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即応作戦群 2

感想ください。

誤字脱字、改善点などがあれば教えて下さい。

少し時間を遡る。


 取引場所へと向かうザックの車に、その数十メートル後方を一定の車間を保ちながら一台のバンが走行していた。

バンに乗っているのは運転をする男に、少女が四人。

乗っているのは全員が即応作戦群の隊員。

 即応作戦群Rapid Operations Groupとは、帝国の特殊部隊。


与えられた任務はザックと連邦のスパイの確保。

 ザックの車を追跡する高見初たかみはじめに、助手席に座るキリエ・ノイアは、ポーチから一枚の紙を取り出すと、続けてナイフを取り出す。

人型の紙は式神であり、式神を使用するには起動をさせなくてはならない。取り出したナイフで自身の左手中指を切ると、出血した指を式神に押し当てた。


式神には術式が書かれている。

紙が血を吸収し、式神に書かれていた術式が赤く浮かび上がる。それは起動中のサインであり、起動が完了すると浮かび上がっていた術式は消え、代わりに起動したことを示す印が赤く浮かび上がった。


起動が完了したことに、術者であるキリエは式神を操作することが出来る。だが、直ぐには操作しようとはしなかった。

バンの後部座席には、リレア・アレッド、エリシー・ケース、シーナ・プレンストの三人が座っていた。


「シーナ」


キリエは、後部座席に向くとその中で治癒魔法が使えるシーナに指を見せる。

治して、と差し出された指に、それは二、三日もすれば治るような、治癒魔法を使うまでもない怪我だった。

どんなに小さな怪我でも絆創膏を求めてくる子供のように指を差し出したキリエに、しかし、そのような行動をするのは切った場所が指だからであり、これから銃を撃つかもしれないからだ。

 指の怪我は他の部位の怪我と比べ気になりやすく、銃を撃つ者にとって指の怪我は引金を引かない指であっても射撃に重大な影響を及ぼす。


「〈ライトヒール〉」


 いつものことにシーナは、キリエの手に触れると治癒魔法を掛ける。治癒魔法を使うまでもない怪我は一瞬にして治った。


「治ったよ」

「ありがとう」


 街頭の明かりが差し込む車内。

 治ったことを伝えるシーナに、キリエは正面に向き直ると自身でも治っているかを確かめる。


治っていた指の怪我にキリエは式神の操作を始めた。

 上昇するように命令をだすと、キリエの手の上で寝ていた式神がふわりと浮き上がった。

手の上でホバリングする式神に、上昇に降下、右旋回に左旋回の命令を出すと、式神は上昇に降下、右旋回に左旋回を行う。

現在行っているのは操作確認であり、式神が命令通り動くことを確認すると次の確認作業に移る。


今回キリエが起動した式神にはカメラにマイク、そして位置情報の機能が備わっていた。

キリエは、左手で左目を覆うと右手で右耳を覆う。それは外界からの刺激を遮断するためであり、こうすることで式神から送られてくる映像や音声をより鮮明に捉えることが出来る。

 目を覆っているにもかかわらず左目に映る車内の映像に、それは式神が見ている光景であり、映像は正常に伝送されていた。


「テス、テス」


 普段耳にしている自身の声と録音して聞いた自身の声は違う。

言ったキリエに、塞いだ耳からも声が聞こえる。それは式神が聞いている音声であり、普段耳にしているものとは異なる自身の声に音声も正常に伝送されていた。


 正常に動作していたカメラにマイクに最後、位置情報機能の確認をする。

自身の内側に意識を向けると自身の直ぐ傍に反応がある。その反応は式神からの信号であり、位置情報も正確に発信されていた。

終えたすべての確認作業に目と耳を覆っていた手を離すと、キリエは初に向かって顔を上げる。


「OK。正常に動作している」

「分かった。いつも通り信号で止まった時に張り付けてくれ」

「了解」


 初は、尾行が気付かれないよう一定の距離をとって追跡していた。キリエからの報告に初はアクセルを踏み込むとザックの車に接近する。

 赤信号で止まったザックの車に一台挟むとその後ろにバンをつける。


 停止したバンに、キリエは左手で左目を覆うと式神の操作を開始した。

窓を開け、式神を車外にやると直ぐさま急降下させて車体の下に潜り込ませる。

 相手がどれ程周囲の警戒をしていたとしても車体の下までは警戒することは出来ない。

 車体の下を移動させるとザックの車の車底に式神を張り付ける。


「付いた」

「了解」


信号が青に変わり直進するザックの車に、初はザックの車から距離をとる。

位置情報機能の付いた式神はいわば発信機であり、それを取り付けた今、目視での追跡というリスクを負う必要なない。

式神の位置情報を監視するキリエに、初はキリエからの報告をもとにザックの車の追跡を継続する。


「止まった」


 式神の位置情報が変化しなくなったことに、キリエがそのことを伝えると、初もバンを止めた。

 バンが止まった場所は工業団地。

 キリエは、右手で右耳を覆うと式神からの音に集中する。

信号などによってザックの車が止まることは何度かあった。そのたびに右手で右耳を覆うと音を聞いていた。

聞こえる音に、その音がプツンと聞こえなくなったことを確認する。


「エンジンが切られた」


 キリエは、車が止まる度にエンジン音を聞いていた。

 車が止まったとしてもエンジン音がしていればまだ進むということであり、切られたエンジン音にそれはここが目的地だということを示していた。


 ガチャッと、ドアが開く音がする。

 左手で左目も覆うと車底に隠していた式神を操作する。式神の目の部分だけを車体から覗かせ周囲の様子を確認すると、ブリーフケースを手に倉庫へと向かうザックの姿が見えた。


 ザックが倉庫に入る。キリエは式神を車体の下からだすと、倉庫の外観を調べる。

倉庫には通気口があった。

発見した通気口に、そこから式神を侵入させる。

外観は真っ暗だった倉庫の中は照明により明るく照らされていた。


「ここみたいだね」


 言ったキリエにそれが合図だった。


「敵の数は?」

「男が三人。全員が銃を持っている。配置は中央に一人と右端と左端に一人ずつ。中央に居る男がリーダーだと思う」


 尋ねた初に、キリエは式神で中の様子を偵察すると答える。

また、ザックは中央に居るスパイの直ぐ近くに居た。

また、スパイは全員銃を持っていた。


「銃は何を持っているの?」


 尋ねたリレアに、キリエはスパイたちの持つ銃へ視線を向けた。

 小銃よりは小さく、だが、拳銃よりは大きいそれは短機関銃であり、T字の形をしていた。


「UZIだね」

「了解」


 UZIは折り畳みの銃床を備えている。リーダーであるスパイは銃床を畳んだままにしているのに対し、両端で警戒を行っているスパイは銃床を展開するといつでも戦闘を行える態勢を取っていた。


「敵は、リーダー以外は殺してもいいんだよね」

「スパイは一人確保できればいい」

「ザックも殺してはいけませんよ」

「分かっているって」


 任務はザックと連邦のスパイの確保だ。

初に確認したリレアに、シーナはそれに付け加えるように言った。


「作戦開始だ」


 初は、この部隊のリーダー。

 今居る場所は工業団地であり、ザックの車が工業団地に入った時から全員がここだと思っていた。


 キリエにリレア、エリシー、シーナは銃を手にしていた。

 助手席のドアを開けるとバンを降りたキリエに、リレアにエリシー、シーナは後部座席のドアを開けるとバンから降りる。

 月明かりに照らされる工業団地に、建物や壁の陰に入ると光を避けながら進む。

 先頭を進むリレアに、その後ろを進むキリエが指示を出す。シーナは後方警戒員で最後尾を進んでいた。

 顔を覗かすと索敵し進もうとした時だ。


『三人とも止まって』


 エリシーから無線が入った。

 先頭を進んでいたリレアは、入った無線に姿勢を低くすると壁の影に隠れる。


『どうしたの?』


 尋ねたリレアに、しかし、返答はない。


パシューン。


再度尋ねようと無線機のボタンに手を掛ける。刹那。リレアの耳は乾いた音を捉えた。

気のせいかもしれないような小さな音に、少ししてエリシーから無線が入った。


 エリシーは、狙撃手であり、一足先に位置に着いたエリシーは周辺警戒を行っていた。

 倉庫を見下ろすことができる建物。その建物の屋上に上がると、腰ほどの高さのある壁に銃を依託すると構える。

 夜という時間帯。警戒しようにも周辺を見通すことのできない闇に魔法を発動する。


「〈ライフビジョン〉」


 目を閉じ、魔法を発動すると目を開く。閉じるまではカラーに見えていた視界、それが、目を開くとモノクロに変わる。

 モノクロになった視界で周辺を見渡すと、視界に一つ、白い点があった。

 エリシーが発動したのは索敵魔法。それはサーマルに似ており、モノクロに映る視界には生物だけが白く強調されて映る。


 倉庫の道を挟んで向かいにある建物の屋上。ピングはそこから周辺警戒を行っていた。

 ピングは、男の本名ではなくコードネーム。

 ピングは、連邦のスパイであり、狙撃手として警戒を行っていた。


ザックが倉庫の扉をノックした時、扉は何の確認もなく開かれた。

通常であれば相手が本人であるかの確認や、尾行されていないかなどの確認がなされてから開かれる。しかし、それらが行われなかったのは、ピングがそれらを確認し電話で中に居るルータに伝えていたからだ。


 ピングが手にしている銃はM1ガーランド。スコープを載せていない銃に、レンズの反射による位置バレの心配はなく、闇に溶け込むと誰にも気づかれることなく周辺警戒を行っていた。


「エネミー1発見」


 誰もいないように見えた視界に、魔法を発動することで映った白い点。等倍で見るとただの点なそれはスコープを通して見ると人型であることが分かる。

 魔法を発動していなければ見落としていたかもしれない。だが、魔法を発動したことでそれは容易に発見出来た。


『三人とも止まって』


発見したピングに、エリシーは三人に止まるように告げる。発見した時点で照準は終わっていた。しかし、まだ撃つことはしない。


「エネミー2は……なし」


 一人いたならそれ以上いる可能性もある。

ピングから照準を外すと他にも敵が潜んでいないかを確認する。しかし、他には発見できなかった人影に敵は一人だけだ。

エリシーは、そう判断するとピングに照準を戻す。安全装置を解除し、引金に指を掛けると、呼吸を整える。

ピングの頭に照準を合わせると、引金を落とした。


パシューン。


 エリシーの銃にはサプレッサーが付いている。

 サプレッサーは銃声を完全に消すわけではない。サプレッサーが消してくれるのは発砲音であり、銃の動作音や銃弾が音速を超えた際に起こるソニックブームは消えない。

 スコープにピングが倒れるのが映る。少し観察するが倒れたピングに動く気配はない。


『ワンダウン。クリア』


敵を排除すると無線を送る。


『スナイパーが居たから排除した』


 無線を送ってきたエリシーに、リレアが先ほど耳にした音はサプレッサーにより消音された狙撃銃の発砲音だった。


『了解』

「後で何か奢ってあげないと」


 無線では不必要な電波は流さないのが規則だ。

敵を排除してくれたエリシーに、リレアはそう思うと前進を再開する。


「そこの倉庫にターゲットが居る」


 倉庫から少し離れた位置。

 言ったキリエに、それはどこにでもあるような普通の倉庫。

 倉庫は真っ暗で中に人が居るとは思えない。しかし、止まっていたザックの車に、何より式神の位置情報機能がここだと告げていた。

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