シーズン2 第6章第ニ部 氷下の呼び声
夜明け前、ホワイトホース本部の滑走路に、
四人の影が並んでいた。
レイ、ナツキ、シュン――そしてレイの母、神崎ユキ。
ノルウェー北部・トロムソ近郊。
氷の大地の奥深くに未知の反応が確認されたその地へ、
特別調査チームとして派遣されたのだ。
「この反応、普通の血気波とは違う。
周波数が……まるで“呼吸”のように動いている。」
ミサキが計測装置を見ながらつぶやく。
「呼吸……まるで生きてるみたいだな。」シュンが眉をひそめる。
「いや、違う。」レイが答えた。
「これは――“誰かが目を覚まそうとしている”波形だ。」
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■ 地下の入り口
雪原を進むと、氷の地面にわずかな亀裂が走っていた。
ナツキがしゃがみ込み、手をかざすと、薄く蒸気のような冷気が吹き出す。
「ここ……空洞がある。」
シュンが装置を取り出し、地中をスキャンする。
「地下深く20メートル……巨大な構造体が埋まってる。施設かもしれない。」
4人は慎重に掘り進み、氷壁の下に隠された古い金属扉を発見した。
そこには faded(消えかけた)文字が――。
「B.T. PROJECT // SUB-LAB 04」
ユキがその文字を見た瞬間、息を呑んだ。
「……まさか。ここ、私が関わった実験施設のひとつ。」
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■ 5年前の残響
扉を開けて中に入ると、
そこは長年封鎖されていたとは思えないほど、整然とした実験区画が広がっていた。
壁にはホログラム装置、中央には大型のカプセル。
そして――その奥に、影がひとつ。
薄闇の中、うずくまるようにしている“鬼”の姿。
皮膚は灰色に変色し、体には無数のコードが刺さっていた。
レイたちが警戒を強める中、ユキが一歩前に出た。
「……あなた、まさか――」
鬼がゆっくりと顔を上げた。
片方の瞳は赤く、もう片方は淡い青。
それは、かつてユキがブラックタイガーの研究班にいた頃、
「被験体K-07」と呼ばれていた少年型の鬼だった。
「ユキさん……? 本当に……?」
「どうしてあなたが……まだ生きて……」
ユキの声は震えていた。
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■ 鬼の告白
K-07は、機械に繋がれたまま、ゆっくりと語り出した。
「僕は……5年前、あなたが去った後、
“境界の門”の実験で取り残された。
けれど……あの門は閉じなかった。
ずっと、あの空の向こうと繋がっている。」
レイが思わず身を乗り出す。
「門がまだ……開いてるってことか!?」
「……ええ。」ユキが苦い表情で頷く。
「この施設は、最初期の“アーク・ネメシス”計画の実験場。
もし門が完全に閉じていないなら、
あの軌道上の装置が……まだ何かを送り込んでいるかもしれない。」
ナツキが息を呑んだ。
「つまり、“アーク・ネメシスⅡ”は……まだどこかに?」
K-07はゆっくりと頷いた。
「僕たちを……呼んでいる。あの場所が。」
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■ 新たな兆し
その瞬間、施設全体がわずかに振動した。
地面の奥から低い轟音が響く。
「エネルギー反応上昇! 地中深くで何かが動いてる!」シュンが叫ぶ。
ユキは急いで端末を操作し、計測値を確認した。
「これ……境界共鳴波よ。
“何か”が再起動してる……!」
レイは強く息を吐き、目を細めた。
「だったら、止めるしかない。
もう二度と――あんな戦いは繰り返させない。」
ナツキが微笑み、頷く。
「うん。行こう、レイ。」
氷下の闇の中、四人は再び“境界”の奥へと足を踏み入れた。




