シーズン2 第6章第三部 眠りからの呼び声
ノルウェー地下の奥深く――
冷気が漂い、凍りついた壁の間をライトの光がかすかに照らしていた。
レイ、ナツキ、シュン、そしてレイの母・ユキの4人は、
古びた研究区画の奥へと進んでいた。
ユキが小さく息を呑む。
彼女の目には見覚えのある印が刻まれた鉄の扉が映っていた。
「……間違いない。ここは、私が5年前までいた施設の一部。
でも、もう閉鎖されたはずだったのに……。」
レイは母の横顔を見ながら、慎重に扉を開けた。
中は薄暗く、無数のカプセルが並んでいる。
その一つ一つに、人影のようなものが浮かんでいた。
ナツキがタブレットを操作し、反応を確認する。
「……生体反応があります。だけど、どれも人間のものじゃない……。」
すると、静まり返った空間に低い唸り声が響いた。
カプセルの一つがひび割れ、黒い靄が漏れ出す。
瞬間、レイの背中にぞくりとした寒気が走った。
ユキが震える声で言った。
「この被験体……“ゼロ”のはず……。
私が初めて実験体として扱った、鬼と人間の融合体……。」
黒い靄が形を成し、ゆっくりと立ち上がる。
それは人の形をしていたが、瞳は闇のように深く、声を持たない。
「……お母さん、離れて。」
レイが前に出る。
しかし“ゼロ”は攻撃するわけでもなく、ただレイの顔を見つめていた。
その口がかすかに動き、機械のような声が漏れる。
「カ……ンザキ……レ……イ……」
ユキは息を呑んだ。
「まさか、あなた……まだ意識が……!?」
“ゼロ”は一歩踏み出し、苦しげに手を伸ばす。
その腕から黒い光がほとばしり、壁が砕けた。
レイたちは即座に後退し、出口へと走る。
地響きが起こり、施設の天井が崩れ始めた。
外に出た瞬間、冷たい風が吹き抜け、雪煙が舞った。
息を切らしながらも、レイは振り返り言った。
「あれは……まだ終わってない。
“ゼロ”は母さんの研究の鍵でもあり……たぶん、
俺たちが知らない“新たな境界”の始まりだ。」
ユキは静かに頷いた。
そして夜空を見上げながら、小さく呟く。
「平和の裏に、まだ眠る闇がある――
それを止めるために、私たちは生き残ったのね。」
ノルウェーの氷原に、極光が静かに揺れていた。
その光の下で、4人は再び“鬼ノ境界”の深淵を感じていた――。




