40 ギルドに戻った
「何だコレ?やけに旨そうじゃねーか」とバルタムさんが鍋を覗きながら言う。
エレナがスプーンでかき混ぜろと言うので、底の方からかき混ぜると焦げていた。
「あー、失敗か?焦げてるぞ?」と俺が言うとエレナは「フフン、しょれがおいちーのよ」と言った。
それぞれの皿にオコメをよそい、スープをよそう。四人で一緒に試食だ。
俺は一口オコメを食べる。
オカユと違い、オコメは少し固めだが甘みがあって噛めば噛むほどに美味い。
次にみちょスープも飲んでみる。
この前飲んだ物と同じはずなのに、今日の方が美味い。なぜだ?
「エレナ、今日の方がスープが美味いな?何でだろう…」俺が首を傾げていると「ご飯とみそ汁は最強なのよ」と答えた。
あ、またやった。
俺は「ふ〜ん」と言いながら平静を装った。
店主とバルタムさんは無言で食べ進んでいて、気がついていないようだ。
エレナも嬉しそうにモグモグ食べている。
◆◇◆◇◆◇
そして店主が一言。「これ、売れますね」と言った。
バルタムさんも「やっとワシが造った物が世に役立つ…!」と拳を握りしめる。
「あのー、それならトーダさんとご相談を…」と俺が言うと、店主が「トーダさん、ですか?」
「ハイ、あの人がオコメの入荷をしています」と、話して良いのか?マズかったか?と後で思った。
「トーダさんって商会長の?冒険者もやっている?」店主、お知り合いで?
「そうです。多分そのトーダさんです」俺はスラスラ答えてしまった。
「なるほど。これは話をしに行かないと」
「ご店主、お知り合いですか?」俺はやっぱりマズかったかと内心ドキドキしていた。
「はい。彼は幼なじみですよ」うわぁ~、世間て狭いね。
「申し遅れました。私ロセと申します。お見知りおき下さい」とロセさんが頭を下げた。
「俺はガス、娘のエレナです。どうぞよろしく」そして握手をした。
「今日、時間があるなら冒険者ギルドまで来て下さい。オコメの事で話し合いがあるんです」俺はこれ以上何を話して良いのか分からず、サッサとトーダさんに丸投げしたかった。
「バルタムさんも一度、ダクサムさんと話して下さい。エレナじゃないと多分“セイマイキ”は上手くいかないと思うんです」仲を持つつもりは無いけど、二人の知恵があった方が良いと思う。
「はぁ〜、そうだな。もう何十年も顔を合わせてねーんだ。ここいらで一度会っておくか」と、バルタムさんは頭を掻いた。ふ〜、後は兄弟でやって下さい。
キッチンを片付けてロセさんは店員の所へ、バルタムさんは荷物を取りに自分の店に戻った。
俺達はそのままお茶を飲んで待つ。
しばらくすると二人が戻って来たので、乗り合い馬車で冒険者ギルドへ戻った。
◆◇◆◇◆◇
エレナは馬車の中でお昼寝に入った。
ギルドに入ると、アレン先生が足を開き腰に手を当て怒りの表情で待っていた。
「テメェ〜、良い度胸してるじゃねーか!」といきなり怒られた。
「ハハ…すいません。エレナがどうしても風呂に入りたいと言うので…。ここ風呂無いし、湯に浸かりたいって言うので〜」全面にエレナを出し、アレン先生の攻撃をかわす。
アレン先生は、俺の腕で眠るエレナを見て目尻を下げた。
「フンッ仕方ねーな。次は無いからなっ!」と俺の顔を指さした。
「すいません。それでギルド長は?」アレン先生によると、何だかアチコチに連絡して走り回っているらしい。
アレン先生にロセさんとバルタムさんを紹介し、ギルドの会議室で待機してもらう事にした。
俺はエレナを部屋で寝かせようとすると「ワシが連れて行く」と、アレン先生に奪われてしまった。
あのエレナに対する執着は何だろうか?少し心配になる。
仕方が無いので三人で会議室に移動した。
「バルタムさん、セイマイキおいくらですか?」俺はまだ支払いを済ませていない事に気づき、金貨を五枚程用意した。
「あん?いらねーぞ?セイマイキはエレナがいなけりゃ造れねー。まだまだ改良が必要だ。素材も他の物で試したいし、今日のヤツはそのままエレナにやるよ」皆さんエレナに激甘だな。
俺は苦笑いしながら「材料費ぐらい払いますよ?」と金貨を二枚渡した。
「お、おう、そうか?正直助かるよ…」バルタムさんは素直に金を受け取ってくれた。俺も嬉しい。
お茶を入れて三人で話していると、程なくしてトーダさんがダクサムさんを連れて現れた。
「あれ〜〜?ロセ君?」「あー!何で兄貴がいるんだよ!」
扉を開けると同時に二人が話し、それぞれの相手に歩み寄る。
「どうも。お久しぶりですねトーダ」と、こちらは和やかに握手をし、「オメーが役に立たねーモン作ってっからアドバイスに来てやったんだろーが!」こっちはこっちで兄弟ゲンカが始まった。
俺は二組を眺めながらお茶を飲んでいだ。(平和だなぁ〜)と思いつつ、この数年で起きたアレやコレやを思い出し、早く皇帝を倒さなければと気が焦る。
そうだ、こんな所で時間を掛けている暇は無い。ロセさんとバルタムさんの顔合わせをしたんだ、俺はここにいる必要は無い。
「すいませんが俺はやる事があるので、これで失礼します。お互い良く話し合って下さい。それでは」誰かの返事も待たず、俺は会議室を飛び出した。
後ろで「ガス君!」とトーダさんの声が聞こえたけど、今は無視だ。
◆◇◆◇◆◇
俺はアレン先生の所に行き、エレナを回収しようとした。
エレナはまだ眠っていたが、抱き上げようとする俺の腕を掴む手があった。
振り返ると立っていたのはアレン先生だ。
「マックスが戻るまで待て。一人で突っ込むな」威圧を放ち、俺を押さえ付けた。
「邪魔しない約束です」俺は腕を取られつつ、アレン先生を睨む。
「まぁまぁ落ち着けよ。せめてエレナちゃんの目が覚めるまで待て」アレン先生の拘束が解ける。
「アレン先生は騎士ですよね?この国の騎士団長ですか?」俺は肩を回しながら質問をした。前から疑問に思っていたんだよね。
「おう、バレてたか。もう辞めたがな。その時の部下がマックスだよ」やっぱり。
「何でココに?」騎士であり宮廷医師なんて、エリート中のエリート。
「あ〜マックスがなぁ〜…」と何か言おうとしたら、ギルド長が医務室に入って来た。
「俺のいない間に話を進めないで下さいよ!」息を上げながら、ギルド長は慌てて話を遮った。
「ギルド長も騎士ですよね。あの大剣、アレン騎士団長、その体格。まさかと思っていましたが、俺を知っていた事から確信しました。王弟殿下」マックスを見上げて、アレン先生も見る。
騙された理由では無いが、何か腹立つ。




