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即応作戦群 3

感想ください。

誤字脱字、改善点などがあれば教えて下さい。

「待ってね」


 外に光が漏れないよう遮光されていた倉庫。

 接近すると片膝をついたキリエに、リレアとシーナも停止すると片膝をついた。

 キリエは、倉庫内の偵察に並行してブレーカーを探していた。

片膝をつくと、左手で左目を覆うと、式神を操作してブレーカーの元まで移動させる。


「いいよ」


 リレアにキリエ、シーナは小銃を手にしていた。

 掛けていた安全装置に、切替えレバーを操作すると連射に入れる。

立ち上がると、銃から左手を放すと放した手を倉庫の壁に着いたリレアに、シーナは銃から手を離すと閃光手榴弾を用意する。


「スリーカウントでいく。キリエ、カウントお願い」


 言ったリレアに、キリエがカウントを行うのはその方が、タイミングがとりやすいからだ。

キリエが式神をブレーカーの位置にやったのは、式神を操作することでブレーカーを操作するため。


「スリー、ツー、ワン、ゼロ!」


 急降下した式神に、ブレーカーのレバーが下げられる。

 ブレーカーが落ち一瞬にして何も見えなくなった倉庫内。

リレアは、壁に着いた手に意識を集中させると魔法を発動した。


「〈ヒートチャージ〉」


ドーン。


 発動した魔法に壁が爆破される。

 リレアが発動したのは爆破魔法。それは別名ブリーチング魔法とも呼ばれている魔法。

 壁を爆破するとすぐさま横に避ける。

 閃光手榴弾のピンを抜いていたシーナは、避けたリレアにそれを穴に向かって投げ込んだ。


バキーン。


 壁が破壊され破片が飛散した倉庫内、そこに爆音と共にけたたましい閃光が炸裂した。

 ピカッと光った倉庫内。

リレアにシーナ、キリエは閃光手榴弾の爆破音を合図に中に突入する。


パパパーン。

パパパーン。


 スパイは、閃光手榴弾の直撃を受けていた。

 視界を奪われ何も見えなくなっていたところに、最初に突入したリレアが一人のスパイを撃つと次に突入したシーナがもう一人のスパイを撃つ。

倒した両端のスパイに、中央のルータを確保しようとする。


だが、向けた銃口に、ルータは駆け出しておりこの場から逃走しようとしていた。


「待て!」


パパパーン。パパパーン。パパパーン。


 とっさに撃ったリレアに、しかし、弾はルータには当たらなかった。

すぐさま追いかけると逃げた方向に銃を構える。だが、開け放たれた扉に、そこにルータの姿はなかった。


「逃げられた!」

『こちらリレア、スパイを一人逃した』


 無線で報告すると返事は直ぐにあった。


「うっ、う、〈リ、ジェ、……」


倉庫内で苦痛にうめく声がした。

声のした方向に視線を向けると、倒したはずの敵がまだ生きていた。

敵は瀕死の重傷を負いながらも銃に手を伸ばすと魔法を唱えようとする。リレアはそんな敵の頭部に銃口を向けると引金を引いた。


パパーン。


 一発のつもりが連射に入っていた銃に、引金を引くと二発弾が放たれる。

 頭を撃たれ完全に動かなくなったスパイ。


パパーン。


 シーナがもう一人のスパイを死亡確認で撃つ。

 地面に倒れている二人のスパイに地面にはもう一人うずくまっていた。

 リレアは、うずくまっている一人に銃を向ける。


「頼む、撃たないでくれ!」


 それまでうずくまっていたザックは銃を向けられたことでとたんに反応した。

やめてくれとばかりに突き出された手。瞬間リレアは臨戦態勢に入った。それまでは向けているだけだった銃を構えるとザックの頭部に照準を合わせる。


「手を下せ!」


 魔法が存在するこの世界。手を突き出すという行為は銃を構えたのも同然だ。


「分かった。だから撃たないでくれ」


 それに気が付いたのかザックは慌てて手を下げた。


「うつ伏せになって両手は頭の後ろ」

「分かった」


 ザックがうつ伏せになると両手を頭の後ろで組む。


「シーナ」


 確保することに、リレアはシーナに警戒を頼む。

銃を構えると少しでも妙な動きをすれば撃つといわんばかりに注視するシーナに、リレアは銃から手を離すと手錠を取り出した。

それはアンチマジックカフと呼ばれる手錠で、掛けることで魔法を発動できなくするというもの。


 後頭部で組ませた手に、手錠で後ろ手に拘束する。

 ザックからの抵抗はなかった。

手錠がしっかりと掛かっていることを確認し、また、二人のスパイの死亡確認も行ったことに無線を入れる。


『こちらリレア、ルームクリア。ザックは確保。エリシー、そっちの状況はどう?』


 あれから何もなかった無線に、尋ねるとまたしても返事は直ぐにあった。


『逃げたスパイは止めた』

『了解。今から確保に向かうね』

『了解。確保の時気を付けてね』

『了解』


 エリシーは、警戒を継続していた。

始まった戦闘に、リレアから無線が送られて来る。


『こちらリレア、スパイを一人逃した』


 無線の内容に、スコープ越しの警戒から一転銃から顔を上げると索敵する。

 モノクロに映った視界にルータを捉えるのは一瞬だった。


「見つけた」

『発見した。撃って止める』


リレアからの無線に、エリシーはそう返すと直ぐに顔を銃に戻すとスコープを覗き込む。

 ルータは、銃を持っており何度も後ろを振り返りながら逃げていた。

 足を狙おうにも走っている人間の足に当てるというのは難しい。かといって、胸部などを撃っては殺してしまう。

狙うのは足の少し上。照準を合わせると、ルータが走る速度に合わせて銃を動かす。そうしてタイミングを合わせると、合ったタイミングに引金を落とした。


パシューン。


「ヒット」


 スコープにルータが倒れるのが映る。

撃ったエリシーに、弾はルータの下腹部に命中していた。


 電気が消えた瞬間、ルータの行動は早かった。

 このような状況を想定し予め逃走経路を用意していた。

電気が消えた瞬間、その兆候に踵を返すと、次の瞬間には走り始めていた。閃光手榴弾を受けたことで視界が歪んだが、それでも逃げることが出来たのは準備のおかげだ。

 脱出することの出来た倉庫に、だが、逃走は直ぐに終わりを迎えた。

走っていた体をずしんと重い衝撃が突き抜けた。瞬間硬直した体に踏み出した足は地面を捉えることはなく、体が地面に落下する。


 倒れたルータに、だが、まだ生きていた。

 ルータは、銃を持っていた。右手に意識を向けるが無いそれに次いで辺りを見回した。前方に転がっていたそれを発見すると掴もうと手を伸ばす。

銃は撃たれた衝撃に、手から離れると前方に投げ出されていた。


 聞こえなかった銃声に、相手は狙撃手であり、撃たれた状況。相手はこちらを捉えているのに対し、こちらは相手がどの方角から撃って来たのかさえ分からない。また、短機関銃と狙撃銃では精度、射程距離ともに相手の方が有利だ。こんな状況では、銃を手に出来たところで相手に一矢報いることは出来ない。


それでも銃を掴もうとするのはそう教わったからだ。

飛んでこない二発目。

もし相手に殺すつもりがあれば頭を撃つなり、胴体に二、三発叩き込むなりをしてとどめを刺してくる。だが、飛んでこない二発目にそれは相手に殺す意思がないということ。

動かない下半身に、手で地面を掴むと銃の元へと体を引き寄せる。

あと一メートル。もう少しで届きそうな銃に手を伸ばすと掴もうとしたその時だ。


パシューン。


眼前で掴もうとしていた銃が破壊された。


「捕まるぐらいなら死ぬってことね」


 監視していたエリシーは、手を伸ばすと地面を這いだしたルータに、その伸ばした手の先に銃があるのを発見すると、銃を撃った。

基部に命中した弾に、銃は部品や弾倉内の弾がはじけ飛び完全に撃てない状態になっていた。


 ルータが銃を掴もうとしていたのは自決の為。確保を目的としている敵に、銃を掴むとそれで自身の頭を撃ちぬこうとしていた。

エリシーが銃を撃つと、破壊された銃にルータの動きがまるで希望を失ったかのように止まる。


『こちらリレア、ルームクリア。ザックは確保。エリシー、そっちの状況はどう?』


 リレアから無線が入る。エリシーはスコープの先、動かなくなったルータを監視しながら報告する。


『逃げたスパイは止めた』


 リレアは、小銃の弾倉交換を行うと逃げたスパイの確保に向かう。


「キリエはザックの監視を、シーナは私と一緒に来て」

「「了解」」


 リレアとシーナは倉庫を出ると、エリシーに誘導してもらいルータの元まで向かう。

 気を付けてね、と言いエリシーに、到着するとリレアは何故エリシーがそう言ったのかを理解した。


 倒れたルータにその眼前にある破壊された銃。

 失敗した自決に、だが、自決する方法はなにも自分の手でだけとは限らない。抵抗して相手に殺してもらえば良いのだ。

 襲い掛かられても距離があれば素手での制圧も可能だが、距離がなければ銃に頼らざるを得ない。

 まるでタイミングを伺っているような嫌なものを感じたリレアは、その感覚に隣に居るシーナに、他には聞こえないような声で尋ねる。


「ねぇシーナ、この敵の足撃ってもいい?」


 尋ねられたシーナはざっとルータの容態を観察した。


「いいけど拳銃で、あと大腿部を撃つのはやめてね、死ぬかもしれないから」

「了解」


 リレアは、シーナからの返答に小銃から拳銃に持ち替えると近づく。

 今だ、と立ち上がろうとしたルータに、リレアはその下腿部に拳銃を指向すると引金を引いた。


パン。


 銃声が夜の工業団地に響いた。

 倒れたルータに、リレアは手錠でルータを拘束する。


「確保!」


リレアやエリシーは、ルータを止める際撃つという選択肢をとった。それは、生きてさえいれば傷は治癒魔法で治すことが出来るからであり、シーナに許可を求めたのは、リレアが撃ったとしてその後治療をするのはシーナだからだ。

 確保されたルータに、シーナは治癒魔法を発動する。


「〈リジェネラティブ〉」


 発動された治癒魔法にルータの傷がみるみる塞がっていく。

 シーナは、ルータの服をめくると傷口が完治していることを確認する。完全に塞がっていた傷口に、しかし、反応がない。


「生きている?」

「うん。気を失っているだけ」


覗き込んだリレアに、シーナはルータの手首に触れると脈をとる。弱いが感じられる脈に、口元に手をやると吐き出した息が手に当たり呼吸も感じられる。

治癒魔法で治せるのは傷だけであり失った血まで元には戻らない。ルータは出血により意識を失っていた。


『こちらリレア、逃げたスパイを確保。治療は済んで生きてはいるけど意識はなし』

『了解、回収に向かう』

『了解』


 初は、リレアからの報告にバンを発進させる。

 エリシーは、最初に回収されており、到着したバンにルータを乗せると、リレアとシーナもバンに乗り込む。

初は、倉庫へと向かうとバンを停車させる。


「キリエ、迎えに来たよ」


 リレアが倉庫に入るとザックに銃を向けたキリエが居た。

 倉庫内の状況はリレアが離れた時のままになっており、リレアは手にしていた麻袋をザックの頭に被せる。


「ほら歩いて」


 スパイの銃を回収すると、被らされた麻袋のせいで前が見えずゆっくりと歩くザックを押してバンへと向かわせる。


 キリエは、完了した任務に式神とのリンクを切断すると、それまで空中を浮遊していた式神は動力を失ったことにひらひらと地面に落下する。


「〈イグニッション〉」


 式神は使い捨てであり、キリエは役目を終えた式神を掴むと魔法を発動する。

キリエの指先にライター程の小さな火が灯る。

 キリエが発動したのは火をおこす魔法であり、キリエは役目を終えた式神を火に近づけると焚き上げる。


「全員乗ったか?」

「乗っているよ」


初は、全員が乗ったのを確認するとバンを発進させる。

 工業団地を後にするバンに、キリエはグローブボックスに置いてあった携帯を手に取ると電話を掛けた。


「はい」


 キリエは、電話を掛けると携帯を初に渡す。渡された携帯に、初が受け取った時には電話は繋がっていた。


『こちら初、任務完了、これから帰隊する』

『了解。お疲れ様』


 携帯から聞こえた女性の声に初は電話を切ると携帯をキリエに渡した。

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