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強欲のスキルコレクター  作者: 現猫
第四部:強欲若人は幸せを語る
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第一章:四天王の華麗なる艱難-33

活動報告や作品説明にも載せましたが、この度この作品が書籍化する事と相成りました。

これも日頃から応援して下さる皆様方のおかげです。本当に、ありがとうございます。

書籍化に伴い諸々準備があるので詳細などはまだお知らせ出来ませんが、今暫くお待ち下されば幸いです!!

 


 ──この屋敷は、一般的な構造の建物じゃなかった。


 来客来賓を迎えない前提である事とあらゆる襲撃からの備えの為なのか、二階部分には殆ど廊下は無く、部屋同士が短い通路で連結されたような構造をしていて、目的地である特殊個体化したアンデッドの居場所の特定は困難だった。


 当たりをつけるとしたら上座──屋敷の玄関を下座とした際の最奥部にある部屋が怪しいとオレ達は睨み、とりあえず上がってすぐの部屋に突入。


 そこで待っていたのは──


「……へぇ。そうきたか……」


 部屋は、閑散と乱雑の混沌としたものだった。


 元々この部屋を機能的にしていたであろう家具や彩っていた調度品はバラバラに壊され、部屋の四隅に無理矢理に追いやられている。


 そうして室内に出来上がっていたのは、歪な何もない空間……。その中央に、一体のアンデッドが立っている。


 風体は……兵士?


「ア゛ァァァァ……」


 武装はティリーザラの一般兵装にこの男爵家の家紋が入ったモノと、長槍。


 ただ中身の腐り具合に反して武装が妙に手入れされてる……。


 アンデッドは腐った脳と神経が起こした誤作動で生前に染み付いてた行動を繰り返すって聞くけど、武装の手入れ具合もそれ由来か?


 それと意思は……そりゃあ無いんだろうけど、この場を任されて佇んでるようにしか見えねぇな。


 これは……もしかして〝アレ〟か?


「ハント、これって……」


「ああ。多分、な……」


 アンデッド関連の調べ物の中に、どうしても考えなきゃならない懸念があった。


 それは貴族や軍の上官クラスの人間がアンデッド化した際、極稀に変異するとされる最悪のアンデッド。


 何らかの原因で脳の腐敗や損傷が限りなく抑えられ、元々備わっていた指揮能力がそのまま発揮出来、同族のアンデッドを従わせる事を可能としたアンデッドの上位種──ロード。


 アンデッドは彷徨い歩くもの……。それが目的もなくただ佇んでるってのことは、その性質を上書き出来るような何かが目の前のヤツに掛かってるって事だ。


 そんな事出来んのは、そのロードくらいのもん。


 つまりオレ達が今回特殊個体化したって睨んでる男爵はロードに進化した可能性が高いっ!!


「ね、ねぇハント……。ホントにボク達だけで出来ると思う?」


 ロードの強さ──指揮能力とそれに関するスキルによって千差万別って聞いたけど、特殊個体化してる可能性がある以上、当たり前だけど一切侮れない。


「……やれるだけやるしかねぇだろ。ロセッティさんを信じて」


「う、うんっ!」


 コイツとはちょいギクシャクしちまったけど、それでも連携した経験は十分積んでんだ。


 やれる。オレ達ならやれる。


「まずは先手必勝。一発決めてやれミレーっ!!」


「よしっ!! 穿ち広がれ、闇の波紋。爆ぜし肉片すら飲み込み、一切を滅せっ!! 「千刺突き侵す暗槍(デッドエンドスピア)」っ!!」


「相っ変わらず物騒な詠唱だなっ!」


 物々しい語彙から放たれた無数の棘が生えた漆黒の槍が兵士アンデッドに飛来。


 それに追従する形でオレも走り出す。流石に魔術の発射速度には追い付けねぇけど、このタイミングならいつも通り、魔術の直撃の怯んだ隙を突けるっ!!


 まずは兵士アンデッドが持ってる、あの抜き身の剣っ! アレを叩き落として戦力を──


「……あ゛ぁぁ」


「──ッ!?」


 ミレーの魔術が兵士アンデッドに当たる、その直前。


 僅かに反応を見せた兵士アンデッドは、まるで吊るされていた糸が切れたかのように全身を脱力させたかと思うと、握っていた剣を魔術に向かって振り上げた。


 流石にそれだけじゃ魔術を消すなんて出来はしないみたいだけど、魔術はそのせいで軌道がズレ、結局は兵士アンデッドには当たらず天井の隅に穴を空けて終わる。


 ──だけど今ヤツは剣を振り上げて脇がガラ空きだっ!


 オレの槌矛(メイス)で逆袈裟に砕き裂いて──


「あ゛ぁぁっ!」


「──ッッ!?」


 槌矛(メイス)は、確かに当たるルートをとってた。


 さっき散々ゾンビ相手にしてたんだ。ただの人間じゃ出来ない動きをするのだって理解してるし、それを予測して攻撃もしてんだ。


 なのに……。


「んなン、アリかよッ!?」


 兵士アンデッドは直前、自分の横太もも思い切り殴りつけ、破壊。


 太ももがあらぬ場所からあらぬ方向に折れ曲がると自重によって一気に兵士アンデッドの身体が沈み込んで、オレの一撃がすんでの所で躱されちまう。


「くっ!」


 オレはその場から飛び退き、そのままミレーのところまで退がる。


 ヤツは……動いてねぇな。


「ハント、大丈夫っ!?」


「あ、ああ。だけどあの理に適ってるけど意味分かんねぇ戦い方……」


「……うん。そう、だろうね……」


 アンデッドは、生前の行動を繰り返したり再現したりか肉体的な反射行動くらいしかしない。人を襲うのだって、動物としての根源的な反応って、読んだ資料にもあった。


 さっきまで相手してたゾンビ達も、それに適った行動しかして来なかったし、オレの知る基本的なアンデッドだ。


 ただ、この兵士アンデッドはその瞬間の状況を把握した上で、対処して来やがった。


 魔術が危険な物だって判断し、それを回避するために剣でいなし、オレがその隙を突いてしてくる攻撃を足を折って回避する……。


 相手はアンデッドとはいえ兵士だ。生前の行動としてある程度戦える算段ではあったけど、今の反応のしかたは異常だ。普通のアンデッドにはあり得ない。


「想定はしてたけどよ。そんな中でも最悪だな、こりゃ」


 今回の任務は特殊個体化したアンデッド……。その時点でこういう事態はある程度想定してた。目の前のヤツみたいな、動けるアンデッドの出現だ。


 そういう「普通より動くアンデッド」ってのの一番厄介なところは〝中途半端〟な事。


 一般的なアンデッドよりは動ける。けど人間ほどじゃない。


 人間と似たような行動が出来る。けどアンデッドみたいに無茶な挙動も出来る。


 武器の使い方にある程度道理が生まれる。けどアンデッド特有の関節に無理させる方向からの攻撃も躊躇(ちゅうちょ)しない。


 致命的な場所を守ろうとする。けど唐突に受けたりもする。


 人間的な行動を中途半端に、ランダムに挟んでくるから頭ん中で瞬間瞬間の切り替えが必要になってくるし、命なんて無いからオレ達の中にある生理的な常識をいきなり無視したりと、ホントに無茶苦茶で面倒な相手ってことらしい。


 じゃあ、そんな厄介なアンデッドが発生する条件はなんなのか?


「この屋敷の主人様は、どぉやら配下のアンデッドを強化、出来るっぽいな」


 ロードの能力は、主に配下のアンデッドをコントロール出来るってヤツだ。


 本来なら自由に彷徨うはずのアンデッドを止まらせたり、逆に特定の場所に移動させたり、監視させるみたいに巡回させたりな。


 だけどロードの中にはそれを更に発展、進化させる事に成功した個体が稀に発生する。


 それが配下のアンデッドの性能を強化出来るっていう、破格の能力だ。


 理屈は解明されてねぇって事らしいけど、遠隔で魔力を送って本来なら機能してない脳や神経の一部を活性化させて、普通のアンデッドじゃ出来ない動き──生前ほどじゃないにしろ、その場その場の臨機応変な行動をさせられるらしい。


 そう。あの目の前の兵士アンデッドは、まさにロードの能力によって強化されたアンデッドに特徴に合致する。


 さっきのやり合いで、それを確信した。


 コイツは、特殊個体化したロードの力で能力を強化されたアンデッドって事だ。


「どうする? 一応、事前に色々考えてはいたよね?」


「……そうだな。ガムシャラにでも、やってみるしかない」


 求められんのは、一瞬の対応力と常識外への想定。


 いくらなんでも再生能力までは持ってねぇだろ。なら足は折れたまま。


 機動力が格段に落ちてる今なら……ん?


「……なぁ、ミレー」


「うん? な、なに?」


「オレ達……ちっと難しく考え過ぎなんじゃねぇか?」


「え?」


「だってよ……。あれ、動けねぇんならさ。お前の魔術で蜂の巣にしちまえば……」


「……あ」


 オレと同じ事に気付いたミレーが両手を前に突き出し、ゆっくり詠唱を唱える。


「刻め、震えろ、闇夜の矢。臓腑を串刺し、骨砕き、撒き散らす血潮に絶望を染み渡らせろっ!」


「ホント語彙が物騒な……」


 ミレーの手の周辺に無数の漆黒の矢が展開される。


 その一つ一つには返しのような棘が幾本も生えていて、多分一回刺さったら中々抜けず、無理矢理抜こうものなら傷口を余計に広げるハメになるんだろう。


 いやぁ。魔術まで物騒。


「弾け散れっ! 「惨々たる闇夜の千矢クルーエル・サウザンアロー」っ!!」


 射出されたミレーの魔術が、一斉に兵士アンデッドに群がる。


 遅れて反応した兵士アンデッドだが、予想通り避けようとする素振りは見せず、剣を構え直す。


 そして片膝立ちのまま剣を振るって応戦しようとした……が、その思ってたよりも速い剣速で全てを弾く事はやっぱり出来ず、殆どがそのまま被弾。


 次々と兵士アンデッドの身体が黒い矢に射られ、穿たれ、貫かれる。


 中には着込んでいた鎧に弾かれもしたが、横殴りの雨のように注がれ続ける矢に成す術なく、遂には弾いていた鎧までも破壊された。


 そして……。


「あ゛、あ゛ぁぁ……あ……」


 最早兵士アンデッドの姿がまともに視認出来ないほどに黒い矢まみれになった頃、標的はそこでようやく倒れ、微動だにしなくなる。


「……倒せた、でいいんだよな? さすがに」


「う、うん。さすがに、ね……」


 はぁ。アンデッドはそこら辺わかりづらいからメンドクセェ。


「一応、警戒しながら横切ろう。特殊個体化したロードに強化されてんだ。予想だにしないイレギュラーだって有り得んだろ」


「だね。……とはいえ、ここまでやってまだ動かれちゃうと、正直困っちゃうけど……」


「まあ、な……」


 溜め息を二人で吐いてから、オレ達は部屋を横断するため、倒れた兵士アンデッドを横切る。


 一応念の為、ミレーにはまだ矢を消さないよう言ってあるから仮にまだ行動可能でもまともに動けはしないだろうが……。


「……」


「……」


 ……うん。とりあえず、倒せてるっぽい。


 一安心、かな。


「んじゃ、次の部屋だな」


「今みたいのなら良いんだけど……」


 そして奥の部屋──当主が居ると予測してる部屋に続くだろう次の部屋のドアに手を掛け、中を覗く。そしたら──


「……あぁぁ……」


「や、やっぱり?」


 そこには同じように中央だけ綺麗にされた部屋に(たたず)む、メイド服を着た三体のアンデッドの姿があった。


「……これ、もしかして」


「部屋全部、こんな感じ?」















 階段を降り切って、現れた部屋。


 取り付けられてるのは鉄製の頑丈そうな扉だけど、それは本来の役割を果たせずに開きっぱなし。


 よく見れば……ドア枠とかに布の切れ端とか腐った肉片がこびり付いたりしてるから、さっきのボロ切れ(まと)ってたゾンビが押し合いながらここから出て来たんだと思う。


「なら、この先にはやっぱり……」


 再確認して扉を潜る。


 広がるのは……うーん。


「さすがにこれ以上は感知系スキルだけじゃ不便だよね……」


 わたし達ロセッティ班の明確な弱点の一つ……暗がりに弱い。


 わたし達三人は三人とも、辺りを明るくする定番とも言える《炎魔法》と《光魔法》を持ってないし、その才能も無い。


 だからこういう時──まあ、今はわたし一人だけど──三人集まってたとしても誰一人辺りを明るく出来ない。完全に、想定外。


 まあでも、だからってそれだけで人選するワケもいかないし、とりあえず凌げる常套手段としては……。


 ──荷物に手を突っ込み、目的のものを取り出す。


 それはこの旅を始める前、こんな事態も想定して(あらかじ)め買っておいた《発光》のスキルが内包されたスキルアイテム。


 形状としては二十センチくらいの鉄棒で、いわゆる短杖(ワンド)ってやつ。


 魔力を送れば先端が発光して、送る魔力の強弱で明るさを調整出来る優れもの。


 ただその利便性とスキルアイテムっていう生産性の難しさから値段は安くない。


 まあ、経年劣化とか摩耗とかするわけじゃないから買い切りとして見るなら妥当なんじゃないかなとは思う。


「おおっ! これ地味にスゴイ……」


 いざ使ってみると、びっくりするくらい明るく辺りを照らしてくれる。


 光り方も安定感あるし、熱があるわけじゃないから松明みたいに身体の近くにやっても安心安全。


 さっき「階段降りるくらいなら……」ってちょっと横着しちゃったけど、最初から使えば良かったかな、これは。


「……さて、と」


 スキルアイテムの性能に感動も一入(ひとしお)味わってところで、入った地下室の様子を見てみる。


 入り口付近には……洗面台と、血とか色んなものが染み付いたタオルなんかの布が山積みのカゴが何個か。


 後は薬棚に……机の上に医療道具が数点、かな。何個かは床に落ちちゃってる。


 薬はどれも使いかけで、医療道具も使い古されてるみたい。


 ただホコリが積もってるから、やっぱり何年も使われてないかな。


 後は……。


 部屋のメイン部分──広間を覗くと、そこには幾つものベッドが並べられていた。


 本来なら規則的に並んでたんだろうけど、どれもズレたりして乱れてる。


 シーツなんかもさっきのカゴの中身みたいに色んな体液で汚れてて、枕元にあるサイドテーブルにはそこに寝かされてただろう人の為の金ダライや薬のケース。腐っちゃってる流動食が置いてある。


 部屋本来の灯りは──ああ、壁に壁掛けの蝋燭台があるけど、どれも折れたり使い切られてて使えない。


 それで更に奥は……研究室、かな?


「……こっちは、そっか」


 ドアノブに手を掛けて捻ってみたけど、残念ながらコッチには鍵が掛かってるみたい。


 本当なら鍵を探すなりするとこだけど……。


「あんまり時間、掛けらんないからね」


 ドアノブの下にある鍵穴に指の腹を当てがって、《病毒魔法》を発動。


 鍵穴に腐食性の強い毒を流し込んで鍵の機構そのものを溶かし崩す。


 毒を流しながらドアノブを捻って……うん。いけたかな?


「お邪魔しますっと……」


 中に入ると、入り口付近にあったような薬棚が壁を埋め尽くしてて、その一箇所には広めの机が設置されてた。


 薬棚にはさっきのやつに入ってたのより効果が強くて扱いの難しい薬品を中心に、様々な毒物や麻薬類が鎮座。


 《病毒魔法》の知識強化の為にこういうのは色々勉強してるわたしだけど、それでも薬品名に覚えの無いのが沢山ある。グラッド君やロリーナちゃんなら解るかな?


 机の上には……調剤用の道具と──


「あっ! あったあったっ!」


 わたしがわざわざこの地下に来た理由。


 この任務をより完璧に……より完全に達成する為に必要なもの。それがそこにはあった。


 ──まあ、厳密には本当にそれなのかちゃんと調べなきゃだけど、この場所に置いてある以上は無関係な事はないんじゃないかな。


「他にも期待出来るかも……。もっと探してみよう」


 この部屋の薬棚の下には、両開きの収納スペースもある。もしかしたらそこにも、目的のものになるようなものがあるかもしれない。


「ホコリっぽいけど……がんばるぞ」


 一つ気合いを入れて、家探し開始。


 さぁ、この屋敷の主人は、本当にただの脱税者、なのかな? うふふふ。




 ______

 ____

 __




 ティールとその両親──セオフィラスとミュエルと共に屋敷の外に出る。


 そこには何やら使用人達に慌ただしく指示を出している家令と、ハッタード家の私兵と思われる一団が隊長らしき人物から喧しく指示を飛ばされていた。


「──ッ!! だ、旦那様っ! 奥様っ! それにティール坊ちゃんにご友人様までどうしてコチラにっ!?」


 私達に気が付いた家令が慌てたように走り寄り、その意思を伺ってくる。


「状況は察している。例の賊共の事だろう?」


「は、ははっ! ご明察の通りで……」


「うむ」


 まったく何が「うむ」だ。出る途中で私が簡潔に説明してやったろうに。


「ご存知の通り賊共は近くの丘の洞窟に居を構えておるのですが、奴等とうとう白昼堂々と市井にまで出張って来たようでして……」


「……それで?」


「最初はただ迷惑行為程度──いやそれも問題ではありますがっ! い、今では暴力沙汰に強奪まで発展したようでして」


「くっ……ゴミどもがっ! ──で? 対処は?」


「さ、先程先行して被害状況の確認と町民の安全確保の為に数名派遣しました。今は鎮圧部隊を編成させていたところなのですが、その……」


「数も練度も不安だ、と?」


「そ、そそそ、それはっ!?」


「構わぬ。私兵の実力程度把握しとるわ。まったく、忌々しい……」


「で、ではどのようにっ? 近隣の領へ応援を要請するので?」


「……いや。解決は……こやつに任せる」


 セオフィラスの視線がティールに向く。


 その目にはたっぷりの疑念と、微かな期待。


 受けたティールはそれを、跳ね返すほどの強い意志の宿った目で返した。


「てぃ、ティール坊ちゃんにですかっ!? し、しかし彼の賊共は不遜にも精鋭揃い……。いくら魔法魔術学院で学んでいようとお一人でなど余りにも無謀がっ!!」


「大丈夫っ! 今の俺、強いらしいからっ! なっ? クラウン」


 ここで私に振るのか。


 彼等にとっては私よりお前の言葉の方が説得力もあるだろうに……。


 まだまだ小心者は抜け切らんか。


「……そうだな。今のお前なら、相手が例えアールヴの前線部隊だろうと遅れはとらんだろうよ。調子に乗って暴れるだけの賊なんぞお前の相手ではない」


 コイツは第二次人森戦争の後、聖芸の指先(チマブーエ)と《色彩魔法》を活用した戦法を磨き続けている。


 その結果、私の身内の中で最も対応が難しく、且つ最も自由で発想に富んだ戦闘を行えるようにまで成長。


 対処するにはコイツの天才的なセンスと発想に同調し続け、その一つ一つを看破しなければならない。


 戦っていたらいきなり目の前に小さな太陽が現れたり、後退した先が泥沼になったり、《分身化》や《影分身》も無いのに分身が現れたりするんだからな。


 そんなもの私でも目が回る。


「まあ、何かあれば私が尻拭いをしますよ。一人残らず塵にして差し上げます」


「う、うむ。そういう事だ。理解したか?」


「は、はい。他ならぬ英傑殿の言葉と応援……。お任せするしかないでしょう」


「……そう、だな」


 ふむ。セオフィラスは先程散々私にやられたせいか、無闇に私に頼る事に忌避感がある様子……。


 まあ、わざわざそう抱かせるよう仕向けたのは私なのだがな。


 友人の親に嫌われねばならないとは……。全く()って度し難い。嗚呼、度し難い……っ!


「さぁ、ティール。いつまでもぐずぐずしていては町民に更なる被害が出る。行きなさい」


「分かってるっての。──んじゃとりあえずはまず近場だな。ホラ、クラウン転移」


「……お前、最近私のことを躊躇(ちゅうちょ)なく便利な移動手段にしていないか?」


「今更だろ今更っ! ほら、早く早く」


「ったく。その代わり私もお前を便利に使い倒すからな? 覚悟していろよ?」


「はっはぁ! それこそ今更だってのっ!!」


 そう繰り広げ、私達は最初の標的へと向かう。


 ティールとしては成長後、初の本格的な対人戦だ。


 その成果、存分に見せてもらうとしようか。ふふふふふふ……。




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― 新着の感想 ―
ティールとクラウン、気安い友人って感じがしてすごくいい♪
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