50 弱虫な俺
《ユリウス視点》
あ〜あ。やっちまったなぁ〜。いつ死んでも良いと思っていたけど、いざ本当に死んでしまうと後悔ばっかりだな…。
エレナ、怒るだろうな。まだ何も教えて無いし、色んな所に連れて行ってやりたかった。
それにしても、死んでも色々考えたり出来るんだな?何か不思議だよ。
〈コラコラ、ユリウス君。まだ死んで無いからね?しっかりしなさいよ〉
(あれ?創造神様?俺、死にましたよね?)
〈まさか。君を死なせたらエレナちゃんに嫌われちゃうよ。ちょっと危なかったけど、何とか体に魂を留めたからね。それより何で目覚めないの?エレナちゃんが全力で魔法掛けて体は治ってるよ?魔力が枯渇しそうな程流したのに…ってアレ?あー、そう言う事。ごめん、ユリウス君の魂に少し傷が付いちゃった。さすが僕が造った剣だ。ウェダスを消す程だもんね〜〉
創造神様が自画自賛し始めた。
俺、死んでないのか。そっか。
俺、生きてて良いのかな?
〈あのね〜。エレナちゃんに元の世界に戻るかって聞いた時、何て答えたと思うの?エレナちゃんはね、ユリウスさんを一人に出来ないって答えたんだよ?そんな事言ってくれる女の子、一人ぼっちにする気なのかな?エレナちゃんを守るって僕に誓ったでしょ?忘れちゃったの?さすがの僕でも怒るよ?〉
(俺は弱虫なんですよ。皇帝を殺したら、何をすれば良いのか分からなくなりました。このままずっと眠っていたいです)
〈やる事ならあるでしょ?ガリウレスの再興とエルダーナをどうするのか。君が目覚めるまで何も進まなくなっちゃうし、何をすればなんて明確な目標を持って生きてる人の方が少ないでしょ。まずは人生を楽しむ事だよ?はい、終わった。傷ついた魂の修復が終わったよ。せめてエレナちゃんの不安を取り除いてあげてね〉
(ふぅ、創造神様には敵いませんね。分かりました。エレナと楽しみますよ。あー、それと、一つ聞きたい事が)
〈うん、なぁに?〉
(帝国の惨状なんですが…)
〈あ〜、アレ?エルタナを捕まえて処分したら、あーなっちゃったんだよね〜。勇者のスキルも使えなくしたし、子孫でも善良な者達は助かり、嬉々として悪事に手を染めた者は罰を受けたって事だよ。それはこれからも続くんだ。誰でも己を顧みて身を正すことが出来れば助かるけど、どうだろうな?うまく国外に逃げても、子孫である事には変わらないからね。帝国にいた時と同じ事をすれば罰を受けるよ〉
ほぅほぅ、なるほど?
〈それと、クロキとウェダスの魂を拾って別世界に送ったから。もう君達の世界に現れる事は無いよ。あの二人は心から反省するまで殺し合う世界に送ったの。人を殺すのが大好きな二人だから、心置きなくお互いを殺し合うんだ♪絶対に死なないけど痛みは覚えるよ。相手に切りつけると、その痛みが自分に返って来るんだよ。他人の痛みを記憶するといいんだ。でっきるっかなぁ〜♫〉
(相変わらず過激ですね)
〈さぁ、話はこの辺でおしまい。もうすぐエレナちゃんが目覚めるよ。起きて安心させてあげてね?〉
(創造神様、色々ありがとうございました。俺も、殺されてしまった人達も、少しは無念を晴らせたかと思います)
〈ふふふ。相変わらず真面目なんだから。幸せにおなり、ユリウス君〉
(はい。エレナと一緒に、これからも生きて行きます)
◆◇◆◇◆◇
プツンと音がして、俺は目が覚めた。
俺の前に知らない女がいた。
「あらっ、お目覚めですか?良かった〜。今アレン先生をお呼びしますね」とパタパタ走って部屋から出て行ってしまう。
ここはドコだ?
ふかふかの布団に天蓋付きベッド。高級そうな調度品の数々…。
ん?となると、さっきの女性はメイドか?って事はまさかマルタリカ王城か!
え〜、嘘だろぉ〜?!
俺は体を起こして頭を抱える。
そうだよ、エレナはどこだ?俺と一緒にいないって事は違う部屋にいるのか?
あの子は元気なのか?早く顔を見に行かなくてはっ!とベッドから抜け出そうとモゾモゾしていたら、アレン先生が来てしまった。
「よう、起きたか。お前四日も眠ってたんだぞ?一応診察させろ」なぜか凄〜く意味深な笑みを浮かべて俺に向かって来る。
やたらと手足や体を触ったり、顔をムニムニと揉まれた。
「よし、どこも異常は無いな。体に傷も無いのに目覚めないから心配したぞ?お前、自分で心臓に剣を突き刺したらしいじゃねーか。隣でエレナちゃんまでぶっ倒れているし、何があったんだよ?」
「あの〜、エレナは?」エレナはまだ目覚めてないのか?俺が側にいてやらなければ!
「話は後にして下さい。聞きたいのは先生だけじゃないでしょ?ギルド長もエレナも聞きたいはず。全員のいる所で話しましょう。今はエレナの所へ行かせて下さい」俺はアレン先生の返事も聞かずにベッドから抜け出す。
俺の荷物はドコだ?部屋の中をウロウロと探していたら、アレン先生に腕を掴まれた。
「あー、その……なんだ、エレナちゃんをワシにくれないか?」アレン先生が少しだけ、申し訳なさそうに告げた。
俺は一瞬で頭に血が上ってしまい、アレン先生の手を払ってしまった。
「またその話か!絶対にやらん!!」本気の殺気を放ち、何ならブチのめしてやろうかと拳に力を込めた。
「イヤ、待て待て。ウチの息子の嫁にどうかと…」とアレン先生が目尻を下げて俺を見る。
「ハァ?まだ3歳だぞ?いくらなんでも早過ぎるだろ?」何を考えているんだよっ。
「だからお願いしたいんだよ。あんな可愛い子、すぐ色んな貴族が寄って来るぞ?俺の息子なら安心だろ?」さも当たり前だろう、みたいなノリで言いやがって!
何が安心だよ、ふざけんなっ!
「それ、エレナに言ったんですか?」俺の軽蔑の眼差しにアレン先生は「お、おう…。お父さんに聞いてみるって…」しどろもどろで目が泳いでいる。これは嘘だな。
「俺は何も聞いてないし、先生も嘘を吐いていますよね?」俺が問い詰めるとアレン先生が両手を上げて降参した。
「あ〜スマン。息子と友達になってくれって言っただけだ」何だ、アレン先生が先走っただけか。
「親が子供の未来を勝手に決めるなんて事、もう止めませんか?ギルド長もそれで王家から離れちゃったんでしょ?」
アレン先生が驚いた顔をした。
「お前……知ってたのか?マックスが他国のお姫さんと、無理矢理婚姻を結ばれそうになって逃げた事…」そりゃあね。
「俺の実家を知っているでしょ?嫌でも耳に入りますよ」そうなんだよ。俺の実家は…
「ガリウレス王国宰相ガーナー公爵家次男、だよな?お前」
ーーーーーーフンッ、やっぱりか。




