記憶の欠片と高級食材01
「…い?…唯?」
肩を揺すられ、私は瞬き一つで我に返る。
今さっきまで…私、鳥だった。
「大丈夫か?」
心配そうな表情の悠希が、小首を傾げつつ問い掛けてきた。
…っていうか、距離が…顔が近い。
「だ、大丈夫だよっ。」
頬が熱い気がするが、気にせず片手で悠希の顔面を押し退ける。
しかしながら、四人掛けのテーブルで、隣の席に座っているのだ。
離れるにも限度がある。
…そう言えば、何で隣なの?
「酷い扱いだな…。」
掌の下から不平が聞こえるが、そのまま放置。
私は周囲を見回し、先程の続き──食事中である事を確認する。
たまに、時間が経ちすぎている事もあるからね。
「大丈夫よ、唯。数分だから。」
状況確認する私に気付いたのか、雛が小声で教えてくれた。
でも、私が一番気になっていた事は…。
良かった~。ご飯、まだ冷めてないっ。
「唯。今、飯の事を考えたろ。」
不意に聞こえた、からかいを含んだ悠希の声。
振り向くと、顔を押さえられながらも、ニヤつく彼の瞳があった。
「う、うるさいなぁっ。良いじゃん、ご飯は大切だもんっ。」
開き直って、私は言い切る。
そして視線を避けるように、刺身を一切れ、口に入れた。
うん、変わらず美味しいっ。
「ったく、可愛いな…。おい、手を離してくれないと、俺が食べられんぞ。」
前半は何を言ったか聞こえなかったけど、後半はしっかりと聞こえた。
「あ、そうだったね。悠希もまだ食べ「いや…、舐めてほしいのかとも思ったがな。」っ?!」
手を退けようとした瞬間、悠希の不穏な発言。
思わず身体ごと引いて、まじまじと見入る。
「だからやめただろ。」
「当たり前でしょっ。」
不思議そうに告げられ、逆に噛み付くように言い返した。
何を考えているんだ、全くぅ。
「二人共。仲の良いじゃれあいは悪くないけれども、時と場所を考えた方が良いわ?」
静かに雛に諭され、私達は周囲を見回した。
非常に多くの視線が──、生温い空気と共に向けられている。
いや~っ、何の罰ゲーム?!
っていうか、昼食時の人が多い時間帯なんだった。
「うぅ~…っ、居たたまれない…。」
それでも、焼き魚を口に入れる私。
美味しさは気持ち半減するけど、食べ物に罪はないもの。
項垂れながらも私が食事を再開する横で、悠希は変わらない様子。
何だか、自分だけが空回りしている感じで、更に腑に落ちないと思った。




