記憶の欠片と高級食材03
「特に問題はないわね。何が唯に旧世界を伝えてきても、それらの見た視点でしか見聞き出来ないようだもの。唯が感じたのがここに来てからなら、記憶の素が近くにあるという事なのでしょうし。」
淡々と情報解析する雛。
私はそれを聞き、それもそうかと一人で納得してしまう。
「ふうん。まぁ、別に良いんだけどさ。それで?」
「あ、う、うん。」
改めて悠希からも問われ、私は少し緊張しながら、見た事を話した。
◆ ◆ ◆
そんなこんなでやって来ました、大河ハディスン。
ちょうど冒険者の宿で、ハディスンでの採集依頼があったんだよね。
「これだよな?カワザリの螯なんて、何に使うんだか。」
掌サイズの脚爪をマジマジと見つめる悠希。
私達の請けた依頼は、ハディスンに棲むカワザリの前脚部分の採集だった。
生体は一抱え程の大きさで、ザリガニとヤドカリの特徴を持つ──巨大ザリガニの背中に、円錐型の貝殻がついた──魔物だ。
「これを500個か。簡単な依頼だな。」
「時間は掛かるけど、攻撃力の少ない魔物だからね。ちなみにこれ。美食家の間では、最高級食材らしいよ?」
不思議そうに螯をつまみ上げていた悠希に、私は文献で得た知識を告げる。
前脚での攻撃か、背中の貝殻を突き出した突進攻撃しかしてこないカワザリ。
数は多いけど、この時期は大量発生している事もあり、河からワサワサと上がってくる。
「これが高級食材?へぇ~…、金持ちの考える事は分からんな。」
そう言いつつも、悠希はさっきより丁寧に螯を切り落としていた。
高級と聞いて、扱いを改めたのかな。
「そろそろ規定数になるわね。」
少し後ろで風ノ魔法を使っていた雛が、何気に呟いた。
今まで数えていたのかと驚く程、冷静な声。
「さすがだな、雛乃。生真面目に数えていたのか?」
ニヤリと笑みを浮かべ、手にした剣を大きく降り下ろす。
既に周囲の魔物を討伐し終えたらしく、見渡してももう沸いてきていないようだ。
「ふぅ~…、やっぱり打ち止めはあるんだね。増殖し続けているのかと思う程、延々と河から上がってきてたもん。」
星ノ魔法の巨蟹宮にカットさせ、私自身は螯を集めていた。
やっと一つ区切りがついて、大きく溜め息をつく。
悠希や雛と違って、私の場合は魔法の使い方が少し特殊だ。
自分の魔力を直接的な攻撃や防御に使うのではなく、星ノ魔法で召喚した獣に、己の魔力を使って現象を起こさせる事になる。
それ故か、イマイチ自分で魔法をバリバリ使っている感がないのだった。




