表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
8/10

アカデミー 2

感想ください。

誤字脱字、改善点などがあれば教えて下さい。

----------------------------------------

同日 二一時五○分

洞窟

----------------------------------------


 市街地を抜けるとやがて郊外の山道へと入る。

 式神の有効操作範囲は約三○○メートル。

 山道は一本道で、夜の時間帯に車通りもない。追跡が露見する恐れがあることに初はアクセルを緩めると式神の有効操作範囲ギリギリで追跡する。


 式神からの音声は右耳で聞いている。

 田舎道に入ってからというものキリエは右手で右耳を覆うとずっと式神からの音を聞いていた。


「どうしたんだ?」


 うつむき黙考するキリエ。

初が尋ねると、キリエはずっと気になっていたことをぽつりと口にする。


「ずっと音がしているんだよ」


 市街地を走行していたときは、トラックの進行方向をはじめ伝えるべきことが多々あった。脳のリソースの多くをそちらに割いていたため気になっても気にしないようにしていたが、一本道の山道では伝えることはほとんどなく、脳のリソースを気になっていることに割くことができた。


「荷物の揺れの音とかじゃないの?」

「止まった時も聞こえていたから違うと思う」


 話しを聞いていたリレアに、キリエはそれをきっぱりと否定した。

荷物の揺れの音であればわかる。それにその程度の音であればキリエは気にしない。

式神をトラックに張り付けた時からエンジン音や走行音などに交じりずっと聞こえていたその音は、赤信号などでトラックが停止した時も聞こえていた。

気にしないようにしても気になってしまう音。あと少しで出てきそうな音の正体に、だが、そのせいで反応が遅れるということはなかった。


「止まった」


 停止した式神の位置情報にキリエがそれを伝えると、初はバンを止めるとライトを消す。

 キリエとしては、エンジンを切ってくれれば分かりやすいのだが、以前聞こえてくるエンジン音にここが目的地なのかは分からない。


「エンジンを切って」


 言ったキリエに、初はエンジンを切る。

 キリエは、静かになったバンに音に集中する。気になっていた音は既に指向の外であり、周囲の音から状況を読み取ろうとする。


 ガチャと、車のドアが開いた音に、バタンと、車のドアが閉められる音。

 キリエは、左手で左目も覆うとトラックに張り付けた式神を操作する。

 式神を操作しトラックの車体の下から周囲の状況を確認すると、見えた二本の足に、イアースはトラックを降りていた。

キリエは、気付かれないように式神を空へと上昇させると、上空から偵察する。


 山の中腹にある開けた場所。ライトを付けたままポツンと停車するトラックに、ライトで照らされた先には洞窟の入り口があった。

 洞窟は小型のトラックが通るには十分な大きさであり、入り口は鉄格子によって塞がれていた。


 そこはトンネルで門を開き通るのかと思ったキリエに、しかし、イアースに門を開ける様子はない。

 トラックの横に立つイアースは腕時計で時間を確認するとポケットからタバコを取り出した。


「〈イグニッション〉」


 イアースは、箱から煙草を取り出すと魔法を唱える。咥えた煙草の先に指先に灯った火を近づけると一服する。

タバコを吸い終える頃、真っ暗な洞窟の奥に小さな光が現れた。

光は徐々に近づいてきており、入り口の所まで来た光に、入口を施錠していた内側から南京錠が開錠された。


洞窟の奥から現れたのは、黒のローブで身を包んだ集団。

 魔法使いのような恰好をした集団は五人おり、全員がフードで顔を隠していた。また、全身を覆うローブに体格から性別や体格などを判断することは難しい。


「ここが取引場所みたい」

「荷物は?」

「待って」


 キリエは、その光景にそのことを初に報告する。

 偵察を続けると、現れた受け取り相手にイアースはトラックの荷台へと歩くと荷台を開けた。


「降りて来い」


 キリエは、音の正体について考えていた。あと少しで出てきそうだった音の正体に答えは向こうからやって来た。

 震える足取りで降りて来た一人目に二人、三人と続いて降りて来る。

全員が降りたことを確認すると荷台を閉めたイアースに、荷物は人間だった。

降りてきたのは全員が女性でその人数は一〇人。年齢は皆若く十代半ば最高でも二○代前半。全員がサニーカーゴの作業服を着ており、手には手錠を掛けられていた。


「人身売買みたい」


積まれていた若い女性達に、式神から聞こえていたのは女性たちの恐怖の声だった。


「状況を説明してくれ」


 言ったキリエに、初は尋ねる。想像していた武器の輸送ではなかったが、事態はそれ以上に厄介な様相へと変化していた。

 状況を説明するキリエに、聞き終えると初は報告のためセシルに電話を掛ける。


『ターゲットが取引場所に到着した』

『そうか。で、荷物は何だった?』

『若い女性だ』

『若い女性?』

『ああ、おそらく人身売買だ』


 セシルは、群長室で電話をスピーカーにして聞いていた。それは隣に居るシェリーにも作戦について聞かせるためだ。


『相手は?』

『五人。全員が魔法使いのような黒のローブで身を隠している』


 セシルに尋ねられた内容に、初はキリエから聞いた内容を答える。

スピーカーで聞いていたシェリーにはその魔法使いのような黒のローブ、という説明に心当たりがあった。


「その集団はアカデミーではないでしょうか?」

「テロリストのか?」

「はい」


 アカデミーとは、帝国に存在する魔法復興を目指すテロ組織。

 アカデミーは、元は帝国の魔法研究開発機関。

 魔法には種類が存在する。

昔の世界、戦場の主役は攻撃魔法だった。だが、現代兵器の登場により戦場の主役は現代兵器になった。

 アカデミーの目的は戦場の主役を現代兵器から攻撃魔法に戻すこと。

目的の実現には威力を知らしめる必要があり、アカデミーはプレゼンテーションを行っている。

それは、市民に対して攻撃魔法を放つという形で。

放たれた攻撃魔法の中には、最大のものでは五○○ポンド(約二二七キログラム)爆弾程の威力があったことが確認されている。

市民に対し攻撃魔法を放ち、五○○ポンド爆弾程の威力がある攻撃魔法を開発したアカデミーは現在ではテロ組織に指定されている。


「根拠はあるのか?」

「その集団が姿を隠すのに用いていた黒のローブです」


 火をつけた煙草に煙を吐くと尋ねたセシルに、シェリーは答える。

 黒のローブは魔法使いの象徴であり、姿を隠すのにも用いられていた。時は流れ、今では姿を隠すのにその様な格好は用いられない。現代の服装からすればそのような格好は珍しさから逆に目立ってしまうからだ。

にも、拘わらずその様な格好をするのには明確な意図が存在する。


 例えば、アピールのため。

 五○○ポンド爆弾程の爆発があった際、その時間の前後で黒のローブの集団が目撃されていた。


「なるほど」

「で、どうしますか?」

「どうするもこうするも、それはそっち次第だ」


 セシルは、軍ではなく特務機関の要請で部隊を出している。

古来より血は魔法に用いられてきた。なかでも女性の血は高位の魔法に用いられてきた。

もし集団がアカデミーだった場合女性達を買った理由は明白であり、用途も推測も立つ。


「だが、確保は今でもできるし、住所については、仕事は増えるがそっちで聞き出せばいい」


 本来の作戦ではイアースが帰宅した所を確保するつもりだった。が、帰宅した所を確保しようが、今確保しようが確保することに違いはない。

帰宅した所を確保するのはイアースの住所がわからなかったからだ。しかし、それも尋問で聞き出せばいい。


「アカデミーの殲滅は可能ですか?」

「相手は魔法使いだろ。いけるだろう」


 特務機関としても帝国に仇なすテロ組織は潰しておきたい。

 尋ねたシェリーに、セシルは答える。

 相手は魔法使いであり銃で武装しているこちらが負けるとは思えない。

シェリーは、残業が続くことにため息を吐くとセシルに要請する。


「イアースを確保した後、アカデミーを殲滅してください」

「分かった」


 決まった方針にセシルは電話の方を向くとその内容を初に伝える。


『初、傍受していたか?』

『聞こえていた』

『作戦変更だ。その黒のローブの集団はテロ組織アカデミーと思われる。ターゲットを確保の後、アカデミーを殲滅しろ』

『女性たちの救出は?』

『可能なら行え。だが、第一目標はアカデミーの殲滅だ』

『了解』


 初は、切れた電話に作戦の変更を伝える。


「ターゲットがトラックに乗った」


 洞窟へと連れて行かれる女性たちに、イアースは黒のローブの集団から代金を受け取るとトラックに乗り込む。

 Uターンすると山道を降りてくるトラック。


「以上が作戦だ。質問はあるか?」

「「「なし」」」

「よし。全員位置につけ」

「「「了解」」」


戦闘指導を行った初に、リレアにエリシー、キリエ、シーナはバンを降りると山道のぼさの中に潜む。

 初は、バンのエンジンを掛かるとギアをリバースに入れる。

 バンをバックさせると位置に着いた初に、無線からリレアにエリシー、キリエ、シーナから位置に着いたという報告が入る。

 キリエは、式神で上空からの偵察を続けていた。

 夜の暗闇の中では車のライトは目立つ。

 山道を下って来るイアースのトラックに、下方で待機するバン。


「もうすぐターゲットが確保位置に入る」

「了解」


 バンを発進させた初に、下ってきたイアースのトラックと接触する。

バンを止めた初に、イアースもトラックを止める。山道は一本道で、狭い道の鉢合わせにどちらかが道を譲らなければいけない状況。


「こっちが下がる」


道路交通法では、山道でのすれ違いは登りが優先となっている。

 だが、窓を開けるとそう伝えた初はバンのギアをリバースに入れるとバックのため後ろを振り返る。


その時だ。コンコン、とイアースの乗るトラックの助手席側の窓がノックされた。

音のした方に振り向いたイアースに、そこには小銃を構えたシーナが居た。


「お話いいですか?」


 窓をノックすると尋ねたシーナ。

鉢合わせした際、初が下がる、と言ったのはイアースにトラックを動かさせないためであり、シーナがノックをしたのはイアースの注意を助手席側に引き付けるため。


「ッ!」


伏撃だと気づいたイアースに、その時にはもう遅かった。

運転席のドアが勢いよく開かれる。

ドアを開けたリレアは、拳をイアースの顎へ叩き込む、次いで後頭部を掴んで頭部をハンドルに叩きつけた。

昏倒したイアースに、襟首を掴みトラックから引きずり降ろすとそのまま手錠を掛けて拘束する。


「確保!」


 武器を持っていないか身体検索をするとイアースは銃を持っていた。

シリアルナンバーのない拳銃にその銃はゴーストガンだった。

身体検索を終え立ち上がったリレアに、エリシーとキリエがぼさの中から車道へと出てくる。

エリシーはトラックの運転席が狙える位置、キリエはトラックの後方に潜んでいた。


 麻袋をかぶせるとイアースをバンに積み込む。

 イアースを確保したことに初はセシルに電話を掛ける。


『こちら初、ターゲットを確保した。これからアカデミーの殲滅に向かう』

『了解。アカデミーだが、洞窟内に警備結界を張っている可能性もある。索敵魔法にも注意してくれ』

『了解』


 初は、報告を終えると電話を切る。

一本道に、トラックが道を塞いだままではバンを発進させることができない。

トラックの運転席に座るとバックするリレアに、エリシーがそれを誘導する。

バンが通れるだけの道幅が開いたことに、初は全員が乗車したことを確認するとバンを発進させた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ