第22章・第七部 「裏切りの信号 ― イグニッション暴走」
アーク・ネメシス中枢、指令区。
大型スクリーンに赤い警告が次々と点滅していた。
「出力値が上限を超えています! イグニッション・コア、制御不能!」
「誰かが内部プログラムを書き換えている――!」
研究班の叫びが響く中、リョウ総裁は静かに立ち上がった。
その眼光には、かつてホワイトホースの総裁だった頃の冷徹な光が宿っている。
「……誰だ。誰が干渉した。」
返答はなかった。
だが次の瞬間、メインモニターに映し出されたのは、神崎ユキの映像だった。
『この計画を、止めて……リョウ。あなたのやろうとしていることは、地球そのものを壊す。』
通信は断片的で、ノイズにまみれていた。
それでも、彼女の声ははっきりと艦内に響き渡った。
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レイとアヤは医療区画にいた。
母のカプセルは再び光を帯び、医療班が必死に制御を試みている。
「お母さん……、父さんの計画を……?」
レイの胸の奥に再び痛みが走った。
彼の血に眠る闇の力が、母の放つ“光の波動”に反応しているのだ。
「やめろ……暴れるな……!」
アヤが心配そうに見つめる中、レイの腕から淡い黒炎が滲み出した。
しかし今回は、暴走することなくすぐに収束する。
前回とは違う――どこか、光と闇が共存しているような感覚。
「……母さんの力が、俺の中で……共鳴してる。」
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同時刻。
ホワイトホース本部では異常なエネルギー波を感知していた。
「ブラックタイガー本部、アーク・ネメシスから未知の波動発生! 規模は中型都市並み!」
「これは……イグニッション・コアの暴走だな。」
総裁は深く息をつき、決断した。
「作戦名 アポストル・ゼロ。
ブラックタイガー内部に潜む反乱派を利用し、内側からの破壊を狙う。
同時にレイ奪還作戦を発動する。」
ナツキとシュンはすでに出撃準備を整えていた。
ナツキは母に会い、短く言葉を交わす。
「レイを、必ず取り戻す。あの人に、もうひとりで背負わせない。」
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再びアーク・ネメシス。
艦内は非常灯が赤く点滅し、警報音が鳴り止まない。
その中で、リョウとレイがついに向かい合った。
「父さん、イグニッションを止めてくれ!」
「止められん。これは、鬼と人間の“新しい世界”を作るための礎だ。」
「それは破壊だ! 母さんも止めようとしてる!」
リョウの瞳が一瞬だけ揺れた。
だが、すぐに表情を戻す。
「ユキは理想主義者だ。だが私は現実を選ぶ。」
その言葉の直後、艦が大きく揺れた。
外部からの攻撃――ホワイトホースの奇襲が始まったのだ。
「来たか……」
リョウは通信端末に手を伸ばした。
だが、その通信を遮断したのはミカだった。
「……お父さん。もう終わりにしよう。」
彼女の手には、母から託された小さなデバイスが握られている。
それは“イグニッション停止キー”。
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レイとアヤは走った。
暴走する艦の中を、揺れる通路を抜けて中央コアへ向かう。
背後では警備兵たちが次々と現れるが、レイの風の血気術とミカの雷の術で突破していく。
ついに到達した《コア・ルーム》。
そこでは巨大な黒い球体が宙に浮かび、地響きのような音を放っていた。
「……これが、父さんの作った“未来”か。」
アヤがデバイスを差し込もうとした瞬間――
上方の通路から、リョウが姿を現した。
「……来たか、レイ。
ならば見せてやろう。“鬼の進化”を。」
彼の身体が闇に包まれ、形を変えていく。
血気術を超えた禁断の姿、“鬼王形態”――。




