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アカデミー 1

感想ください。

誤字脱字、改善点などがあれば教えて下さい。

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H.W.一一八年 五月二二日 ○八時五〇分

ヴィークネーク駐屯地 即応作戦群群長室

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 即応作戦群庁舎。

 その一室、即応作戦群群長室。

群長の椅子に座っているのは一人の女性。

軍規で髪の長さは決まっている。だからと言って髪を切らなくてはいけないわけではない。

髪が肩にかからないように束ねた長い金髪に、座っているのは即応作戦群群長セシル・ローウェル。


 今朝急遽入った面会にセシルは、煙草を吸うと来客が来るのを待っていた。

コンコンコン、と扉がノックされる。


「失礼します」


 扉が開き、一人の女性が入室する。

 パンツスーツ姿の女性はエルフで、短く切った黒髪に右目を前髪で隠している。

 女性は、扉を閉めるとそのまま応接用のソファに腰を下ろした。

 ソファに座ったのはシェリー・パーク。

その疲労の残る顔を見てセシルは口を開く。


「だいぶ疲れているようだな」

「これもザックのせいです」


 わずかに間を置いてセシルは立ち上がると備え付けのポットへと向かう。


「コーヒーでいいか?」

「いただきます」


 二人分のコーヒーを注ぐとシェリーの向かいに腰を下ろす。


「そんなになのか?」

「はい」


 シェリーは、コーヒーを一口飲むと答えた。

秘密情報はその秘密のレベルに応じて秘や極秘、機密と区分分けされている。

スパイ行為の疑いがある者は特務機関の監視対象となる。

ザックは、様々な極秘や機密といった情報を連邦に流していた。しかし、それは確保した後の尋問や家宅捜索の結果初めて明るみになった事で、それまでは監視対象ではなかった。

監視対象にならなかったのはそのやり方が巧妙だったからだ。

証拠や痕跡を残さないように入手していた秘密情報に、しかし、露見した今回の事態に、その理由は入手しようとした秘密にある。

 特定秘密。それは、秘密区分の中で最上位の秘密であり他の秘密よりも遥かに厳重に管理されている。そして、中にはアクセスを試みた時点で監視対象になるもある。

ザックはその秘密を入手しようとして監視対象になった。


「特定秘密様々だったという訳か」

「はい。止められたという点では。ですがそのおかげで残業の毎日です」


戦闘服姿のセシルとは異なり、スーツ姿のシェリーは特務機関で働いている。

 いきなり特定秘密に手を出すとは考えづらい。あると思われた余罪に、調べれば調べる程出て来る、流していた秘密の量に、どれほどの秘密が漏れたのか、それがいつなのかなどシェリーは多忙な業務を強いられていた。


「それで今回は何の用件で来たんだ?」


 前回のザックとスパイを確保する任務を持ってきたのはシェリーだった。

そして、ザックを使い特定機密を入手しようとしていたのは連邦の諜報機関。


「分かってはいましたが、ザックと共に捕まえたスパイ、コードネームはルータ、本名ニコラス・ハーゲンはNCIAでした」


NCIAとは、連邦の諜報機関、ニューシエン連邦中央情報局、New Shien Central Intelligence Agencyの略称。


「ニコラス達が銃で武装していたことは知っていますよね?」

「報告は受けている」

「ニコラス達が所持していた銃はゴーストガンでした」


帝国では民間人の銃器の所持は法律で認められている。一般に販売されている銃には全てシリアルナンバーが刻まれている。

 シリアルナンバーがあれば所有者を始め製造場所や年月日、販売者など全てを追跡することが出来る。

ゴーストガンとは、シリアルナンバーのない銃のことで、出所や販売者を追跡できないことからそれを幽霊になぞらえてそう呼ばれている。

ニコラス達から押収した銃にはシリアルナンバーがなかった。

ゴーストガンを使用したニコラス達。

一般に販売されている銃の購入には身元調査がある。ゴーストガンは一般に販売されている銃に比べ入手しやすい。とはいえ銃は銃だ。入手のハードルは依然として高い。


「これは?」

「銃の出どころとそれをニコラス達に渡した人物です」


 応接机に一つのファイルが置かれる。

 セシルは、ファイルを手に取るとざっと中を見た。中には一枚の男の顔写真に、男に関する情報をまとめた書類が挟まれていた。


「男のコードネームはイアース、NCIA職員でニコラス達にゴーストガンを渡した人物です」

「確証は?」

「私が尋問して聞き出しました」

「なら得られているか」


 最初は何も喋らなかったニコラスだが、シェリーの尋問の結果今では聞けばなんでも教えてくれるようになっていた。


「こいつを捕まえてくればいいのか?」

「はい。今週一週間の行動記録もファイルに挟んでいます」


 顔写真を始めそれらは特務機関が張り込みを行った結果得たもの。

 セシルは、ファイルに挟まれたイアースの行動を見る。

 イアースが勤めているのは帝国の運送会社サニーカーゴ。その営業所。どこか怪しげな場所に入り浸っているのであれば納得がいくが、定時出勤定時退社を繰り返す男に目立った点はない。


「だがどうしてこの男はゴーストガンを入手することが出来たんだ?」

「男が勤めているサニーカーゴは犯罪組織Kn00(ケーエヌハンドレッド)のフロント企業です」


 疑問を口にしたセシルに、シェリーは当たり前のことを言うように答えた。

 Kn00とは帝国では有名な犯罪組織で、殺人をはじめゴーストガンや違法薬物の製造販売など何でも行っている。

サニーカーゴは、表向きは一般的な運送会社だが、実情はゴーストガンや違法薬物などそれら違法な品を一度に大量に、何より誰にも疑われることなく輸送することを目的として設立されたフロント企業だ。


Kn00は、別のフロント企業の工場で造った銃を、運送用のフロント企業であるサニーカーゴを使って運んでいた。

NCIAはそこに目を付けた。Kn00を利用すれば銃の入手から搬送までを容易に行うことが出来る。

NCIAは、Kn00に局員を入れると、そこから帝国に居る別のNCIA局員に銃を渡していた。


 イアースは運び屋としての役目を負っており、Kn00が作ったゴーストガンニコラス達に運んでいた。

ニコラス達だけにゴーストガンを運んでいたとは考えづらい。別のNCIA局員にも銃を運んでいる可能性は高く、イアースを捉えることが出来ればそれを足掛かりに国内に潜んでいるNCIAの連中を捕まえることが出来る。


「ではお願いします」


 シェリーは、コーヒーを飲み干すと群長室を後にすると、仕事に戻る。

 セシルは、執務机に戻ると卓上の電話を手に取ると電話を掛けた。


「初、任務だ。部屋に来てくれ」


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同日 二〇時一○分

サニーカーゴ営業所

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作戦はターゲットを追跡し帰宅した所を確保する。

 ブリーフィングを行うと「別れ」、と言った初に、リレアにシーナ、キリエ、エリシーは作戦に必要な物の準備に掛かる。

 別れとは、解散を意味する号令だ。


 銃に弾、装具に無線機。準備を終わらせると車両に乗り込むとターゲットが勤めるサニーカーゴの営業所へと向かう。

 サニーカーゴの営業所、そこから少し離れた路上に初は車を止めた。

 サニーカーゴの配達終了時刻が過ぎ一台、また一台と仕事を終えた商用車が営業所へと帰って来る。

 商用車が帰って来るたびエリシーは後部座席から単眼鏡を覗くと、乗っているのがイアースかどうかを確認していた。


 確認したエリシーが単眼鏡を下す。

 エリシーに視線をやった初に、エリシーは顔を横に振ると答える。


「はずれ」


 資料にあった行動記録。キリエがバンに付いているデジタル時計に目をやると、時間はイアースが配達を終え帰って来る頃を示していた。


「記録だとそろそろ帰って来る頃だよ」


 言ったキリエに、少しして配達を終えた商用車が一台営業所に帰って来る。

 単眼鏡を覗くと、エリシーは覗いたまま答えた。


「ターゲットが帰って来た」


 車を運転していたのは写真の男。

 イアースが営業所に入って行く。

 行動記録によると今から退社するまでは三○分以上ある。

 あとは追跡し帰宅した所を確保するだけ。前回と似たような任務に、しかし、異変は直ぐに現れた。


 営業所の一台の車が出発しようとしていた。

それは、サニーカーゴのラッピングが施された小型トラックの商用車。

 単眼鏡を覗いたエリシーに、トラックの運転席に座っていたのはイアースだった。


「あのトラック、ターゲットが運転している」


 イアースが営業所に帰ってからまだ時間は一〇分も経っておらず、また、行動記録から自家用車で帰宅していることが判明している。

ブリーフィングで行った作戦背景の説明に初を始めリレアにシーナ、キリエ、エリシー全員が嫌な予想をする。


「追跡する。キリエは式神の準備。他はセシルに電話を掛けてくれ」


 初は、バンのエンジンを掛けるとトラックを追跡する。

 グローブボックスにある携帯にキリエは携帯を後ろに渡すと、式神とナイフを取り出した。


「繋がった」


 エリシーから携帯が渡される。

 初動が早かったおかげかイアースのトラックには直ぐに追いつくことができていた。

「もしもし」、と言う声に、それは前回の任務で任務完了の報告をした際携帯から聞こえてきた声だった。

電話が繋がっていることに初はセシルに状況を説明すると、現在追跡中であること、そしてじ後の指示を仰ぐ。


『ターゲットが銃を輸送している可能性があります』


 電話の向こうで皆の予感を代弁する声が聞かれた。

セシルではないその声に初は聞き覚えがあった。


『シェリーもいるのか?』

『ああ』


 セシルは、シェリーの方を見やると答えた。


『それでどうすればいい?』

『少し待て』


電話の向こうで少しやり取りがなされる。


『初』


 意識を追跡に向けていた初は呼ばれたことに電話に意識を戻す。


『追跡は続行。だが、それがゴーストガンの受け渡しだったとしてイアースがkn00としての仕事をしている可能性もある。その為相手の確保は待て。だがもし相手がNCIAだった場合相手も確保してくれ。それと新たに何か分かれば直ぐに連絡してくれ』

『了解』


 作戦の継続が伝えられる。

 携帯を適当な場所に戻そうとした初に、横から手が延ばされる。


「リーダー、準備完了。いつでも使えるよ」


 手を伸ばしたのはキリエであり、終えた動作確認に式神はいつでも使えるようになっていた。

キリエは、携帯を受け取るとグローブボックスに戻す。

赤信号で停車したトラックに、式神をトラックの車底に張り付けると、青信号に変わり動き出したトラックに、追跡できていることを確認する。


「いいよ」


可能となった位置情報による追跡に、これ以上イアースの視界にとどまる必要はない。

初は、その報告に距離を取ると、イアースの視界からフェードアウトする。

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