30 創造神様と交信
ここ神界にて、創造神は水鏡を覗いていた。そこにはベッドで眠る一人の男が映っている。
さて、始めますか。
〈ウォッホン。あー、ユリウス君起きてくれ給え〉
眠ってる男の頭の中で声が響いた。
(何だよ…俺は眠いんだよ、うるさいなぁ)
〈ユリウス君、僕創造神。起きて欲しいのだけど?〉
(ハイッ?創造神?何の冗談…あれ?体が動かない…)
〈体は起こさなくていいの。意識だけ起きてて?〉
(あの、は、はい、……分かりました。何か御用でしょうか?)
〈うん。あのね、一度ユリウス君にお詫びしなきゃと思っていてね。アホ女神のせいでエレナちゃん押し付けられたでしょ?ホントごめんね。あのアホにはちゃんと罰を与えたから、もう心配いらないよ?〉
(女神に罰ですか?そんな事出来るんですね)
〈そりゃあね。僕しか出来ないけどね。エレナちゃんにも大変な思いをさせちゃったでしょ?だから神力を剥奪して80歳ぐらいの老婆の姿でボロボロの服を着て、エレナちゃんの元いた世界の紛争地域に送り込んでやったよ。死んでも人知れず生き返る呪いも付けといた。ふふふ、言葉も分からず金も無く体も動かないなか、命の危機を感じながら生き続けるんだ。人の命を弄ぶから同じ目に合わせてやったんだ。ざまぁみろだ〉
(そ、創造神様、結構過激ですね…)
〈そう?そもそも帝国に召喚の魔法陣を勝手に教えたのも、あのアホ女神だったの。僕ね、あの時もすっごく怒って、しばらく牢獄に入れて謹慎させたんだよ?百年ぐらい〉
(おお〜、百年もですか…)
〈人間の寿命なら終わるでしょ?だからその間に魔法陣の存在も忘れるかと思ったのに、あのアホ女神ちゃっかり伝承として残しやがってさぁ~。しかも魂替えの術式まで!ホント頭に来ちゃうよね。一生閉じ込めておけば良かったよ。何度か魔法陣使ったみたいだし、それによって起きたアレやコレや…まったくブツブツ………〉
(あの、創造神様?)
〈あ、ごめんね?〉
(あのクソ女神が居なければ、俺の国もまだ無事だったかも知れないですね…)
〈それも有ったね。アイツ、女神としての仕事はサボるし、下の者達への扱いも酷かったし、帝国に貢ぎ物させてさ。貢ぎ物なんて金銀財宝だよ?滑稽だよね、神が着飾ったって誰も見て無いのにね?挙句に上級男神には媚売って擦り寄ったりして。他の女神に宝石を与えて、仕事を代わりにやらせていたり。そんな事も有ったから、絶対に許さないって告げて罰を与えたんだ〉
(でも…何故そんなヤツが女神をしていたんですか?元人間だったりします?)
〈そうなの。アイツの魂使っちゃったの。帝国初代皇帝エルタナ。あの聖女だった女。僕が聖女の力を与えちゃったから、魂を拾うしか無かったんだよね〉
(あのクソ女神、エルタナだったんですか!?だから帝国に便宜を図ったと?その見返りが財宝?)
〈うん、そうなんだよ。物凄い強欲の塊だったんだよ。ホント人って分からないよね。僕は、貧しい村に住んでいて飢えにも負けず真面目に働き、明るい笑顔で皆を励ましていた女の子に聖女の力を発現させた。瘴気に溢れた世界を浄化する為に。その護衛に4人の男達を付けた。〉
(あー、この大陸の国を作った人達ですね。俺の国は賢者ガリウスだった…)
〈うん、そう。彼等はとても頑張ってくれた。世界を救ってくれた。僕は褒美として新たな大陸を造り、五つの国に分けてそれぞれに与えた。残らなかった国も有ったけど、概ね機能してたよね。〉
(その辺は学院で習いましたよ)
〈うん。エルタナは聖女の仕事が終わった後、帝国城に見目の良い男達を集めてハーレムを作った。それぞれの相手の子供をたくさん産んだ。でも育てるのは他人任せ。国の運営も大臣達に放りっぱなし。色欲にまみれた一生を送ったんだ。帝国民が皆エルタナの子供と言われるのは、血のつながりが脈々と続いちゃったせいなの〉
(だから帝国に肩入れしたんですね。自分の子孫だから…)
〈どうかな?自分の下僕程度にしか考えて無かったと思うよ?人で有ったなら色欲にまみれてても構わないけど、女神に昇格したらコレだもん。怠惰で強欲で色欲。他にもあるけど。自分で子供をたくさん産んだのだから、命の大切さは分かっているだろうと思ったのに、弄んだ。神なんだから駄目でしょ。エレナちゃんが言ってたでしょ?クズは一生クズだって。僕もその意見には賛成だな。エルタナはクズだった。僕は見る目が無かった。本当にごめんなさい。〉
(そんな。創造神様が謝るなんて畏れ多いです。)
〈ううん。神であろうと間違いは認めなくちゃ。それでね、エレナちゃんとユリウス君で勇者と皇帝を討伐するんでしょ?〉
(はい。それはいくら創造神様に止められても、止める気はありません)
〈うん、分かっているよ。止めないから安心してね〉
(よろしいのですか?世界の混乱が起きるとか、あるかも知れませんよ?)
〈ふふっ、無い無い。帝国が亡くなったって、皇帝のたくさんいる子供の中でもまともな考えを持つ者がいるんだ。その子達に任せれば大丈夫だよ。ただあの皇帝、もう人間の枠を超えちゃってるの〉
(どう言う事ですか?人間じゃない、と言う事ですか?)
〈そうだよ。エレナちゃんの元いた世界で言う、悪魔と呼ばれる異形のモノだ。あらゆる欲にまみれたら、あんなのになっちゃった。エルタナの子孫らしいよ。もう普通の剣じゃ倒せない。そこで!此方を進呈しましょう〉
ピカッと光って空中から剣が降りて来た。
ユリウスの脳内にその映像が流れる。
(これは…我が家の家宝だったミスリルの細剣!どうしてこれが…)
〈ユリウス君、剣を捨てて後悔してたでしょ?だから拾ってきたよ。この剣には僕の力を特別に付与した。魂ごと滅殺できるから心臓にブスッと突き刺してちょうだい〉
(あ…ありがとうございます。凄く嬉しいです。普段使いしても良いですか?)
〈ん〜?良いケド、スパスパ切れちゃうから側に人がいたら危ないかもよ?〉
(あ〜、なるほど。皇帝専用ですね)
〈その方が良いと思う。エレナちゃんにも似たような物を渡してあるから、そのうち聞いてみてね。後ね、エレナちゃん具合悪かったでしょ?アレね、アホ女神がエレナちゃんの魂と身体を定着させなかった事が原因だったの。だから、この入院中に僕がちゃんと定着させたし、加護も与えたから安心してね。滅多な事じゃ死なないよ?エレナちゃん。ふふふ。ユリウス君も加護いる?〉
(俺はいらないですよ)
〈じゃあ(小)付けとくね。風邪引かないよ〉
(ハハ…それはありがとうございました。エレナも俺も一安心です)
〈ユリウス君、本当にエレナちゃんの事心配してたよね。オコメまで見つけちゃうなんて。僕こそ感激しちゃったよ。赤の他人だし、アホ女神のせいだし、君が責任感じること無いのにさ〉
(いいえ。理不尽に殺されたあの子の気持ちは良く分かります。それに、俺の為でもあります。エレナは俺に生きる目的をくれました。だから、俺の方こそ感謝しています)
〈うんうん。そう言ってくれると思っていたよ。だからね、もう一つ何かして上げたいんだけど、何かある?〉




