ」
「敵は?」
「分からない」
「了解」
見えた鉄格子に、扉の向こうは牢屋になっていた。
リレアからの問いに、無理に確認しようとすれば、牢屋に敵が居た場合式神を発見される恐れがある。
「〈ヒートチャージ〉」
扉を施錠する南京錠に、リレアは魔法を発動すると閂を外して中に突入する。
牢屋は、鉄格子と木材で区画分けされていた。
すべての牢屋を確認すると敵が居ないことを確認する。
空の牢屋に一人だけの牢屋もあれば、数人の牢屋もある。以前から人身売買が行われていたのか牢屋には合計で十数人の女性たちが居た。
任務はアカデミーの殲滅であり、敵が居ないことを確認すると牢屋を後にしようとする。
「助けが来た」「助かった」「ここから出して」
銃を持ったリレアやシーナ、キリエの姿に牢屋から助けを求める声が飛び交う。その中で一つ、別の声がった。
「拷問部屋に連れていかれた人を助けてあげて」
「え?」
牢屋の奥。
言ったのは一人だけの牢屋に居た女性。
「さっき連れてこられた人が拷問部屋に連れていかれたの」
「それはどこですか?」
尋ねたシーナに、女性は目に見えて痩せており、着ている服も汚れていた。
「連れてこられたのは一〇人なのだよね?」
「そう。数え間違いはしていない」
尋ねたリレアは、キリエからの返答に人数を数える。
今回連れてこられたのかそれ以前に連れてこられたのかは健康状態や着ている服を見ればなんとなくだがわかる。
健康状態が良く比較的新しい作業服を着ている女性に、健康状態が悪く汚れた作業服を着ている女性。
「一、二、三、……八、九、待って。……八、九、一人いない」
数え間違いがあるかもしれず二度数えたリレアに、今回連れてこられたと思われる女性は九人しかいなかった。
「おそらく敵はそこに集まっていると思う」
「リレア、気を付けて」
場所を聞いたシーナに、キリエが言う。
アカデミーが人身売買を行っていた理由は、おそらくだが高位の攻撃魔法に女性たちの血を用いるため。
一人連れていかれたということはその女性の血を使って攻撃魔法を発動してくる可能性がある。
リレアにシーナ、キリエ、エリシーは警戒を高めると女性が言っていた拷問部屋へと向かう。
施錠はされていないが閉じられた扉。
見ろ、というハンドサインを送ったリレアに、キリエは中の様子を確認する。
「一、二、三、四、……」
居た敵に数を数えていたキリエは、その数に数えるのをやめた。
「一〇人はいる」
「連れてこられた女性は?」
「見えない。それに拷問部屋って感じでもない」
広間での戦闘以降敵を倒しながら進んでいたが、奥に進むにつれ敵に遭遇する頻度は減っていっていた。
扉の向こうにある広間。
遭遇しなくなった敵に、敵は広間に集結すると防衛線を張っていた。
扉を開け中に入った途端、敵は飽和攻撃を仕掛けてくるだろう。
「キルゾーンを作られている。どうするの?」
広間には障害物もなく先ほどのような障害物に隠れての戦闘も難しい。
突破方法を尋ねたキリエに、リレアの中ではもう方法は決まっていた。
「グレネードを使う。シーナ」
敵が伏撃を仕掛けようとしているのであれば逆にこちらから襲撃を掛ける。
準備して、と言ったリレアに、シーナは手榴弾を取り出す。
手榴弾は、レバーが不意に外れないように割りピンによって固定されている。その割りピンが不意に抜けないように黒のビニールテープを巻いていた。
シーナは、ブラックテープを外すと割りピンを抜く。
後は投げるだけになった手榴弾。
リレアは、扉に手を当てると最大出力で魔法を発動した。
「〈ヒートチャージ〉!」
ドーン。
木製の扉がその出力に木端微塵に吹き飛んだ。
敵は、扉が開かれるものだと思っていた。それが吹き飛んだことに、また、爆発の衝撃に動揺する。
間髪を入れず野球ボールほどの大きさの何かが投げ込まれる。
ドカーン。
手榴弾を投げ込んだシーナに、その爆発音を合図にリレアにシーナ、キリエ、エリシーは突入する。
パパパーン。パパパーン。パパパーン。
手榴弾で倒れた大半の敵に、かろうじて立っている敵を小銃で倒す。
パパーン。パパーン。パパーン。
倒した敵の全員の頭を撃ち死亡確認を行う。
広間の奥にはもう一つ扉があった。
見ろ、というハンドサインを送ったリレアに、キリエは、左手で左目を覆うと式神で扉の向こうの様子を確認する。
「あったよ、拷問部屋」
式神からの映像に、壁や床にずらりと並べられた拷問器具の数々。しかし、そこは拷問部屋というよりも祭壇だった。
地球人により電気が伝えられる以前、人々は魔石を利用していた。
通路や広間は電球だったのに対し、その祭壇だけは発光する石により照らされていた。
淡く発光する魔石によって照らされた祭壇。
床には魔法陣が彫られており、その中央には一人の女性が横たわっていた。
赤黒く染まった袖に女性は出血をしているようで、流れ出た血は溝を伝うと床に彫られた魔法陣を完成させていた。
「正面に一人だけ」
血が流れることで完成したサタンマークに、その中央に立つ黒のローブの男。
男とわかったのはその敵だけフードを被っていなかったからだ。
「了解」
施錠されていない扉に、リレアは扉を開けると突入する。
クラウス・フォーゲルは、この瞬間を待っていた。
フォーゲルは、アカデミーの主席魔導士であり、攻め込まれていることに部下に最終防衛線を構築させると起死回生の魔法の準備を行っていた。
突入してきたリレアに、それはフォーゲルにとって飛んで火に入る夏の虫だった。
既に完了していた準備にあとは魔法を発動するだけであり、フォーゲルは突入してきたことに魔法を発動しようとする。
魔法は、音速を超えられず、感覚で狙い、一発放つごとに唱えなければいけない。そんなのは些末な問題だった。大規模な火勢範囲で一撃にして葬り去ればよいのだから。
魔法を発動しようとしたフォーゲルに、しかし、そんな時間は与えられなかった。
魔法を発動するには唱えなければいけないのに対し、銃は引金を引けば瞬間発射される。
「〈アト……」
パパパーン。パパーン。
魔法が唱えられるよりも銃声が轟く方が早かった。
リレアは、フォーゲルを撃つと他に敵が居ないかを確認する。祭壇にはフォーゲル以外の敵はおらず頭を撃つと死亡確認を行う。
「クリア」
「〈リジェネラティブ〉」
シーナは、横たわる女性に駆け寄ると治癒魔法を発動する。しかし、反応はなかった。
両腕の橈骨動脈を縦に一直線に切られていた女性に、首に触れると脈をとる。
治癒魔法であるリジェネラティブは、生きていれば治癒することは出来るが死亡していれば治癒は出来ない。
感じられない脈に女性は死亡していた。
リレアから任務完了を告げる無線が入る。
イアースのトラックには配達先を明記した地図が残されていた。
任務完了とアカデミーの拠点の正確な住所に、初はセシルに電話を掛けると報告する。
住所を伝えると、電話の向こうでメモを取るような音がした。
『分かった。じ後のことはこちらで処理する』
『了解。全員が戻り次第帰隊する』
『了解』
電話を切った初に、リレアにシーナ、キリエ、エリシーが洞窟から戻って来る。
「乗車完了」
初は、全員が乗ったことを確認するとバンを発進させた。
女性たちが救出されたのは、それから数時間後のことだった。




