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偽りの父娘ですが、勇者討伐の旅に出ます!  作者: てちてち


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49 エレナの気持ち




《エレナ視点》



 いっぱい買い物をして欲しい物をたくさん買って、美味しい物も食べられた。



 これで心置きなく帝国に行ける。そう思っていたのに、アレン先生とギルド長に邪魔されて…。私、お昼寝してたんだけど、何となく声は聞こえてた。



 大人の事情は分かるけど、早くしないと手遅れにっ…。



 まぁ私達の焦りなんてあの人達に分かる理由が無い。ふ〜。特にギルド長…。しつこ過ぎるっ!



 帝国の人達の為におにぎりを持って行く事にしたの。きっとお腹を空かせているハズ。誰だって空腹は辛い。



 あのお店のオジサン達をこき使ってやったわ。会議室で座って話してるだけなんだもん。構わないでしょ?



 報酬におにぎり食べたんだって。旨かったって喜んでいたらしい。海苔が無かったのは残念だったわ。



 私だって神界にいる時、何度も餓死するって思った。じーさんのおかげで助かったけどね。



 だから、ちょっとだけ助けられたらなって思ったの。



 それから、帝国に乗り込む前にお父さんと森へ行って剣の使い心地を試した。



 お父さんったらカッコ良かったぁ〜。スッと剣を振ったら木が次々と倒れちゃって。大型のボア?とか言う魔物もスパンッて斃しちゃったのよ?見惚れちゃった。むふ〜。



 私もナイフの振り方を練習したの。両手で握らなきゃならなかったのは大変だったけど。それでも一生懸命がんばった。



 夢中になってナイフを振ってたから気づかなかったんだけど、目の前にゴブリンがいたのよ。生きてるゴブリンが。



 後ろでお父さんが焦っていたのが分かったけど、私は構わず突っ込んだ。



 ナイフで胸を一突きして蹴り飛ばし、お父さんの所まで空中を回転しながら戻ったの。



 前世でそんな事したこと無かったから、思うように動く体に楽しくなったわ。親指立てて「だーじょぶ」って言ったのよ?



 お父さんのビックリした顔も忘れられない。ふふふ、面白かった。



 だけどね、お父さんが「パンツ丸見えですよ」って言ったのよ!



 キャーーーッ!何てことを!乙女のパンツを見るなんて!



 怒った私はお父さんを追い掛け回したわ。



 時々水球が飛んで来たり、姿が見えないと思ったら木の上に乗ってたりして、そのうち楽しくなっちゃったんだけどね。




◆◇◆◇◆◇



 それから馬車に乗って王都まで行ったの。



 私はお父さんに言われて、着ぐるみの白兎に変身した。通りすがりの人にまでカワイイと言われてちょっと恥ずかしかったけど、お父さんに可愛いと言われるのが一番嬉しい。



 城の地下から帝国城に飛んだ。転移陣って便利よね。



 あっと言う間に着いたのは納屋の中だった。



 私が名付けたスズメさんとお父さんと三人で納屋を出て行く時、ギルド長がまたお父さんにウィンクしたのよ!



 アイツ、絶対に燃やしてやる…。



 でも、王弟殿下なんだって。くっ、負けたわ…。



 城の中は不気味な程静まり返っていて、妙な臭いが充満してた。スズメさんが「死臭だ」って。



 そこら中で痩せ細った兵士達が折り重なるように死んでた。



 いっぱいおにぎり持って来たのにな。



 近衛隊長とか言う人も、見つけた時は手遅れだった。



 こんな姿になってまで皇帝に仕えるってどう言う事?不思議でならない。




◆◇◆◇◆◇



 教会の祭壇に地下の入り口を見つけて、三人で入ったの。



 下の方まで行ったらもの凄く太ったおじーさんが待ってて、お父さんがスパッと斬っちゃった。



 どうやら人を食べていたみたいだけど…。



 気持ち悪い。



 扉の中にあった魔法陣はちゃんと壊せた。そこら中に倒れている人がいた。



 その人達は、魔力を使い過ぎたんだって。皆干からびて…。



 創造神様がどこかに大きな魔石があるはずだから探してってメッセージが来た時は、どうやって探そうか悩んだけど魔法陣の真下にあったのよ。



 床が壊れて真下に落ちる時、お父さんが助けてくれた。魔石を創造神様が回収してって言ってたから収納に入れたんだけど、何かに使うのかしら?




◆◇◆◇◆◇



 その後すぐ牢屋に行って黒木と対決した。本当は体が震える程怖かった。でも隣にお父さんがいた。



 黒木は全くの別人になっていたけど、目だけは同じだった。色はもちろん違ったけど。



 あの目。誰にも心を開かず、いつも何かに怯えてただ疑うだけの目。



 君は、自分の弱さを認める事が出来なかった。



 言いたい事はたくさんあったけど、私に出来る事は、君を終わらせる。それだけ。



 今まで殴られた数には及ばないけど、私も黒木を殴ったわ。手が凄く痛かった。



 お父さんが押さえ付けてくれてたから、殴り返される事は無かったけど、黒木は薄ら笑いを浮かべてて何も言わなかった。



 一言ぐらい謝るかと思ったんだけど、黙るなんて卑怯だわ。



 私は胸にナイフを突き刺し魔力を流して、君を砕け散らせた。



 サヨウナラ。



 出会った頃の君の態度は何だったのかな?騙す相手を探していただけなんだろうね。



 私がバカだったよ。ホント。



 悲しかったのか嬉しかったのか、終わったと思ったら涙が止まらなくなった。



 それと同時にお腹も空いて、三人でおにぎりを食べた。



 ただの塩むすび。でも一番美味しい。



 懐中時計を確認していたら、救出された二人の王子を創造神様が助けろって。無茶振りするわよね〜。



 部屋に駆けつけて、その場で考えて「リカバリー」を使ってみた。上手く行って良かったわ。



 私、がんばった。



 その辺りで眠くて眠くて寝ちゃったのよね、私。





◆◇◆◇◆◇



 そしていきなり頭の中で〈エレナちゃん!起きて!ユリウス君が死んじゃうよ!〉って。創造神様の声が響いて目が覚めた。



 私は知らない場所の廊下に寝かされてて、横に剣で胸を刺して倒れているお父さんが…。



「おとーしゃん!」



 スズメさんに剣を抜いてもらい、ついさっきやってみた「リカバリー」を全力で掛けた。



 血がいっぱい流れていたけど、光がお父さんを包み体の傷はキレイになったけど、お父さんが目を開けない。どれだけ魔力を流しても、お父さんは動かなかった。



「うそ……」どうしよう、どうしたら助けられるの?創造神様!!



 そこで私の意識は途切れてしまった…。



 あとから聞いた話だけど、スズメさんが慌てて皆を呼び、転移陣でマルタリカの王城に戻り、お世話になったそうだ。お父さんと王子二人も一緒に。



 私はその後、五日程目覚めなかった。



 王子二人は私のおかげで意識が戻って、エルダーナ帝国で何があったのか語ったそうだ。



 それはそれは悍ましい話だったようで、私は教えてもらえなかった。



 私は結局、魔力切れを起こしただけなんだって。



 昏々と眠り続けて皆が心配してたようで、目覚めた時は色んな人が喜んでくれた。







 そしてその中に、お父さんもいた。






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