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勇者祭  作者: 牧野三河
第五十五章 三人の忍

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第858話


 遊廓、しだれ屋。


 マサヒデとアルマダがさっぱりした顔で戻って来た。

 小赤の前に、マツ、カオル、イザベルが座っている。

 小赤の機嫌があからさまに悪い。

 禿2人の顔色も悪く、明らかに怯えている。


「あれ、どうしたんです」


 マツが口に手を当てて笑い、


「おほほほ! ちょっと歌で楽しんでいただけなんです」


「歌?」


 マサヒデとアルマダが顔を見合わせる。

 小赤達3人は、とても「楽しんでいた」という風ではない。

 アルマダが歩いて行って、禿の前にしゃがみ、


「ちょっと見せてもらえます?」


 禿はちらちらと小赤を見て、おずおずと短冊を差し出し、


「こちらでありんす」


「ありがとうございます」


 1枚1枚、アルマダが短冊をめくるたびに、呆れ顔になっていく。


「全く! カオルさん、イザベルさん、小赤さんに喧嘩売ってるんですか!」


 カオルが慌てて、


「は!? いや、そのようなつもりは全く! 私、頑張ったのです!」


 イザベルはしれっとして、


「今宵は少々傾いてみました」


 アルマダは禿に短冊を突き返し、


「馬鹿な事をしない! あろうことかマツ様まで!」


「うふふ。申し訳ありませんでした。ですけれども、私達は挑まれた方で」


「そんなつもりは! ハワード様、私は初めてで右も左も分からず!」


「少々傾いて詠んでみただけなのですが」


 カオルは必死な顔だ。

 本当に頑張った、つもりなのだろう。


「全く! カオルさんはまだ良しとしましょう。素人なんです。

 イザベル様! あなた、これは傾くとは」


 さらり。襖が開いた。


「む・・・」


 ぞろぞろと人が入ってくる。

 また芸者だ。

 アルマダが頭を振って、


「ふう。もう席に戻って下さい」


「うふふ」「は!」「されば」


 マツ達が席に戻る。

 マサヒデが困惑した顔で、


「何なんです。何か失礼な歌でも」


「そうですよ・・・全く、どうしようもない。

 あなたの周りは、嫉妬深い女性しか居ないんですか?」


 アルマダが小赤の前に座り、


「大変失礼しました。マサヒデさんに女性が近付くと、皆こうなんです。

 嫉妬深い上にいたずら好きな者ばかりでして、お許し下さい」


 アルマダが頭を下げると、小赤が口を結んだまま、小さく頷く。


「お二人も驚いたでしょう。失礼しましたね」


「大丈夫でござんす」


「小赤姐さんは、こんな事で怒りはしやせんす」


 と言っても、小赤の眉は険しい。

 ふう、とアルマダが溜め息をついて、


「マサヒデさん。行きましょう」


「え? はい」


 アルマダはがっくりと肩を落として席につく。

 マサヒデも席に戻って、


「何か喧嘩でも売るような?」


「まあ、そうです。あれで我慢している小赤さんを尊敬しますよ」


「ふう。そうですか・・・ところで、あれ、どうしましょう」


 入って来た5人の芸者が、部屋の真ん中で座っている。


「ああ、どうしますかね。外に出てもらいましょうか」


「部屋、壊したら大変ですしね。とりあえず、話だけでもしますか」


 向かいに座っているカオルもイザベルも、腰が浮いている。

 マサヒデが頷くと、2人も頷いた。

 ぱん、ぱん、と手を叩き、


「そちらの皆様。立ち会い希望ですか?」


 え! と座敷の皆が5人の芸者に驚いた顔を向ける。


「ふ・・・ははは! よくぞ見破った! 流石トミヤスの!」


 ばばば! と5人が変装を解く。


「赤忍者!」

「青忍者!」

「黄忍者!」

「桃忍者!」

「黒忍者!」


「臨! 兵! 闘! 者! 皆! 陣! 裂! 在! 前!」


 九字に合わせて印を結び、ば! とポーズを決めて、


「「「「「我ら! ハンゲツ高弟5忍者!」」」」」


「「「わあー!」」」


 ぱちぱちぱち!

 クレールと禿2人から拍手が上がった。

 他は皆、唖然としている。


「・・・あの」


「む! 貴様は! マサヒデ=トミヤス内弟子、カオル=サダマキか!」


「はい。あの、ひとつ宜しいでしょうか」


「申してみよ!」


「念の為に確認しますが、忍の方で」


「如何にも!」


「仮にも忍ともあろう者が、自ら出自を口にするのはどうかと」


「あっ・・・い、いや! 此度は正々堂々たる勝負に参った!」


「変装して入って来てですか?」


「・・・」


 しん・・・と部屋が静まった。

 少しして、


「ぎゃーははははー!」


 シズクが大声を上げて笑い出した。

 つられて、トモヤや幇間達も腹を抱えて笑い出した。

 マツもラディもイザベルも笑い出し、部屋中が笑いに包まれる。

 むっすりしていた小赤まで、下を向いて口を押さえ、肩を震わせている。


「お、おのれ! 貴様、嬲るか!」


 カオルは困った顔で、


「いや、そのようなつもりは全く・・・」


「ええい! もう良いわ!」


 5忍者がマサヒデの方を向いて、


「マサヒデ=トミヤス殿!」


「私ですか」


「当道場の痴れ者を排除して頂き、感謝致す!」


「え? あの、失礼ですけど、いつ勝負しましたっけ」


「はや忘れたか! シライ家の者だ!」


「ああ! あの人達ですか! それ、私ではないです」


「何!」


 イザベルを指差して、


「そちらの方です。イザベルさんといいます」


「むむ! 貴殿がイザベル=エッセン=ファッテンベルク!」


「如何にも!」


「改めて、当道場の痴れ者を排除して頂き、感謝致す!」


「ふ、礼には及ばぬ。あの3人、も少し修行を積むべきであったな」


「さればファッテンベルク嬢! そなたと勝負を願いたい!」


「何?」


「ハンゲツの真髄、我らがお見せ致そう! 如何!」


「よかろう!」


 イザベルが立ち上がりかけた所で、ぱん! とマサヒデが手を叩き、


「待った! その勝負、イザベルさんの主である私が買いましょう」


「ほほう・・・ファッテンベルク嬢では敵わぬと見たか!

 噂の剣客、マサヒデ=トミヤス殿! 相手に不足なし!」


「では、私と勝負という事ですね」


「結構!」


「では、参りました。私の負けで」


「は?」


「私の負けです。はい、負けましたよ」


「・・・」


「トミヤス流に勝ったとなれば、そちらの道場にも箔がつきましょう。

 広めて回って頂いても構いませんよ」


「手合わせは、せぬと?」


「はい」


「そ、それは困る! 曲げて手合わせして頂きたい!」


「勝負の前に負けを認めました。うん、良いではありませんか」


「そこを何とか! 我らを助けると思って!」


「ええ? どうしてそんなに勝負したいんです」


「師には固く禁じられた所を、頭を下げに下げ、ようやく許しを得たのです!

 お願いします! 1手! 1人で構いませんので! 何とか!」


 変な流れになってきてしまった。

 最初の勢いは微塵もなく、へこへこと頭を下げる5忍者。


「アルマダさん、どうしましょう」


「知りませんよ。私には関係ないんですから」


「ううむ、では少し待ってて下さい。カオルさん」


「は」


 すすす、とカオルがマサヒデの前に来て座る。


「この部屋で忍と立ち会うって、流石に危険ですよね」


「はい」


「どうしましょうか」


「皆様に、こちらの方へ固まっていただいて、向こう半分で。

 シズクさん達がいる所で、こちらへ出たら負けということにしましょう。

 危険な毒や火薬を撒く事は禁止して。良い見世物になりましょう」


「飛び道具はどうしましょうか」


「私、シズクさん、イザベル様が前に」


 アルマダが盃を上げて、


「マサヒデさん、私も手伝いますよ。審判役。ちゃんと寸止めして下さいね」


 どすどすとシズクが歩いて来て、どかっと座り、


「マサちゃん! 私! 私に譲ってよ!」


「駄目です。シズクさんが飛び回ったら、床が抜けてしまいます」


「けちー!」


「それよりも、転がってる酒樽、こちらに持って来てもらいますか。

 あの辺りで立ち会いますから、幇間の方々もこっちに来てもらって」


「むーん」


 ぶつくさ言いながら、シズクが歩いて行った。


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