31 褒美と退院
〈だからね、もう一つ何かして上げたいんだけど、何かある?〉
(えっ?そんな、これまでも過度な褒美だと思いますが?剣に加護に。あっそうだ!マジックバッグも頂きましたし)
〈んもう〜、謙虚だなぁ。何でも言ってよ〉
(え〜?……それなら一つあります。よろしいですか?)
〈うんうん、なぁに?〉
(ローブに認識阻害を付与して頂けませんか?帝国城に忍び込む時に役立つと思うんです)
〈ほうほう、なるほど?ちょっと待ってね〉
〈ん~~、こーして…あーして、アレ付けてコレ付けて〉
〈ゴニョゴニョ……エレナちゃんの分もだよね?〉
(はい、出来れば)
〈ふんふん、ならば。ここはこーしてあっちをこーしてチョイチョイと〉
〈ん゙〜〜、ホイッとな。うん、満足のいく仕上がりになったと思うよ。マジックバッグに入れてあるから、後で確かめてね。但し、君達専用だから譲渡出来ないし、盗まれても戻って来るよ。それに、君達の寿命が尽きると同時に消滅するからね?それはユリウス君の剣も同じだから〉
(えっ?剣も消滅してしまうのですか?)
〈うん、ごめんね?僕の力を付与しちゃったから、この世界に残しておく理由にはいかないんだ。あっ、それから金貨なんだけど、どんどん使ってくれて構わないからね?あの麻袋、アホ女神の神力で出来ているから無限に金貨が出るよ。心配いらない。心置きなく使ってね?〉
(ハハハ、ありがとうございます。それでは遠慮なく使わせて頂きます)
〈うんうん。僕も使ってくれた方が嬉しいよ。それじゃあぼつぼつ交信を切るね。色々ごめんなさい。そしてありがとう。ユリウス君の活躍を期待しているよ?〉
(はい。必ず勇者と皇帝を倒します)
こうして、創造神とユリウスの交信は終わりを迎えた。
◆◇◆◇◆◇
次の日、俺は目が覚めて思った。アレは夢だったのか何だったのか。
よく分からなくて頭を抱えるが、マジックバッグの中にある剣とローブを見て現実だったと思うほか無かった。
創造神の容姿は俺には見えなかったが、不思議な声をしていたなぁ、と思っていた。
言うまでもなく、ローブは素晴らしい造りになっていた。見た目は今まで使っていた物と同じなのに、あらゆる付与をしたようで、コレ一つで防具になる程だった。
防御に防汚に防水。耐熱耐寒。魔力を流せば好きな型に変えられる。破けたり燃えたりもしない。
内側にポケットが付いていて、それはマジックバッグと同じ機能だった。
至れり尽くせりで、思わず俺は笑ってしまった。
認識阻害を試してみたくて、ギルド長マックスの前まで行ってみた。
俺はローブを被り、マックスの目の前まで行ったのに、全く気付かれ無かった事で楽しくなった。
◆◇◆◇◆◇
「さて、今日は何をしようかな?まずはエレナを迎えに行こう」俺は足取り軽く医務室へ向かう。今日はエレナの退院の日だ。
「エレナ、迎えに来たぞ。調子はどうだ?」エレナはベッドの上で起きて俺を待っていた。
笑みを浮かべて「おとーしゃん、おはよう」と言って両腕を伸ばしている。
(ずい分表情が豊かになったなぁ〜。良く笑うようになった。今までほとんど無表情だったのは、魂が定着していなくて体が辛かったんだな。気づかなくて悪かった)俺はふと、そんな事を考えていた。
「アレン先生に挨拶して部屋に行こうか」エレナを抱き上げ毛布を片付け、アレン先生を探したらマックスと一緒にいた。
「おはようございます、アレン先生、ギルド長」と、姿を見つけた俺は二人に声を掛けた。
「よう。もう迎えに来たのかぁ?ゆっくり来れば良かったのに。なぁ〜エレナちゃん」アレン先生が満面の笑みでエレナを抱っこしようと手を伸ばすが、エレナは俺の首に手を回して拒否していた。
「ハハハ…すいません。先生お世話になりました。本当にありがとうございました」俺はゆっくり頭を下げた。
「しぇんしぇー、おしぇわににゃりまちた」エレナもちゃんと挨拶出来た。人見知りは消えたかな?
「いいか?約束は守れよ?毎日一度はワシの所に連れて来るんだぞ?」アレン先生は俺に念を押した。
「はい、分かりました」俺は苦笑いをした。本当は診察じゃなくてエレナに会いたいだけなんじゃ…?と思ったが、口に出来る筈がない。
「ギルド長もありがとうございました」俺が挨拶しているのに、マックスはジーッと見つめたまま動かない。
「あのー、何か?」俺はドキドキしながらマックスの顔を見ていた。
「なぁ、髪切ってやろうか?」マックスの手には、いつの間にかハサミが用意してあって、シャキシャキ音をたてながら俺に迫っている。
確かに伸ばしっぱなしだけども…。
俺の腕にいるエレナがブルブル震えている。怖いのか?ギルド長が?
「えっと…、そのうちお願いします。まずは部屋に戻ってエレナに朝飯食わせないと…。あ、アレン先生!入院費はいくらですか?」
俺は話を逸らそうと、エレナを見つめて微笑んでいるアレン先生に話を振った。「あん?いらねーぞ?国から補助金が出ているからな」
お〜、さすがダンジョンの国。創造神様に“金貨は好きに使え”と言って頂けたから金は有るんだけど、無駄使いは出来ない。
「それは助かります。ありがとうございます。それではこれで」俺とエレナはアレン先生とマックスに手を振って部屋に戻った。
◆◇◆◇◆◇
部屋に入ってエレナを降ろすと「おとーしゃんはなちがありゅの」とエレナが言う。
「うん?どうした?」俺が聞くと、エレナは真面目な顔をしている。
俺は朝食の用意をし「まずは朝飯にしよう。お前にちゃんと食べさせないとアレン先生に怒られる」
何か焦った様子を見せるエレナだが、大人しく椅子に座り食事を取り始めた。
エレナの入院中に、マックスがエレナ用にと小さめの椅子と机を用意してくれた。
エレナの顔に笑みが浮かぶ。自分専用に喜んでいるようだ。
何気にマメな男だったりするギルド長だ。
この部屋の契約はあと六日程。次はどうしようか?エレナと相談しないとな。
「エレナ、今日したい事あるか?」まずはずっと医務室に籠りっぱなしだったから、きっと外に出たいだろう。
「わたち、おふりょはいりたい」モグモグ口を動かしながら答えた。
「風呂?シャワーじゃダメなのか?」と俺が聞くとエレナは「おゆにちゅかりたいにょ」と、とても真剣な顔で言われてしまった。
感情が表に現れる様になってお父さんは嬉しいぞ。
「じゃあ思い切って良い宿に泊まろうか。二泊ぐらい」俺がそう言うと、エレナはとても嬉しそうに笑った。




