51 エレナが拗ねました
「ガリウレス王国宰相ガーナー公爵家次男、だよな?お前」フンッやっぱりか。
「ハァ〜、そうですよ。皆殺されてしまいましたがね…」皇帝を殺しても、皆は生き返らないけどさ。それでも俺が無念を晴らしたかったんだ。
後悔はしていないけどな。
「ん〜?お父上は分からんが長男は生きてるぞ?魔族国にいるはずだ。知らなかったのか?」アレン先生が首を捻りながらそう言った。
…………はぁ?
俺は言葉を失ってしまった。兄上が生きてるだと?!
「な、なぜそんな嘘を…」「嘘じゃねーよ。魔族国からウチに連絡が来てな。お前がウチの国にいるかどうか確かめたいと。あの頃はまだお前がここにいるって知らなかったから、そのまま分からないって返事しちまったんだよ。今から返事しようか?」アレン先生が顎に手を当てて俺を見る。
ハハハ…。俺は体の力が抜けて、座り込んでしまった。
アレン先生が俺の肩に手を置き「マルタカの剣を見つけてくれたお礼もしたいし、これからの事を話し合おう。今はまだゆっくり休め。エレナちゃんは隣の部屋だ。魔力切れで眠ってるだけだぞ?」そう言ってアレン先生にベッドへ戻された俺は、食事をもらってからまた眠ってしまった。
◆◇◆◇◆◇
翌日は、起きてすぐにエレナの部屋に行った。
何となく、一時はエレナを一人にしてしまうところだったと思い出し、俺は扉の側に立ってベッドまで行く事が出来なかった。
だが、エレナが目を覚まし俺を見つけると、周りの人達を払い除けて俺目掛けて空中を飛んで腕に収まった。
「おとーしゃん!!よかっちゃあ〜〜」と首にしがみつき、ワンワン泣く幼子をギューッと抱きしめ「ごめん、ほんっとーにごめん」と俺は謝った。
そんな俺達の姿を見て、その場にいたメイドやアレン先生やマックスや、その他諸々の人達も部屋から出て行った。
俺はエレナを抱っこしたままベッドに座った。
「創造神様と少し話をしていてな。何で目覚めないんだって怒られた。あの時、皇帝の魂の欠片が俺の口から入って、危うく体を乗っ取られそうになったんだ。……剣で俺の心臓を刺すしか方法が無かったんだよ。俺は創造神様に助けてもらい、皇帝は完全に滅殺出来た」
エレナが目に涙をいっぱい溜めたまま、俺の話を聞いている。
「その時少し俺の魂も傷ついてしまって、創造神様が治して下さったんだ」
俺の告白に、エレナが目を見開き唖然としていた。
「うちょ…、ほんちょーに死んじゃうちょころだった…」また泣き出しそうだ。
俺は背中をトントン叩き「エレナが体を治してくれたんだろ?そのせいで魔力切れを起こしたって創造神様から聞いたよ。ありがとうな」俺はエレナの目を見てニッコリ笑った。
◆◇◆◇◆◇
エレナはそれでも俺が死のうとしていたと怒り、なかなか許してくれなかった。
「あたちをひちょりにしゅるちゅもりだったにょね!ひどいっ!おとーしゃんにゃんてキライっ!!」と言って布団に潜り込んでしまった。
どんなに呼び掛けても、食事だ、おやつだ、風呂だと世話を焼いてもエレナは「わたちにゃんて、いにゃいほうがいいんでちょ」と、数日経っても碌に口も利いてくれなかった。
挙句にとある日の朝、アレン先生が「ユリウスの所が嫌ならワシの家に来ると良い。息子もおるしな!」とニカッと笑い勝ち誇った顔で言ったが、目を吊り上げドスの効いた声で「アレンしぇんしぇいにゃんてだいっキライ!」とエレナが叫んでしまった。
アレン先生はその言葉を聞いて、膝から崩れ落ち床に倒れてしまった。「クスン、酷いよエレナちゃん…」と嘘泣きまで始めた。
エレナはベッドの上で短い腕を一生懸命組み、足も胡座をかいてピンクの艶々した唇を尖らせて「フンッ!」と顔をアレン先生から背けた。
俺は二人のやり取りを見て笑いを堪えた。
ずい分わがままを言えるようになった、と思えば可愛いもんだ。
マックスはマックスで、アレン先生に目をやりつつ俺の方を見て「だったらここにずっと住んでも良いぞ?国王もそうして欲しいって言ってるし」と、前にした約束を平気で反故にする王家のやり方に、俺の方がブチ切れそうになった、が。
「マックチュはもっちょキライッ!顔見ちぇんにゃっ!」と、小さな人差し指をマックスの顔に向け大声で怒鳴った。
マックスは、エレナの言葉の一撃に撃沈した。
よくやったエレナ。俺はエレナの頭を撫でた。
ーーーーーーーーーーーが。
「しゃわんにゃいで!」と手を払い除けられてしまった。
「だからごめんって。本当にあの時はああするしか無かったんだよ。信じてくれよ。これからは絶対一人にしないから。約束するよ」さすがの俺も、こうもエレナに拒否され続けるのはツラい。
「フンッ。出来ない約束はするもんじゃ無いわ」とこぼし、エレナはふて寝してしまった。
ウチの娘は、いつ機嫌を直してくれるのかなぁ〜。
エレナが眠ってしまったので、仕方なく三人で部屋を出た。
◆◇◆◇◆◇
「なぁ、そろそろあの時の話が聞きたいんだが」とマックスに言われ「そうですね。俺達もいつまでもここにお世話になる気は無いですし、エレナが起きてからしましょう」
二人の了承を得て、俺はエレナの部屋に戻り、ベッドに潜り込んで一緒に眠った。
2時間程が経ち、エレナの動く気配がして俺は目が覚めた。
「エレナ、起きたか?」今は……ちょうど昼ぐらいか。
「おにゃかしゅいた」と言うエレナに「何食べたい?」と聞くと「オコメ」と言う。
「あ〜、アレはトーダさんしか扱っていないからロッカに帰ってからだなぁ〜。あ、そうだ!」俺はマジックバッグにオニギリがまだたくさん入っていたのを思い出した。
「ほら、オニギリ」とエレナに出してやると、とても嬉しそうな顔をする。
「あにょお肉ちゃべちゃい」あのお肉?「あ〜、宿に泊まった時のヤツか?焼いてもらおうか?」と聞くとウンウンと頭を振る。
「ちょっと待っててな」俺はエレナを残し、廊下にいたメイドに調理場を聞き、料理人に肉を焼いてもらった。
二人分のステーキを部屋まで運び、オニギリと一緒に食べた。
「なんか、いつもの食事よりオニギリのおかげか数倍旨く感じる…」俺がそう言うと、エレナが得意気になって「ご飯は最強だって言ったでしょ?」と、ふふふと笑いながら言う。
どうやらやっと、機嫌を直してくれたようだ。
「皆がそろそろ話を聞かせてくれって言うんだ。ここにずっと世話になる理由にもいかないし。エレナはずっとここにいたいか?」
俺の意地悪な質問に、また怒り出すかと思ったが「今しゅぐ出て行きちゃい」と憤る。
あらら、そうなのか?
そんなにここが嫌だったのか?




