第22章・第四部 「影の作戦 ― 奪還への静かな決意」
ブラックタイガーとの和平合意から数日。
ホワイトホース本部は、これまでにない静寂に包まれていた。
その理由はただ一つ――主力であり希望の象徴でもあった、神崎レイを一時的に失ったからだった。
司令室の空気は重く、誰もが言葉を選びながら動いていた。
会議室の中央、円卓を囲む幹部たちの間で、意見が真っ二つに割れていた。
「合意を破棄してでもレイを奪還すべきだ!」
「いや、軽率な行動は戦争を再開させる。2か月待つべきだ!」
激しい口論の中、総裁がゆっくりと立ち上がった。
その一言で、会議室は静まり返る。
「……和平は維持する。ただし、何か異常があれば即座に奪還作戦を実行する。」
短く、だが揺るぎない決断だった。
その言葉に、ナツキとシュンは同時にうなずいた。
「レイを取り戻す。その時が来るまで、力を蓄えよう。」
それからの日々、二人は訓練棟で過酷な調整を始めた。
血気術の強化、戦闘機との連携、そして宇宙戦への適応訓練――。
まるで決戦の日を予感しているかのように、全ての動きが本格的だった。
ナツキは訓練の合間に、レイの姿を思い出していた。
「……絶対に、無事でいて。」
一方、情報局と捜査班も動き始めていた。
彼らはこれまでに全滅したブラックタイガーの派閥基地を再調査し、
通信記録や輸送データを洗い直していた。
やがて、その中の一つのデータが異常を示した。
――派閥が滅んだはずの拠点から、最近になって新たな通信信号が発信されていたのだ。
「誰かが……生きてる?」
捜査班のリーダーが小さく呟く。
それは偶然か、それとも意図的な囮なのか。
ナツキとシュンはその報告を聞き、
次の瞬間にはすでに準備を始めていた。
「何かが動いてる。
そしてきっと……レイも、その中で闘ってる。」
硫黄島の夜空の下、
ホワイトホースの艦艇群が静かにエンジンを温め始める。
その音はまるで、
次に訪れる**“奪還の夜”**の前触れのようだった。




